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ドキュメント内 研究成果報告書 (ページ 125-129)

核融合力学分野 特定研究 2

を許す解析(縮小自己回帰モデル)を行うことで、影響のあるなしを明確にすることができ る。更にこのモデルを多変数系に拡張した。興味深い点は、ある因果関係を持つテストモ デルから生成した多変数時系列データでた影響が無いはずの二つの時系列に相関が現れる ことがある事である。相関解析からは元のモデルを推定することができないが、縮小自己 回帰モデルでは因果関係を特定できる。これらから縮小自己回帰モデルは疑似相関に対し て強い手法と期待できる。本手法より、これまで明確でなかった因果関係が議論できる。

新たなプラズマ研究法としての期待が高まった。

LHD ではディジタル相関 ECE がルーティン的に稼働し始めており、重水素実験において 大量にデータを取得できた。ディジタル ECE 計測により従来の数 cm の空間分解能が電子 ラーマ半径と同程度の 3mm まで増加した。これにより数 kHz の MHD 揺動の固有関数がよ り高い解像度で得る事ができる。 100 kHz 程度の乱流揺動を計測するには相関解析するた め長い時間幅が必要になる。そこで ECE の中間周波数帯域信号の帯域を 5 GHz 程度に狭め サンプリング周波数を落とし長時間のデータ取得を行うというアイデアが議論された。実 験条件を調整することで捕捉電子不安定性観測が期待できる。

レーザーによる揺動計測に関して多くの議論がなされた。トリプルグレーティング分光器 を用いてトムソン散乱により PANTA プラズマの温度、密度の径方向勾配が得られた。併せ

て PANTA プラズマの 10 kHz の揺動振動の位相情報を相関関数により抽出した。トムソン散

乱用の YAG レーザーは 10 Hz で繰り返すが、多くの放電(200 回)でレーザー入射タイミン

グと 10 kHz 揺動の位相を同時に計測することで密度と温度の揺動位相依存性が得られる。

ここから密度揺動成分は温度揺動成分に比べてかなり大きい、温度揺動振幅の統計誤差が

大きく精度を高めるには更なる放電が必要である、事が分かった。新たなレーザー計測と

してベクトルトモグラフィーが提案された。これは線積分吸収分光からイオン分布関数の

構造を推定しようとするものである。イオンに巨視的な流れがある場合、同じ地点におい

てもイオン分布関数はドップラーシフトにより視線によって異なる。このようなベクトル

場を再構成する手法がエンジンの炎の計測等で開発されており、これをプラズマ流れ場の

計測に応用する。この手法はプラズマ内の様々な乱流ベクトル場(電流、磁場、電場)のト

モグラフィー計測にも応用可能と期待できる。特に本特定研究のサブテーマで開発中のレ

ーザー光渦計測と組み合わせた乱流速度場計測のアイデアが議論された。

プラズマ流れ場構造観測に関する統合的研究

核融合科学研究所 ヘリカル研究部 居田克巳 目的

プラズマの流れ構造は周辺プラズマの制御やコアプラズマの閉じ込めに重要な役割を演 じている。近年、プラズマ平行流は磁気面の統計化により予想よりもはるかに強く減衰す る事が明らかになったように、プラズマの流れ構造を決めている物理機構は多様である。

このためプラズマ流れ構造形成機構を理解する為には流れ場の観測に加え、平衡圧力分布、

乱流揺動、磁場揺動等、同時かつ多点 ( 多次元 ) で行う事が必須である。応用力学研究所の

直線装置 PANTA ではプラズマ平行流の計測を行っている。同時に静電揺動も観測してお

り、流れ構造に関する統合的計測が可能な実験装置である。そこで本研究では様々な信号 の中からイオン流速に相関のある物理量を抽出する手法を開発する事を目的とする。本手 法の進展により、プラズマ流れ場構造観測に関する統合的研究が可能となる事が期待され る。

本研究では昨年度に、流れ場計測に重要なイオン分布関数の計測でプラズマ小崩壊現象 に伴うイオン分布関数の歪みを発見するという成果をあげ、核融合科学研究所において記 者発表を行っている。このため応用力学研究所の共同研究として継続し、更に成果を上げ る事は必須である。

PANTA における流れ形成

九州大学直線磁化プラズマ装置ではマッハプローブにて磁力線に平行方向の流を計測し ている。図は中性密度を変化させた際に PANTA で形成される密度分布(左)と平行流分布 (右)を示す。中心部に密度分布の急峻化を伴う大きな平行流と平行流シアの形成が観測さ れた。特に中性ガス圧を高くした際に密度分布の急峻化が顕著に現れる。またこの時、平 行流はプラズマ周辺部では逆転流(エンド部からソース部へ向かう流れ)になる。プラズマ 乱流によるレイノルズ応力を評価すると、中心部の流れシアは乱流が駆動している事が明 らかになった。しかし周辺部では乱流は逆転流からエネルギーを受け取っていると考えら れる。この逆転流の駆動源の同定は今後の課題である。

図 PANTA において観測された密度及び平行流(マッハ数)の径方向分布 29特2‑6

核融合力学分野 特定研究 2

歪み緩和する。分布関数の 1 次モーメントである巨視的流れも影響を受けるため、プラズ マ流れ構造形成機構を理解する為にはこの崩壊現象の理解も重要である。

LHD プラズマでは、崩壊現象が起こるかなり前からプラズマの変形が現れる。この変形 は共鳴モード(外部から与えられる力がある周波数で共振する事で起こる振動現象)と呼ば れ、プラズマ全体に広がる。この共鳴モードは崩壊現象に結びつくことはなく、むしろ崩 壊現象に至るほどエネルギーがプラズマ中に蓄積されるのを防ぐ役割を担っている。そし て、この共鳴モードが一瞬停止してしまうと、その次の瞬間に、非共鳴モード(共振周波 数を持たず振動することもなく、一気に成長する現象。破断など。)による変形が成長し て、一気にプラズマの一部が失われるという崩壊現象が突発的に起こることを発見した。

非共鳴モードによるプラズマの歪みは一ヶ所に集中する。この非共鳴モードによるプラズ マの歪みを観測することで、突発現象の発生を直前に予測する事ができる。このように、

突発現象の直前に起こる「トリガー」(引き金)をうまく捉えることで、現象の直前予測 が可能であるということが明らかになった。

自然や社会では、「いつ起こっても不思議はないが、いつ起こるかを予測することが難 しい」現象が数多く観測されている。火山噴火、集中豪雨、太陽フレア、経済危機などが その例で、これらは突発的に発生する。このような突発現象の予測は物理学における大問 題の一つであり、様々な突発現象に関わる物理過程を、様々な分野の研究者が集まって比 較することで、突発現象を普遍的に理解し、その予測に結びつけようという新しい研究が 始まろうとしている。

成果の評価

プラズマの突発現象の前兆を捉えた事は、突発現象の理解・予測という点で、大きな成 果と考えられる。これらの成果をまとめた論文が Scientific Reports 8 (2018) 2804 に掲載さ れた。論文発表に合わせて、核融合科学研究所でプレスリリースを行った。本成果は国内 の新聞のみならず、海外のインターネットメディアにも取り上げられるなど、国際的にも 高い評価を受けた。自然現象や社会に見られる多くの突発現象の研究に、重要な指針を与 えると考えられ、3 月 22 日から東京理科大学で開催される日本物理学会の「突発現象の科 学」シンポジウムでも発表された。

論文

https://www.nature.com/articles/s41598-018-21128-z 核融合科学研究所プレスリリース

http://www.nifs.ac.jp/press/180213.html 研究組織

居田克巳 小林達也 稲垣滋

核融合科学研究所

核融合科学研究所

九州大学応用力学研究所

直線磁化プラズマにおけるストリーマー構造の解析

九州大学 基幹教育院 山田 琢磨

1. 目的

プラズマ乱流中のミクロスケール構造であるドリフト波が非線形結合することで発生する、メゾスケ ール構造のストリーマーやゾーナルフローは径方向輸送に大きな影響を与えるため、その発生機構を研 究することは核融合プラズマの輸送を理解するうえで非常に重要である。直線プラズマはトロイダルプ ラズマに比べて低温で近接性に優れるため、乱流やメゾスケール構造の基礎的解析を行う点において有 利である。九州大学応用力学研究所の直線プラズマ実験装置

LMD-U

では、ストリーマーと、その構造 形成に重要な役割を果たす媒介波が世界で初めて発見された。計測は周方向静電プローブアレーと径方 向駆動プローブによって行われ、相関解析により直線プラズマの

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次元円断面内においてストリーマー 構造は周方向に自己収束し、径方向に伸びた構造を持つことが分かり、また媒介波は径方向に節を持つ 構造であることが分かった。ところがストリーマー構造・媒介波・ストリーマーを形作る搬送波の軸方 向構造と三者の関係については詳しい解析は行われていなかった。そこで本研究では軸方向に並んだプ ローブを用い、相関解析をすることでストリーマー構造・媒介波・搬送波の軸方向構造について解析を 行った。さらにストリーマー構造の包絡線を調べることによって、結果の妥当性を確認した。

2. 実験方法

直線プラズマ実験装置

LMD-U

を用いてストリーマー実験を行い、多数の静電プローブでイオン飽和 電流(電子密度揺動)を計測することで、ストリーマー構造とその発生に重要な役割を果たす媒介波、

またストリーマーを形作る搬送波(ドリフト波)についての

3

次元的空間構造を明らかにした。

LMD-U

は軸方向の長さがz = 3740 mm、内径r = 450 mmの直線装置である。ソース部に付けられた内径

95 mm

のガラス管に

RF

アンテナで

3 kW/7 MHz

RF

波を印加し、ヘリコンプラズマを発生することで真空容 器内部に直径が約

100 mm

の直線プラズマが発生する。軸方向に

0.09 T

の磁場を発生させ、内部に封入 したアルゴンの圧力を

1.5 mTorr

に調整することで、ドリフト波乱流が非線形結合を通してストリーマ ー構造を形成する。このとき中心部の密度は

10

19

m

–3程度、電子温度は

3±0.5 eV のおおよそ平坦な分

布である。

軸方向z = 1885 mm、半径r = 40 mmの位置に周方向

64

チャンネル静電プローブが設置されている。

このプローブにより詳細で精度の良い乱流の

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次元フーリエスペクトルを観測し、プラズマ内に発生す る揺動の周方向モード数を特定した。また、軸空間構造を解析するために軸方向z = 1625 mm

1375 mm、

半径r = 40 mmの位置でも同時に計測を行った。ストリーマーの搬送波となるドリフト波や、構造形成

に関わる媒介波は個々がある周方向モード数と周波数を持つ単一の揺動であるため、これらの構造解析 には相互相関解析を用いた。2 つの揺動のクロススペクトルの位相情報はこれらの位相差を表すので、

ある参照波を基準として用いれば揺動の位相構造が特定できる。ストリーマー自体は搬送波が周方向に 自己収束した構造体であり、その包絡線は媒介波と位相関係を保持する。つまり搬送波が形作る包絡線 構造は媒介波と同じ周方向モード数と周波数を持つことになる。そのため、ストリーマーの位相構造を 特定するためには、媒介波を参照波として、媒介波と

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つの搬送波のバイスペクトル解析を行えばよい。

この場合、バイフェーズが搬送波の包絡線(ストリーマー構造)と媒介波の間の位相差を表す。

また、バイスペクトル解析で得られた結果(ストリーマー構造の軸方向モード数など)の妥当性を確 認するために、自己収束した構造体であるストリーマー構造の包絡線を求め、同時刻での各測定点での ストリーマー構造の包絡線を直接比較した。包絡線の抽出には、長時間平均を引くことであらかじめ低 周波数成分を除去した後に、ヒルベルト変換を用いた。

ドキュメント内 研究成果報告書 (ページ 125-129)