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2− 120 [溶融池表面挙動解析ソフトの開発]

温度計測用ソフトとのデータ連携も考慮し、自動追跡機能を向上させたトレーサ自動追 跡ソフトを開発した。図3.2-58にソフトの画面例を示す。追跡すべきトレーサをクリック すると後は自動的に追跡を続ける仕組みになっている。 

                           

図3.2-58 トレーサ追跡ソフト(画面例)

 

[溶融池表面挙動解析結果(静止TIG溶接)]

シールドガス、硫黄濃度を変更して観察実験を繰り返し、溶融池表面のトレーサ移動の 向き・速度を求めた。その結果溶融池表面流れは表3.2-3に示すようにまとめることが出 来た。 

3.2-3 静止TIG溶接での溶融池表面流れのまとめ

速度:約0.5 0.6m/s外向き 備考:

 固溶境界線内側で、沈 み込む流れがあり、φ0.2 mmトレーサ使用の場合、

その大きさから沈降や潜 行の確認が容易。

速度:約0.50.7m/s外向き 備考:

 Heと比べ速度が高い 場合があり、この場合に は、トレーサはプラズマ 気流に押されている可 能性がある。

速度:周辺0.1m/s内向き     中央0.6 m/s外向き 備考:

 電極直下の外向きの 流れはプラズマ気流 の影響により発生し、そ の範囲(点線内)は、

時間経過とともに狭まる。

速度:周辺:約0.5 0.6m/s内向き 備考:

 プラズマ気流の影 響はほとんど受けな い。電極近傍で沈み 込みと若干の外向き の流れがある。

He Ar

高S系SUS(220ppm)

低S系SUS(10ppm)

速度:約0.5 0.6m/s外向き 備考:

 固溶境界線内側で、沈 み込む流れがあり、φ0.2 mmトレーサ使用の場合、

その大きさから沈降や潜 行の確認が容易。

速度:約0.50.7m/s外向き 備考:

 Heと比べ速度が高い 場合があり、この場合に は、トレーサはプラズマ 気流に押されている可 能性がある。

速度:周辺0.1m/s内向き     中央0.6 m/s外向き 備考:

 電極直下の外向きの 流れはプラズマ気流 の影響により発生し、そ の範囲(点線内)は、

時間経過とともに狭まる。

速度:周辺:約0.5 0.6m/s内向き 備考:

 プラズマ気流の影 響はほとんど受けな い。電極近傍で沈み 込みと若干の外向き の流れがある。

He Ar

高S系SUS(220ppm)

低S系SUS(10ppm)

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[溶融池表面温度分布計測装置の開発]

溶融池の表面温度分布を計測するために、二色温度法を使った温度計測用高速度カメラ およびその解析ソフトを開発した。二色温度法は二つの波長での放射輝度比から温度を求 める方法で、2400Kまでの校正が出来た。

                             

3.2-59 温度計測用ソフト(画面例)

 

[シミュレーション結果との照合]

静止TIG溶接での溶融池表面挙動については、シミュレーション結果との照合を実施済 みで、大阪大学にて行われたシミュレーション結果との良い一致が認められている。シミ ュレーションモデル構築に寄与するとともに、その精度検証ができた。現在は移動TIG溶 接での溶融池表面挙動、ならびに溶融池表面温度分布データに関する照合を実施中であり、

シミュレーションモデル構築に寄与するとともに、研究期間内にはモデルの精度検証も完 了する予定である。

 

温度解析結果画像 温度範囲カラーバー

撮影画像(2枚)

2− 122

[AW2121(2) 溶接現象の観察−高速ビデオおよび CCDカメラによる観察− ] 

(産業技術総合研究所 ものづくり先端技術研究センター) 

  アーク溶接時におけるアーク状態および溶融池表面の形状・挙動を観察する装置、さら に高速度で変動するアーク現象の解析手法を開発し、アークプラズマモデルの開発と検証 に必要なデータを取得する目的で、アーク溶接時の分光波長特性の空間分布と時間応答が 溶接条件によりどのように変化するのかについて解明し、解析目的及び溶接条件に応じて 適切な観察システムを構築するための指針を提供した。次に、溶融池表面の対流や波動な どとアークプラズマの状態及び電極表面温度を同時に観察して、定量的なデータを取得す るシステムの開発を行った。撮影対象の視野角や反応速度及び表面温度やプラズマ状態に より、要求される撮影システムの能力が異なるため、性能の異なる複数台のカメラを同時 に使用し、アークプラズマの挙動と溶融池表面挙動の解析および電極表面温度分布の計測 を同時に行うシステムを開発した。このシステムを用いて溶融池表面の挙動とアーク状態 とに及ぼすシールドガス組成と鋼材に含まれる成分元素の影響とを総合的に解析し、溶接 プロセスシミュレーションモデルの検証に必要な定量データを取得した。システム開発の 効率化のために、川崎重工業及び大阪大学と共同して研究を実施した。 

 

[溶接アーク現象観察システムの開発] 

図3.2-60に開発した溶接アーク現象観察システムの一例を示す。アーク溶接現象を有効

に観察するためには、アークプラズマ内部の空間的なスペクトル分布や、特定波長の光強 度の空間分布の測定が必要となる。また、実際の溶接アークは時間的に変動しており、水 冷銅板上の静止アークプラズマ の測定に使用される走査式の測 定では正確な測定が困難となる 場合が多い。このため、特定直 線上の映像をスペクトル分解し、

イメージセンサ上に2次元デー タとして結像する分光プリズム を用いた。また、同一の光学系 を用いて特定光波長の映像を同 時に取得するようにした。分光 プ リ ズ ム は 測 定 範 囲 が 400-700nm の も の と 、 400-1000nmのものを撮影目的 により使い分けた。イメージセ ンサとしては、ダイナミックレ ンジが12ビットと高くかつ高精細画像(1280画素x1024画素)ではあるが撮影速度の低 い(15駒/秒)空間スペクトル分布観察ビデオシステムと、ダイナミックレンジは8ビッ トと少ないが、解像度の高い(128-1024画素x128-1024画素)高速度ビデオを2台用いた モーションステレオ観察、及び8ビットのダイナミックレンジで低解像度画像(256画素x 256画素)ではあるが10000駒/秒以上の撮影が可能な高速度カラービデオなど、撮影速 度と解像度および分光感度(撮影画像の波長帯域)の異なる複数のセンサを同時に用いて、

3.2-60分光特性を調べるアーク現象観察システム

2− 123

溶接現象の多角的な解析を実施した。また、毎秒1万駒の高速度撮影に必要なレーザパル ス照明ができるシステムも開発した。開発したシステムで観察することにより、時々刻々 変化する空間的なスペクトルや流れ挙動の解析が可能となった。これらの測定データは極 めて大量であり、表面流れや温度分布を自動的に解析処理する表面挙動解析ソフトを開発 して、迅速な解析を可能とした。

 

[アーク現象解析結果] 

図3.2-61に観察したデータの例を示す。それらは水冷銅板上でアークを観察した例であ

り、アルゴンやヘリウムイオン及び電極から蒸発した金属蒸気の空間的な分布やそれらの 時間的な変動が解析できる。また、スペクトル分布から、離散的な発光スペクトルを除去 して連続スペクトル分布を求め、その最大値となる波長を解析することにより、電極表面 の温度も推定できる。

3.2-61 分光特性観察結果の一例

図3.2-62は、狭帯域の干渉フィルターを用いて特定波長の映像を取得し、電極表面温度

を計算した例を示す。溶接電流50A、溶接速度10cm/min、シールドガスにアルゴンを使 用した場合の結果の例であり、電極温度の空間分布のみでなく、時間的な挙動も解析が可 能となり、アークや溶融金属の挙動により電極温度がどのように影響されるのかを解析で きるようにした。

2− 124  

                   

実際の溶接では、溶融金属は3次元の複雑な動きをし、その速度は速く、流れ速度分布 の解析では高速度ビデオによる観察が不可避である。図3.2-63に、カラー高速度ビデオを 用いて、活性フラックスの影響を検討した結果を示す。フラックスがない場合には、溶融 金属表面のアノード領域には金属蒸気による明るく光る領域が存在する。この場合には溶 接ビード周辺に金属蒸気によるヒュームがかなり付着する。一方、活性フラックスを塗布 した領域では、金属蒸気の発生は抑制され、溶融金属中央部に集中する傾向を示し、その 領域は時間的に変動する。高速度ビデオによる観察結果では。活性フラックスによる薄い 皮膜が溶融池に広がり、この影響で金属蒸気の発生が抑制されていると考えられる。溶接 ビード表面にはスラグが付着している。対流挙動は非常に複雑で非定常であり、母材中の 硫黄濃度や活性フラックス及び酸素の影響など溶接条件の少しの違いで、異なる結果が得 られた。静止アークにおいても、アノード領域が触れ回る現象が測定されており、溶融金 属の流れパターンもこのアノードの移動につれて変化している。

 

3.2-62 電極表面温度分布測定結果の一例

3.2-63 活性フラックスの影響を観察した結果の一例

2− 125

[AW2122 X線透視法による溶込み特性と溶融池内部湯流れのリアルタイム観察] 

(大阪大学 接合科学研究所)

TIGアーク、レーザ溶接およびハイブリッド溶接時の溶込み深さや溶融部形状を決定す る溶接条件、SやOなどの不純物元素、表面張力などの制御因子を抽出し、各溶接時の溶 融池内部の湯流れを明確にして、TIGアーク溶接現象、レーザ溶接現象およびハイブリッ ド溶接現象を解明し、シミュレーションのための基礎知見を得ることを目的として、オー ステナイト系ステンレス鋼に対して、TIGアークまたはYAGもしくはCOレーザ単独溶 接およびYAGレーザ・TIGアークハイブリッド溶接を行った。

最終目標はほぼ達成でき、以下のような成果が得られた。

[X線透視リアルタイム撮影システムの開発]

溶接時の溶融池内部の湯流れや溶込み状況が観察できるX線透視リアルタイム撮影シ ステムを開発した。そのシステムの模式図を図3.2-64に示す。特に、ステンレス鋼では、

白金(Pt)棒とタングステン(W)粒子を埋め込んだ試料を準備し、溶接時のPtの攪拌状況か ら溶融池形状と溶込み深さの増加状況を推定し、W粒子の移動状況から溶融池内の湯流れ 現象を世界で初めてリアルタイム観察し、確認した。S含有量が少ないSUS 304ステン レス鋼の通常とA-TIGによるスポット溶接時におけるPt棒溶融状況の観察結果の一例を 図3.2-65に示す。また、TIGビード溶接時のW粒子の流動を観察した結果を図3.2-66に 示す。通常の溶接では、時間の経過と共に溶融池の表面が拡大するのに対して、A-TIG溶 接では、深くなることがわかる。また、溶融池内部での W 粒子の移動状況が観察され、

移動速度が計測された。これらの結果は、表面張力の効果として解釈でき、従来のシミュ レーションの結果を裏付けるデータとなっている。

 

SUS304に対して各種条件でYAGレーザ溶接またはCOレーザ溶接をし、

溶接時の表面の溶融池挙動と内部でのW粒子の移動状況を観察した。W粒子の移動測定 結果を図3.2-67に示す。WはSUS304の融液よりも重いが、広範囲に移動していること からレーザ溶接時も溶融池内に湯流れが存在することがわかる。

Micro focused

X -ray tube W ork table Im age intensifier

CCD camera

High speed camera

Specimen

YA G laser head fiber YA G laser

< Monitor >

CR T

Recorder TIG torch

S hielding gas G A S

TIG arc w elder

Micro focused

X -ray tube W ork table Im age intensifier

CCD camera

High speed camera

Specimen

YA G laser head fiber YA G laserYA G laser

< Monitor >

CR T

Recorder TIG torch

S hielding gas G A S

S hielding gas G A S

TIG arc w elder TIG arc w elder

3.2-64 溶接時の溶融池内部観測のためのX線透視システムの模式図

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