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バイオエタノール革新技術研究組合

農研機構 森林総研

委託

共通研究室(東大アントレプレナープラザ内)

組合分室:JXエネルギー、三菱重工メカトロシステムズ、

トヨタ、鹿島、サッポロエンジ、東レ

北大 JIRCAS 長岡技科大 九大

発酵

草本系栽培 木質系栽培

発酵 糖化

大学院農学生命科学研究科 鮫島教授、森田教授

※2011年4月まで

※2012年3月まで

共同研究

再委託

2-1-2 研究開発の目標設定

NEDO 基本計画において、平成 25 年度の最終目標は、「セルロース系目的生産バイオマスの栽培からエタ ノール製造プロセスまでを一貫したバイオエタノール生産システムについて、基盤技術を確立する。 技 術の達成度合いを技術革新ケースの開発ベンチマーク(平成 27 年度)を参照しつつ評価する」こととな っている。

これを受けた本プロジェクトでは、プロジェクト最終年(平成 25 年度)の目標を、「エタノール製造コ スト 80 円/L(原油 50 ドル/バーレル時)、化石エネルギー収支 2 以上、GHG 削減率 50%以上」と設定した。

この目標は、バイオ燃料技術革新計画の平成 27 年度ベンチマークのコスト 40 円/L(原油 50 ドル/バー レル時)を見据えた目標設定となっている。また、化石エネルギー収支、GHG 削減率は、 バイオ燃料技 術革新計画の平成 27 年度ベンチマークおよびエネルギー供給構造高度化法の判断基準により、設定した ものである(表Ⅲ-2-1-2-1)。

表Ⅲ-2-1-2-1 研究開発目標と根拠

また個別の開発項目の目標をその設定の考え方を表Ⅲ-2-1-2-2 に記した。いずれも上記研究開発目標を 個別の研究項目にブレークダウンしたものである。

表Ⅲ-2-1-2-2 個別の開発目標と設定の考え方

H25年度最終目標 根拠

本開発事業

(東京大学・バイオエ タノール研究組合)

 80円/L

(原油50ドル/バーレル時)

H27年度ベンチマークに対して中間段 階となるH25年度の目標として設定

 エネルギー収支2以上 「バイオ燃料技術革新計画」

技術革新ケース ベンチマーク

 GHG削減率50%以上 エネルギー供給構造高度化法 判断基 準

H25年度最終目標

NEDO基本計画

 セルロース系目的生産バイオマスの栽培からエタノール製造プ ロセスまでを一貫したバイオエタノール生産システムについて、

基盤技術を確立する。

 技術の達成度合いを技術革新ケースの開発ベンチマーク(H27 年度)を参照しつつ評価する。

項目 目標 目標設定の考え方

原料生産 技術

バイオマス収量 50t/ha 「バイオ燃料技術革新計画」のベンチマーク 原料生産コスト 3円/kg (製造コスト目標のうち目安として10~12円/L)

製造技術

前処理 糖化率80% 「バイオ燃料技術革新計画」のベンチマーク 酵素糖化 コスト10円/L (製造コスト目標80円/Lのうちの目安として)

C6-C5二段発酵 C6:95%

C5:85%

「バイオ燃料技術革新計画」の ベンチマーク「95%」を目安として

C6C5同時発酵 85% 独自に設定

濃縮脱水 省エネ技術の

評価・適用 (「革新計画」のベンチマーク2.5MJを参照)

ベンチ 実証

バイオマスからの

エタノール収量 0.25L/kg

2-1-3 目標と成果

(1) 各気候帯における「エネルギー原料植物」の周年供給システム確立 a)開発概要(課題と目標)

原料生産技術の開発においては、原料を年間安定的に供給するための周年供給システムの確立、原料 の生産持続性の確立、生産性の向上とコスト低減が課題である。以下の原料生産技術開発に関する検討 項目2-1-3(1)(2)(3)(4)共通の目標を次のように設定した:原料の周年供給システムの確 立の課題に対する目標は、本開発事業の開始時は冷帯から熱帯までの各気候帯の栽培モデルを構築する ことを目標としたが、熱帯に選択集中する方針変更に伴い、平成 23 年度以降は熱帯の周年供給モデルの 構築とインドネシアで実現可能であることの立証を目標に改めた。生産性については、バイオ燃料技術 革新計画のベンチマーク 50t/ha を目標とし、原料生産コストについては本事業の生産コスト目標 80 円 /L のうち目安として 10~12 円/L 換算となる 3 円/kg を目標とした。生産持続性の確立に関しては、候補 地での大規模栽培試験における生産持続性の実証と環境・社会影響評価の終了を目標とした。食料生産 との競合回避については環境・社会影響評価の中で検討評価した。

b)周年供給システム構築のための栽培・収穫・貯蔵モデルの検討 b)-1 個別目標

冷帯から熱帯までの各気候帯において、生産性 50t/ha・原料コスト 3 円/kg のバイオマス原料を周年 供給するための栽培・収穫・貯蔵モデルを検討し、候補植物・地域を選定する。

b)-2 検討内容(方法と結果)

1)各気候帯における原料候補植物のバイオマス生産性評価

冷帯から熱帯までの各気候帯で、原料候補植物の栽培試験を行い、生産性を中心に評価を行った。す なわち、冷帯(北海道)では 9 種、温帯(関東)では 21 種、暖温帯(九州)では 10 種、熱帯(インド ネシア)では 10 種の候補植物の生産性を評価した結果、冷帯ではススキが(推定収量 25t/ha・年)、温 帯・暖温帯ではエリアンサス(推定収量 50t/ha・年)、熱帯ではネピアグラス(50t/ha・年)が、それぞ れ最も生産性が高いことが明らかとなった。

表Ⅲ-2-1-3-(1)-1 各気候帯の原料栽培・貯蔵モデル

2)同一条件(温帯)における原料候補植物の(バイオマス生産性・ストレス耐性の)比較検討

バイオマス生産性に関する既往研究のレビューから候補植物としてあがったのは、(表Ⅲ-2-1-3-(1)-2)

にあげたもので、多くは、イネ科・C4 型・多年生植物であった。この中から 10 種の候補植物を選定し、

温帯(東大農場)において比較検討のために栽培試験を実施した。その際、バイオマス生産性とストレ ス耐性を中心にして比較検討を行うため、露地では候補植物の収量性と窒素利用効率を、ハウスでは耐 乾性に着目した。以上の比較検討の結果、バイオマスの生産性からエリアンサスとネピアグラスを選定 した(表Ⅲ-2-1-3-(1)-3)。ネピアグラスは,窒素利用能、耐乾性でも最も優れており、ストレス環境条 件での栽培に向いていると考えられた。

表Ⅲ-2-1-3-(1)-2 セルロース系バイオエタノール原料の候補植物

表Ⅲ-2-1-3-(1)-3 これまでに報告されたセルロース系バイオエタノール原料植物の収量

図Ⅲ-2-1-3-(1)-1 異なる土壌水分条件で栽培したセルロース系バイオエタノール 原料候補植物の収量(値は平均値±標準誤差(n=3))

3)各気候帯における収穫・貯蔵モデルの検討

冷帯・温帯・熱帯の各地域別に、原料植物、収穫機械、天日乾燥、貯蔵方法の検討を行った。ススキ、

ヤナギ及び牧草は、既存の収穫機械で収穫が可能だが、ネピアグラス、エリアンサスには専用収穫機は なく、機械収穫に関する情報が乏しい。そこで、これらの様な長大な原料植物を収穫するために既存の 汎用機による収穫試験を試みた結果、ネピアグラス、エリアンサスは、サトウキビ収穫用のケーンハー ベスタ、飼料作物収穫用のケンパーで収穫が可能であることを確認した(図Ⅲ-2-1-3-(1)-2)。

ケーンハ-ベスタでこれらを収穫した際のデータを、表Ⅲ-2-1-3-(1)-4 に示した。この結果から、収穫 機械の能力範囲の中で適正に運転できたと判断した。

図Ⅲ-2-1-3-(1)-2 ケーンハーベスタによる収穫試験の様子

バイオマス収量t/ha・年 ネピアグラス サトウキビ シコクビエ ソルガム トウモロコシ

湿潤 ネピアグラス サトウキビ シコクビエ ソルガム トウモロコシ

乾燥 70

60 50 40 30 20 10 0

表Ⅲ-2-1-3-(1)-4 ケーンハーベスタによる収穫試験結果 原料植物 草丈

[m]

含水率

[%]

乾物収量

[t/ha・年]

作業速度

[m/s]

所要動力

[kW]

燃料消費量

[ℓ/ha]

投入エネルギ

[MJ/TDW]

ネピアグラス 3.5 78 15.9 0.63 81 32.4 24.4 エリアンサス 3.9 74 16.3 0.81 83 33.5 19.2

備考:試験地 JIRCAS(沖縄県石垣市)

熱帯を除く各気候帯では、収穫後に一定期間貯蔵し、原料バイオマスを安定的に周年供給する必要が ある。原料バイオマスの貯蔵によるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの性状変化について調査し、

その結果をもとに貯蔵モデルを検討した。

表Ⅲ-2-1-3-(1)-5 貯蔵条件による成分の回収状況

気候帯 植物種 貯蔵条件 貯蔵後の成分の回収状況

セルロース ヘミセルロース リグニン

冷帯 ススキ 立毛(乾燥) 嫌気 ○ ○ ◎

エゾノキヌヤナギ 丸太 屋外 ○ ○ △

温帯 スイッチグラス 青刈り(高水分) 好気 × × ◎

青刈り(高水分) 嫌気 ○ △ ○

エリアンサス 青刈り(高水分) 嫌気 ○ △ ○

暖温帯 ネピアグラス 青刈り(高水分) 嫌気 ○ △ ○

好気条件での貯蔵ではセルロース、ヘミセルロースの性状変化が大きく回収が困難になった。貯蔵す るためには、嫌気条件による貯蔵方法が必要と判断できた。

嫌気条件の貯蔵方法には、ロールベール、ラップサイロ、バンカーサイロなどの方法があり、一カ所 に貯蔵する原料バイオマスの量に応じて適した方法を選択すべきことがわかった。。

4)各気候帯におけるコスト

1)~3)までの、栽培・収穫・貯蔵試験の結果に基づき得られた、各気候帯における栽培モデルとコス トの試算例を表 Ⅲ-2-1-3-(1)-6 に示した。

試算を行ったのは栽培・収穫・貯蔵コストで、運搬・乾燥コストは含まれていない。冷帯、温帯、暖 温帯は原料バイオマスを周年栽培できないため貯蔵が必要になるが、周年栽培できる熱帯は貯蔵コスト を含んでいない。

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