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3.メカニズムの分析とモデルの精度検証

ドキュメント内 2004 No.22 (ページ 116-119)

3.1 SID-Ⅱsの構造と胸部たわみ量発生メカニズム SID-Ⅱsは小柄な女性の人体特性に基づいて設計された ダミーで,Fig.7に示すように従来のLINCAPで使用する SIDと比較すると肩部荷重,胸部および腹部たわみ量,腰 部荷重等の多くの入力を計測できるダミー構造となってい る。これによってダミーへの入力が計測できるため,車両 テストとクラッシュシミュレータテストの再現状態の比較 や,力学モデルの入力データとして活用できる。

SID-Ⅱsの胸部たわみ量は,Fig.8の胸部断面図に示す ように肋骨(Rib)と背骨(Spine)の間に取り付けられた 変位計によって計測される。このダミー構造から考えられ る胸部たわみ量は,Ribの移動量からSpineの移動量を差し 引いた量となる。

このメカニズムを要因図にまとめると,Fig.9のように なり,胸たわみ量の力学モデルの基本的考え方となる。こ れに基づき,外力とダミー構造部品のバネ定数や質量を計 測し運動方程式を立てた。これを解くことによって,その 考え方の妥当性とパラメータの寄与度分析が可能になり,

傷害値発生メカニズムの理解を深めることができる。

Fig.5 Chest  Deflection  Comparison  of  Actual  Vehicle and Crash Simulator

Fig.6 Methodological Development Process in Crash Test

Fig.7 SID-Ⅱs and SID

Fig.8 Chest Structure of SID-Ⅱs

3.2 力学モデルの構築

まず,Fig.10に示す外力が加わる場合の1自由度減衰系 のスプリングとマスの運動方程式は,式のように表すこ とができる。

このスプリングとマスの組み合わせでSID-Ⅱsの力学モ デルπを考える。しかし,SID-ⅡsはFig.11からも分かるよ うに,多くの部品から構成されており実物に忠実なモデル は,非常に複雑なモデルになってしまう。今回のモデル化 の目的は,メカニズムの考え方の妥当性を確認することな ので,できるだけ簡素化し計算結果が実験結果と合わない 時のみ,スプリングとマスをモデルに追加し計算精度を向 上させた。最終的な胸部たわみ量の力学モデルは,Fig.11 の1次元3自由度系のバネマスモデルとした。このモデルは m1からm4の4つのマスとこれらを結合するk1からk3の3つの バネ,およびc1からc3の3つのダンパで構成されている。胸 部たわみ量は,リブ変位x1とスパイン変位x2の差として求 めることができる。このモデルの運動方程式を式πに示す。

π

ここで[M]は質量マトリックス,[C]はダンピング係数 マトリックス,[k]はバネ定数マトリックス,{F}は入力 ベクトル,{X}は加速度ベクトル,{X}は速度ベクトル,

{x}は変位ベクトルを示す。

Fig.9 Analysis Chart for Chest Deflection of SID-Ⅱs

Fig.11 SID-Ⅱs Spring-Mass Model with Three Degree-Freedom Systems

Fig.10 Spring-Mass Model with Single Degree-Freedom-System

この力学モデルの再現精度検証は,次のプロセスで行っ た。まず肩,胸,腰の個別部位毎に荷重を入力させて胸部 たわみ量の実測値と計算値が合うようにパラメータを最適 化した。次にこれら部位に同時に荷重を作用させて,胸部 たわみ量を比較した。

3.3 部位別シミュレーションパラメータの最適化 πの連立微分方程式は,計算ソフトを用いて解を求め た。この時,質量やバネ定数等のパラメータは,実測した データを使用した。このデータを元にしてシミュレーショ ンとユニットテストの比較を行い,ピークレベルと波形パ ターンが近くなるようにパラメータの最適化を肩,胸,腰 の各部位毎に実施した。Fig.12は,胸部のインパクトテス トで得られた,胸部への入力荷重を示す。計算はこの値を 入力荷重として行い,シミュレーション結果とインパクト テスト時の胸部たわみ量を比較したものをFig.13に示す。

両波形はともに似ており,ピーク値の差も10%の範囲にあ り良く一致していることが分かる。

このような個別部位テストと計算結果の比較を繰り返す ことによって,パラメータの最適値を決定した。

3.4 モデルの検証と結果

SID-Ⅱs力学モデルの妥当性の検証は,前述の最適化し たパラメータを用いて実施したシミュレーション結果とク ラッシュシミュレータの実測値を比較して行った。Fig.14 に,クラッシュシミュレータの実験で計測した肩,胸,腰 の3点への入力荷重を示す。Fig.15は,このデータを入力 荷重として計算したシミュレーション結果と実験結果の比 較を示す。シミュレーション結果は実験結果に対し,波形 パターンは良く似ており,ピーク値の差も10%以内で,い ずれも良く一致している。

これらの結果から,力学モデルは実現象を良く再現でき ていることが確認できた。これはまた,考え方のベースと なっている胸部たわみ量の発生メカニズムについても妥当 であることを示している。

Fig.12 Measured Force for Rib

Fig.13 Chest Deflection Comparison of Experiment and Simulation

Fig.14 Measured Forces for SID-Ⅱs

Fig.15 Chest Deflection Comparison of Experiment and Simulation

ドキュメント内 2004 No.22 (ページ 116-119)