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[ 1 ]序

ドキュメント内 消費者保護と特定商取引法(2) (ページ 38-135)

氏名等の明示規定は、従来、本法上では、訪問販売取引(第3条)と電話勧 誘販売取引(第

16

条)だけに存在していた。しかし、従来の規定でも、通信販 売取引では、施行規則第8条で、広告にあたって業者は氏名を表示しなければ ならず、連鎖販売取引では、施行規則第

25

条で、広告にあたって、統括者、勧 誘者、連鎖販売業を行う者は氏名を表示しなければならないとされており、特 定継続的役務提供取引では、施行規則第

32

条で、第

42

条第1項の概要書面を交

付するときは、その概要書面に業者は氏名を表示しなければならないとされて おり、また、業務提供誘引販売取引では、施行規則の第

40

条で、第

53

条の広告

にあたって、業者は氏名を表示しなければならないというふうになっており、

結果的には、全部の取引で、氏名等の明示義務は義務付けられているものと思 われる。ただ、訪問販売取引は、相対的取引の部分が格段に大きいところに特 徴があるから、他の取引と比べて、業者の氏名の表示義務が一層要求されるこ とになろう。

ところで、平成

16

年改正で、訪問販売取引(第3条)、電話勧誘販売取引(第

16

条)、連鎖販売取引(第

33

条の2)、業務提供誘引販売取引(第

51

条の2)の 規定が改正ないしは追加され、「勧誘に先立って、その相手方に、販売業者等 の氏名又は名称に加えて、契約の締結について勧誘する目的である旨及び当該 勧誘に係る商品等の種類を明示しなければならない」こととなった。すなわ ち、業者は、この改正で、氏名は当然、勧誘目的の明示義務まで課されること となった。もっとも、この項では、訪問販売取引に限って氏名等の明示義務を 述べることにしたい。

訪問販売のような無店舗販売の場合には、消費者は、業者や商品等の内容が 分からず、あるいは業者のいうように当該商品等の購入義務があるものと思 い、安易に取引することがあり得る。例えば、過去には、セールスマンが、電 話会社の社員を装ってアナログ電話機は使用できなくなるといってデジタル電 話機に交換させたり、消防署員を装って消防署のほう(ここに「ほう」とは、

方角をいっている)から来ましたなどといって消火器の販売をしたり、ガス会 社の社員を装ってガス漏れ検知器の販売をしたり、保険所職員を装って健康食 品や衛生器具の販売等をした幾つもの例がある。そこで、本法は、このような 業者側の詐欺にも等しい販売行為に対して、消費者を保護する必要から、どの ような業者がどのような商品や権利を販売し、あるいは役務の提供をしようと しているかを明確にさせることを目的として、従来、第3条に、氏名、勧誘目 的及び商品等の明示義務を規定したものであるが、平成

16

年の改正で、勧誘に

先立って、氏名等や勧誘目的であることを表示することが新たに付加された。

なお、条文の下線は、平成

16

年の改正部分を示したものである。

[ 2 ]条文

第3条(訪問販売法における氏名等の明示

)

販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売をしようとするときは、その勧誘 に先立って、その相手方に対し、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、

売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨及び当該勧 誘に係る商品若しくは権利又は役務の種類を明らかにしなければならない。

[ 3 ]要件

( 1 )勧誘に先立って、販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称を明示しな ければならないこと

ここに明示する氏名は、セールスマンの氏名ではなく、販売業者又は役務提 供事業者の氏名又は名称である。もちろん、個人の場合には、自己の氏名を明 示しなければならない。従来から、氏名の明示の時期は、訪問した時点であり、

雑談を含めて販売の話をはじめる前でなければならないと解されてはいた。し かし実際には、訪問者は、親切を装い、建物や下水道の点検などと偽って、販 売目的を隠して消費者宅に入り込んで強引な勧誘をするような事態が多発し た。そこで、

16

年改正で、「その勧誘に先立って」業者の氏名等を明示するこ とを義務づけ、従来明確でなかった氏名の明示の時期を明確にした。平成

18

通達では、法第3条(氏名等の明示)関係の項で、

1

)「勧誘に先立って」とは、

商品若しくは権利の販売又は役務の提供の目的で、契約締結のための勧誘行 為を始めるに先立って、の意味である。ここでいう「勧誘行為を始めるに先 立って」とは、相手方が勧誘を受けるか拒否するかを判断する最初の重要な機 会を確保できる時点と解すべきこととなり、少なくとも、勧誘があったといえ る「顧客の契約締結の意思の形成に影響を与える行為」を開始する前に所定の 事項につき告げなければならないとしている。

具体的には、個々のケース毎に判断すべきであるが、住居訪問の場合であれ ば、基本的に、インターホンで開口一番告げなければならない。また、キャッ チセールスやアポイントメントセールスの場合には、当初から、勧誘行為が始 められる場合が多いことから、基本的に、呼び止めたり、電話をかけるなど相 手方と接触した際に告げることとなるとしている。

2

)「氏名又は名称」については、

個人事業者の場合は、戸籍上の氏名又は商業登記簿に記載された商号、法人 にあっては、登記簿上の名称であることを要する。例えば、会社の販売員が訪 問した場合に当該販売員の氏名のみを告げることや、正規の名称が「㈱××商 事」であるにもかかわらず、「○○公団住宅センター」や「○○アカデミー」

等の架空の名称や通称のみを告げることは、本号にいう「氏名又は名称」を告 げたことにはならないとしている。

( 2 )勧誘に先立って、売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目 的である旨を明示しなければならないこと

この規定も、

16

年改正で挿入されたものである。従来の規定では、勧誘に先 立って、訪問目的(契約締結の勧誘目的)を必ずしも明示する必要はなかった から、業者は雑談をしながら安易に消費者宅に入り込むことができた。この規 定で、業者が販売目的を明確にすれば、消費者は用心をして業者を家に入らせ ることはほとんどあるまい。

平成

18

年通達では、、法第3条(氏名等の明示)関係の項の(

3

)に、

3

)「売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をする目的である旨」と は、

  具体的には、「本日は、弊社の健康布団をお勧めにまいりました。」「水道 管の無料点検にまいりました。損傷があった場合には、有料になりますが、

修理工事をお勧めしております。」等としている。

  なお、平成

17

8月

12

日の通達(平成

18

年通達も)では、法第3条(氏名 等の明示)関係の項に、第6項が付け加えられている(以下筆者要約)。そ

れは、

6

)上記を踏まえ、例えば、家庭訪問時にその勧誘目的を告げずに、「近くで 工事をやっているので、ついでに御宅の屋根を点検してあげましよう。」、「排 水管の点検にきました。」、以前施工をした業者からメインテナンスを引き継 いだので、挨拶にきました。」等と告げて、点検等を行った後に、住宅リフォ ホームを勧誘するとか、「排水管の清掃をしませんか。」等と排水管の清掃の み勧誘して清掃を行った後に、「高圧で清掃を行ったため、排水管に亀裂等 がないか点検するために床下を見せてほしい。」等と告げて、床下を点検し、

その結果、床下リフォームを勧誘する場合は本条違反に該当する、としてい る。

( 3 )勧誘に先立って、商品若しくは権利又は役務の種類を明示しなければなら ないこと

新規定では、業者は、勧誘に先立って、商品若しくは権利又は役務の種類も 明示しなければならない。平成

18

年通達では、法第3条(氏名等の明示)関係 の項の(

4

)で、

4

)「商品若しくは権利又は役務の種類」について、

例えば、「化粧品」等商品等の具体的イメージがわかるもりでなくてはなら ない。他方、個々の商品等の名前までを告げる必要はないとしている。

旧規定では、家に入り込んだ後に、商品等の種類等を明示してもよいように 解釈できるから 、 悪質な業者は雑談で家に入り込んだ後で本題に入ることが出 来た。今回の改正では、まず、勧誘に先立って勧誘商品等を明確にしなければ ならないから、消費者は勧誘商品等を聞いた時点で業者との接触を拒否できる し、また勧誘商品等とは別の商品等を売りつけられることも少ない。しかし、

下記の[

4

]にみるように、第3条違反には罰則の規定はないから、どれだけ の効果があるかは疑問である(但し、第6条違反−禁止行為となれば罰則があ り、実際には、第6条1項の不実告知、あるいは同条第2項の故意の事実不告 知のいずれかに該当する場合が多いと思われる。)。なお、事業者がこの明示義

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