(4.33)
(4.34)
となるからである。
§2.ラ」−マン・モデル(その2)
つぎに.,評価基準がかわれば,それに応じて最適解もまた変更を余儀なくさ れることを明らかに.しておこう。そのために.,前節で用いた目的関数(4.12)
とはやや異なつた,新しい目的関数をヲ−マン・モデルに導入し,その場合に 得られる最適解の性質を,以下で吟味することにしよう。1呵
いま,計画期間の全体にわたって,1人当たり消費量を最大にすることを考 える。すなわち,2地域全体の消費水準をC,人口をPとすれば,
C=(1−ぶ1)∂1瓜+(1−52)み2戯 (4.35)
となり,1印したがって,計画全体について1人当たり消費量を最大紅すると いうわれわれの目的関数は,つぎのように示される。
γC
df=.†:÷{(1−51)∂1瓜+(1・−ぶ2)鮎麒か離
(4・36).ノ o P
さらに,人口Pの成長率を形とし,188)また将来時点での消費水準Cの現 186)本節で,われわれが用いる目的関数は,イントリリグイタ一によって−最初軋導入さ
れたものである。〔g〕∂,2,参照。なお,最終時点で「切換え」が生ずるという彼 の結論は,ラ−マンの当初の帰結と直ちになじむものではなく,この点を究明したの が,前節でとりあげた高山氏による理論分析である。〔∬〕∂,3,参照。
187)本萱,第1節,(4.2),およぴ(4.11),参照。
188)すなわち,初期時点での人口をP(0)=Poとすれば,時刻f紅おける人口タ(りは,
Poβ先 として表わされる。
ヱ975 香川大学経済学部 研究年報15
一2ヱ6−
在割引率をβとすれば,さきの目的関数(4.36)ほ,つぎのよう紅変形され
る。†;去〆β柚 {(1−づ1)み瓜+(1−52)脚 (4・37)
ここで,簡単化のため,
紺=β+〝:>0
とおき,
P≧0
(4.38)
(4.39)
を仮定しよう。
このとき,新しい目的関数(4.37)を最大にするラ−マン・モデルは,つぎ のように定式化できる。189)
ラーマン・モデル(その2)
つぎの目的関数
.†:β−W {(1−づ1)繍+(卜ぶ2)∂動d才
(4.40)を,以下の制約に従って帝大紅する配分パラメタ−β(≠),(0≦才≦r)を求 めよ。
(4.41)
(4.42)
(4.43)
(4.44)
瓜(才)=β(f)(gl瓜(f)+g2戯(才)〉
戯(f)=(1−β(才))〈gl&(f)+g2彪(ヂ))
J私(0)=濫0(>0),よ=1,2 0≦β(f)≦1
そこで,前と同様に,入0=1とおき,(3.123)にんたがって,ハミルトニアン 189)Poが所与であるこ.とにより,(4.37)を最大にすることは,(4.40)を最大にするこ
とと同じ結果をもたらす。なお,ここでの制約条件(4.41)〜(4.幽)は,前節での ラーーマン・モデル(その1)の制約条件(4.13)〜(4.16)と全く同じものである。
−2J7−
最適制御理論に.ついて 関数を構成すれば,つぎのようになる。
2
月■=∑九名./−i
i=0
=β−W ((1−51)み1&+・(1−ぶ2)∂2彪)十九1&+入2戯
=β・−耽り(∂1瓜・十み2脇)+(β(入1一入2)+入2−β ̄卿り(gl瓜+g2戯)
(4.45)
つぎiこ,
入i=か,g=1,2 (4.46)
とおき,こ.れを(4.45)に代入すれば,次式を得る。
ガ=β一礼 (∂1&+∂2戯)+(β(♪1−一夕2)+♪2−β ̄ぴり(gl瓜+g2戯)
(4.47)
ここで,新しく導入された補助変数れ(査−=1,2)は・,〔定理3〕の条件(a),
(ii)により,つぎの随伴方程式をみたさなければならない0
∂ガ 動=−一石亮一=−β−∽亡∂£−(β(か−♪2)+♪2−β ̄卿りgせ,g=1・2
(4.亜)
さらに.,また〔定理3〕の条件(d)に・対応する,この補助変数れ(古=1,2)
の終端条件は,
(4.49)
動(T)=0,よ−=1,2 となる。190)
したがって,最適条件は,〔定理3〕の条件(b)により,つぎのように示さ
れる。Maxガ=β ̄W£(み1&+∂2彪)
β∈(0,1)
+〈β(♪1一座)+♪2−β ̄Wり(gl瓜+g2戯) (4.50)
190)(4..48)と(4、.49)との関係紅より,β(りが最適値をとる場合には,♪1け)およ び♪2(f)ほ,与えられた区間0≦f≦rに対して,つねに正であるこ・とが示される。
J975 香川大学経済学部 研究年報15
−−2ヱβ−
こ.れより,われわれほ,つぎの帰結を得る。191)
ただし,♪1>♪2の場合 ただし,♪1<♪2の場合 1〕;ただし,か=β2の場合
β=iき。,
(4.51)前と同様に,この最適条件(4.51)を手がかりとして,当該問題の最適解に 対する理論分析を,つぎに与えておくことにしよう。補助変数れ(査=1,2)に 関する方程式(4.48)とその終端条件(4.49)とを合わせ用いるこ.とに・より,
われわれは,つぎの方程式(4.52)を導くことができる。192)
拍)一抑)=旦忘艶抑)ト£(β−W −β一叩り(ぶ2−∫1)
(4.52)
さらに,(4.5)を用いて,これを変形すれば,
り(錮1)
抑)=告抑)+窓(β−耽り−β−W となる。193)
そこで,前との比較を容易に.するぺく,つぎの仮定 gl>g2
(4.53)
(4.54)
を導入しよう。194)
1.ぶ1<ぶ2の場合
算1地域の平均貯蓄性向ざ1が,第2地域のそれ52よりも低い場合紅は,
191)ノ、ミルトニアン関数(4.47)が,動,♪2紅関して線形であることに注意せよ。な
お,得られた帰結(4小51)は,さきの(4.27)と同じ条件を与えることになってい る。
192)この式の導出に.関して,高山氏は誤りを犯している。〔g〕∂,3,p‖335の(17),
参照。
193)いうまでもなく,f≦Tより,β ̄W£≧β ̄抄rとなっている。
194)(4.29),および脚注177),参照。
最適制御理論について −2ユタ−
(4.52)によって,
♪1(け>♪2(才), 才∈〔0∴丁〕 (4.55)
となっている。したがって,この場合に.は,最適性の条件(4.51)によって,
任意の時刻≠∈〔0,T〕におけるβ(f)は,つねに1であることが判明する。
しかしながら,この場合の価格径路は,図42紅示されるように・,〔定理3〕の条 件(d)紅対応する終端条件(4.49)をみたさないことがわかる。195)・そ・れゆえ,
gl>g2とざ1くぶ2のもとで最適解が存在すると仮定した,その仮定自体が誤り であることになる。196)
図42u 終端条件をみたさない価格径路(その1)
2.51>ぶ2の場合
つぎに,第1地域の平均貯蓄性向51が,算2地域の・それぶ2よりも高い 場合について考えてみよう。この場合の価格径路は.,(4.53)より,つぎの図 195)(4.49),および脚注190),参周。
196)〔定理3.〕は,最適トラジェクり−の存在を保証するものではないこ・とに注意せ よ。
ー22〃− 香川大学経済学部 研究年報15 J夕75 43のように示される。なぜなら,この価格径路を含む直線の勾配は,(4.54)の 仮定に・よって1よりも大きく,また縦軸上の切片ほ,ぶ1>ぶ2の仮定によって負
となるからである。
図43.終端条件をみたさない価格径路(その2)
しかしながら,この場合紅も,〔定理3〕の条件(d)紅対応する終端条件
(4.49)がみたされていないことが,図43に.よって明らかとなる。それゆえ,
gl>g2と51>ぶ2のもとで,最適解があるものとして分析した,その仮定自体 が誤りであることに.なる。
したがって,(4.54)の仮定のもとで,残されているのは,策1地域と算2 地域の平均貯蓄性向がともに.等しい場合(すなわち,51=52)にかぎられる。
3.ぶ1=ぶ2の場合
この場合にほ,(4.54)によって−,第1地域の産出資本比率∂1は,つね紅 算2地域のそれ∂2よりも大きくなっているはずである。そこで,(4.53)と上 記の仮定をふまえて,この場合の価格径路を図示すれば,つぎの図44のよう紅 示される。
最適制触感論紅つV、て −22ユー
図44け 終端条件p豆(T)=0,(i=1,2)をみたす価格径路
したがって,この場合ほ,凝滞穿件(g.く!)をみたしており,最適政策は
(4.51)によって−,つねにβ(才)を1とするものとなる。すなわち,当該2地域 より生ずる総貯蓄をつねに.第1地域のみに投資配分すれば,計画期間全体にわ たっての1人当たり消費亀を最大にするという緒論を得る。197)
以上に.おいて,われわれは,当初のラ−マン・モデルをもとに.して,その目 的関数のみに変更を加えた場合払おける,最適解の性質を吟味してきた。そこ で得られた理論的帰結は.,当該2地域での平均貯蓄性向が等しい場合紅かぎ
り,産出資本比率の相対的紅大きい地域に全額投資をすべきであるとするもの であった。したがって,(4.40)を目的関数とするラーマン・モデルにあって は,つねに.第1地域に.のみ全額投資をすべしという命題のみが導かれること に・なり,これほ,前節で検討した(4.12)を目的関数とするラ−マン・モデル の場合に・生ずる 切換え 現象の可能性を否定する結果となっている。19$)
197)将来時点での消費は,pで割引かれているこ.とに注意せよ。
198)前節で明らかにしたように,いわゆる砧切換え の可能性が生ずるのは,ぶ1>∫2と
∂1<∂2が同時に成立する(したがって,ざ1/∂1>52/∂2が成立する)場合紅かぎられ る。
香川大学経済学部 研究年報15 Jタ75
−222−
もとより,叙上の理論的帰結ほ,大胆紅単純化された仮定のもとで導出され たものである。たとえば,ラーマン・モデルに.関するいずれの定式化に・あって も,資本ストック凡のみが唯一・の稀少資源であると考えられており,しかも その生産性を表わす地域別産出資本比率れは,時間を通じて不変であると想 定されている。
しかし,一層重要な問題として,このモデルの現実妥当性に関するつぎの2 点を,あらためて問いただして−みる必要があるであろう。まず,その算1の点 は,産出資本比率∂乞が不変であるとするわれわれの仮定が,ほたして−許され るかどうかという設問である。なぜなら,収穫逓減の法則が作用する状況下で は,資本蓄蔵の進行とともに・,産出資本比率の値が通常低下するからである。
っぎに.,その算2の点は,特定の1地域のみに全額投資配分すべしとするわれ われの最適政策が,はたしていかなる意味を含んでいるかという設問である。
このうち,第1の点についてほ,つぎのようなコメントが可能である。すな わち,産出資本比率を不変に保つことができるはど十・分に利用可能な労働力が 存在する経済を考えれば,モデルの現実妥当性はいささかも失なわれないとす
る主張である。しかし,この主張の成立根拠として,労働力の供給が資本と同 じ比率で増加しなければならないような経済を想定しており,したがって完全 雇用経済の場合にほ,むしろ不可能に・近い。さらに,また,労働力の供給にな んらの制約もないような経済を想定したとしても,総雇用労働力を決定し,し かも地域別産出資本比率が不変に保たれるようにそれを各地域に.配分するよう なメカニズムを頭に描くことは,決して容易なことでは.ない。
つぎに,第2の点を補足すれば,つぎのようになる。すなわら,いま,算1 地域の所得は増加傾向にあるが,算2地域の所得は沈滞傾向にある場合には,
当然,第2地域から第1地域への労働力の移動が行なわれることになるであろ う。しかしながら,この労働力の移動を阻止するメカニズムが,はたして存在 するのか否か,全く不明のままである。また,労働力の地域間移動が生じたと
しても,それが各地域ごとの産出資本比率ならび紅平均貯蓄性向に対してどの ような効果を及ばすか紅ついてほ,なんら明らかにされて1、ないのである。
ここに,ラ・−マン・モデルの改良が強く望まれる所以がある。次節では,そ の方向に沿った1つの例示を与えることに.しよう。