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『ショーペンハウアー研究』

およびその他の論文の傾向図

125 / 126 の重要性を再び世に問う本だからである。

またショーペンハウアー著作の翻訳、特に初期ショーペンハウアー研究に関わる 遺稿集などの翻訳も進められている。日本における最初の主著の翻訳は姉崎正治に よる『意志と現識の世界』であり、最初の発行から何度も版を重ねて刊行されてい る。他にも、磯部忠正、岡本信二郎、土井虎賀壽らによる翻訳がある。なお学位論 文の翻訳で最も古いものも姉崎正治による翻訳である。

以上より、日本のショーペンハウアー研究の傾向は、特に 2000 年以降、ショー ペンハウアー哲学の生成過程について、またショーペンハウアー哲学の現代的意義 について言及するものが多くなってきたと言える。過去現在を問わず共通テーマと しては、受容史では、特にニーチェについて、また西田幾多郎をはじめとする日本 の哲学者との連関、さらにインド思想を中心とした東西比較思想なども数多くみら れる。

かつては、自殺、性愛というテーマ、および人生観に関する記述が多々論じられ てきた。これらは、ショーペンハウアーの通俗的理解が、比較的容易にアプローチ しやすいテーマを通してなされ、固められていったということを裏付けている。し かし、『ショーペンハウアー研究』発刊以降はショーペンハウアー哲学の生成史を中 心に、殊に先に述べた『ショーペンハウアー哲学の再構築』、そして『ショーペンハ ウアー読本』、『理想 第687号 特集ショーペンハウアー哲学の最前線』など、2000 年以降の比較的最近の著作群においては、いずれにおいてもショーペンハウアーを、

ステレオタイプとしてのショーペンハウアーと分けて、様々な仕方で解釈し直して いる。ショーペンハウアー生成史として、若きショーペンハウアーにおける意志概 念は、カント『純粋理性批判』演繹論における統覚の自発性に由来すると考え、カ ントからショーペンハウアーへの連続性、ショーペンハウアー哲学成立過程に迫る 議論がなされている。294 その他、色彩論、身体論など、近年多くみられるテーマの 他、過去から常に一定数の研究を積み重ねてきたニーチェや西田との比較思想も多 い。

若きショーペンハウアー研究、そしてカントおよびカント前後の哲学者たちから の影響史・受容史の研究を 15 年以上継続してきた日本が、今後ショーペンハウア ー研究で世界の中で果たし得る役割は、ショーペンハウアー哲学の基本概念を、前 史を踏まえた上で再定義しつつ整合的に解釈し、それらの積み上げを継続的に行う ことである。

5. 参考文献(補論一のみ)

・『ショーペンハウアー哲学の再構築 「充足根拠律の四方向に分岐した根について」

(第一版)訳解』鎌田康男、齋藤智志、高橋陽一郎、臼杵悦生訳 法政大学出版、

2000年。

294 鎌田康男「構想力としての世界 ― 『純粋理性批判』演繹論の受容から見る初 期ショーペンハウアー哲学の再構築 ―」『理想』第687号、理想社、千葉、2011 年p. 12参照。

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・鎌田康男「ミレニアムのショーペンハウアー」『ショーペンハウアー哲学の再構 築 「充足根拠律の四方向に分岐した根について」(第一版)訳解』鎌田康男、齋 藤智志、高橋陽一郎、臼杵悦生訳、法政大学出版、2000年。

・井上克人「明治期におけるショーペンハウアー哲学の受容について ― 井上哲次 郎、R・ケーベル、三宅雪嶺に見る本体的一元論の系譜」『ショーペンハウアー研 究』Vol. 12、日本ショーペンハウアー協会、2007年。

・茅野良男「日本におけるショーペンハウアーの受容とその課題(その一)」『ショ ーペンハウアー研究』Vol. 14、日本ショーペンハウアー協会、2009年。

・茅野良男「日本におけるショーペンハウアー」『ショーペンハウアー全集 第四巻』

茅野良男訳、白水社、1974年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その一)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 1、日本ショーペンハウアー協会、東京、1993年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その二)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 2、日本ショーペンハウアー協会、東京、1995年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その三)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 3、日本ショーペンハウアー協会、東京、1997年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その四)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 4、日本ショーペンハウアー協会、東京、1999年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その五)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 5、日本ショーペンハウアー協会、東京、2000年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その六)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 6、日本ショーペンハウアー協会、東京、2001年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その七)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 7、日本ショーペンハウアー協会、東京、2002年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その八)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 8、日本ショーペンハウアー協会、東京、2003年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その九)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 9、日本ショーペンハウアー協会、東京、2004年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その十)」『ショーペンハウアー 研究』Vol. 10、日本ショーペンハウアー協会、東京、2005年。

・松村要「日本におけるショーペンハウアー書誌(その十一)」『ショーペンハウア ー研究』Vol. 11、日本ショーペンハウアー協会、東京、2006年。

・齋藤智志・高橋陽一郎・板橋勇人『ショーペンハウアー読本』法政大学出版局、

東京、2007年。

・『理想 特集ショーペンハウアー哲学の最前線』No.687、理想社、2011年。

・藤田健治「ショーペンハウアー哲学の個人性と歴史性社会性」『ショーペンハウア

ー全集 第4巻』月報14、白水社、東京、1974年。

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