(1) 外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れ制度と受入れ状況 ア 受入れ制度の概要
外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについては、現在、以下の とおり、経済連携協定(以下「EPA」という。)に基づき、インドネ シア及びフィリピンとの間で実施しているが、この受入れについて、政 府は、看護・介護分野の労働力不足への対応として行うものではなく、
相手国からの強い要望に基づく経済活動の連携の強化の観点から実施す るものであるとしている。
(ア) EPA
a 日インドネシア経済連携協定
インドネシア人候補者の受入れについては、「日インドネシア経済 連携協定」(平成 20 年7月発効。以下「日インドネシアEPA」と いう。)の附属書 10「(第7章関係)自然人の移動に関する特定の約 束」に基づき、平成20年度から実施している。
b 日フィリピン経済連携協定
フィリピン人候補者の受入れについては、「日フィリピン経済連携 協定」(平成 20 年 12 月 11 日発効。以下「日フィリピンEPA」と いう。)の附属書8「(第9章関係)自然人の移動に関する特定の約 束」に基づき、平成21年度から実施している。
(イ) 厚生労働省の告示及び通知
日インドネシアEPA及び日フィリピンEPAを受け、厚生労働省 は、看護及び介護分野における円滑な受入れを図ることを目的として、
受入れの仕組み及びその運営における基本的事項を明らかにするため、
「経済上の連携に関する日本国とインドネシア共和国との協定に基づ く看護及び介護分野におけるインドネシア人看護師等の受入れの実施 に関する指針」(平成 20 年厚生労働省告示第 312 号。以下「インドネ シア人候補者受入れ指針」という。)及び「経済上の連携に関する日
本国とフィリピン共和国との協定に基づく看護及び介護分野における フィリピン人看護師等の受入れの実施に関する指針」(平成 20 年厚生 労働省告示第 509 号。以下「フィリピン人候補者受入れ指針」という。
また、インドネシア人候補者受入れ指針と合わせて、「受入れ指針」
という。)を定めている。
受入れ指針においては、それぞれ、候補者や受入れ機関の責務、資 格取得前の受入れ機関での就労、受入れ施設の要件、資格取得後の就 労、受入れ調整機関によるあっせん、監督指導等、円滑な受入れを実 施するための措置について規定されており、具体的には、次のとおり である。
a 受入れの目的
受入れの目的は、「「経済上の連携に関する日本国とインドネシア 共和国との間の協定に基づく看護及び介護分野におけるインドネシ ア人看護師等の受入れの実施に関する指針」について」(平成 20 年 5月 19 日付け医政発第 0519001 号・職発第 0519001 号・社援発第 0519001 号・老発第 0519004 号都道府県知事、政令市・中核市長、
地方厚生(支)局長及び都道府県労働局長宛て厚生労働省医政局長、
職業安定局長、社会・援護局長及び老健局長通知)及び「「経済上の 連携に関する日本国とフィリピン共和国との間の協定に基づく看護 及び介護分野におけるフィリピン人看護師等の受入れの実施に関す る指針」等について」(平成 20 年 11 月6日付け医政発第 1106012 号・職発第 1106003 号・社援発第 1106004 号・老発第 1106007 号都 道府県知事、政令市・中核市長、地方厚生(支)局長及び都道府県 労働局長宛て厚生労働省医政局長、職業安定局長、社会・援護局長 及び老健局長通知)(以下、両通知を合わせて、「指針について」と いう。)によれば、インドネシア人及びフィリピン人の看護師・介護 福祉士の候補者に対して、EPAで定められた期間内に国家資格を 取得させ、引き続き我が国に滞在できるようにさせることとなって いる。
インドネシア人候補者の受入れにおいては、候補者の在留資格が
「特定活動」(注)とされ、在留期間は、看護師・介護福祉士の国家 資格を取得することを目的としてEPAで認められる滞在の期間と され、看護は3年間、介護は4年間の就労・研修が認められている。
フィリピン人候補者の受入れにおいては、インドネシアの場合と異 なり、介護福祉士候補者の受入れが就労コースと就学コースとに分 かれている。介護福祉士の就学コースを除く、看護師候補者及び介 護福祉士候補者(就労コース)の受入れの目的、在留資格、活動内 容、在留期間及び受入れ調整機関については、インドネシア人候補 者の場合と同様である。
(注) 他の在留資格に該当しない活動について、法務大臣が個々の外国人について特に活動を指 定する在留資格をいう。
b 受入れ調整機関の役割・責務・事業
EPAに基づく候補者の受入れにおいては、双方の政府の合意に より、円滑かつ適正に実施するため、多数の医療・福祉関係団体と の連携が適切に図られるよう、政府が監督する福祉・医療関係の一 元的な受入れ組織により、これを実施することとされている。
日本国の受入れ調整機関は、公益社団法人国際厚生事業団(以下
「JICWELS」という。)となっており、相手国の送出し調整機 関は、インドネシアにおいてはインドネシア海外労働者派遣・保護 庁(以下「BNP2TKI」という。)、フィリピンでは、看護師・
介護福祉士(就労コース)においては海外雇用庁(以下「POEA」
という。)、介護福祉士(就学コース)においては高等教育委員会
(CHED)となっている。
受入れ調整機関が行う事業については、受入れ指針において定め られており、主な事業は、次のとおりである。
① 受入れ機関の募集及び受入れの仕組みの説明に係る周知広報、
あっせん等
② 現地で行われる説明会への職員の派遣等
③ 日本語研修実施機関との連携
④ 受入れ機関からの定期報告及び随時報告の受理並びに厚生労働 省大臣への報告の提出
⑤ 受入れ施設に対する巡回訪問
⑥ 候補者等からの相談等に対する対応
⑦ 候補者等の就労前又は就学前の受入れ施設に対する研修の実施 及び雇用管理等に関する説明会の実施
⑧ 受入れ機関に対する助言
⑨ 都道府県労働局、地方入国管理局等関係行政機関との連携
c 候補者の責務
候補者の責務については、受入れ指針において、受入れ機関の指 導に従い、日本国の法律に基づく看護師及び介護福祉士の資格の取 得に必要な知識及び技術の修得に精励するとともに、当該資格取得 後は両国の保健医療及び福祉の発展に貢献するよう、努めることと されている。
d 受入れ機関の役割・責務
受入れ機関とは、国内にある医療法人、社会福祉法人等であり、
候補者がその法人の傘下の施設・病院で就労・研修を行うことにつ いて候補者等と雇用契約を結んだ公私の機関をいう。また、フィリ ピンの就学コースに関しては、傘下の介護福祉士養成施設に入学す る許可を与えた法人等の公私の機関をいう。
受入れ機関の責務については、受入れ指針において、看護師及び 介護福祉士の国家資格取得に必要な知識及び技能の習得が図られる よう、受入れ体制の整備に取り組むとともに、専門的人材として、
候補者が地域の保健医療及び福祉の現場において専門的能力を発揮 し、活躍する環境づくりに努め、更に、労働関係法令等の遵守を通 じ、適正な労働条件の確保を図ることとされている。
e 受入れ施設における研修
受入れ施設における研修の要件については、受入れ指針において、
それぞれ次表のとおりとされている。
表 受入れ施設における研修の要件
病院における研修 介護施設における研修
① 研修内容は、国家試験の受験に配慮した適切なものとし、これを実施するための研 修計画が作成されていること。
② 研修を統括する研修責任者並びに専門的な知識及び技術に関する学習の支援、日本 語学習の支援、生活支援等を行う研修支援者が配置され、研修計画を実施するために 必要な体制が整備されていること。
③ 研修責任者は、原則として看護部門の ③ 研修責任者は、原則として、五年以上 教育責任者とし、研修支援者は、原則と 介護業務に従事した経験があって介護福 して三年以上の業務経験のある看護師と 祉士の資格を有する者とすること。
すること。
④ 日本語の継続的な学習、職場への適応促進及び日本の生活習慣習得の機会を設ける こと。
⑤ 研修が行われる病床は、医療保険が適 用されるものに限ること。
(注)厚生労働省公表資料に基づき、当省が作成した。
イ 受入れ制度開始後の関連施策に関する改正等 (ア) 候補者に対する訪日前日本語研修の実施
平成 22 年度に外務省による委託事業として、また、平成 23 年度か ら独立行政法人国際交流基金運営費交付金事業として、EPAに基づ く訪日後6か月の日本語研修の前に現地での日本語研修を実施してい る。本研修は、訪日後の6か月の日本語研修の効果が最大限に発揮さ れるよう、その準備段階として行う研修と位置付けられている。