ダイバータ模擬実験装置では,定常高密度プラズマの照 射によるプラズマ対向材料の照射損傷研究がこれまで行わ れ,数多くの研究成果があげられてきた.近年プラズマ対 向材料として,高融点金属(特にタングステン)が,高い スパッタリング閾値エネルギーや低い水素同位体吸蔵特性 により注目されている.これまでスパッタリング閾値エネ ルギー以下のイオン照射では,タングステンの損傷は起こ らないと考えられてきた.しかし,ダイバータ模擬実験装 置での高密度ヘリウムならびに水素プラズマ照射実験にお いて,スパッタリング閾値エネルギー以下のイオン照射に おいてもタングステン表面に円形上の膨らみ(ブリスター)
やタングステン中に気泡(バブル)が発生することが実験 的に明らかになり,大きな話題となっている[39-42].低エ ネルギーのイオンビームを用いた研究でも同様な現象が観 測されており,タングステンでのバブル・ブリスター形成 機構の解明が重要な課題となっている.Fig. 5は,高密度ヘ リウムプラズマに照射されたタングステンの走査型電子顕 微鏡写真を示している.スパッタリング閾値以下のヘリウ ムイオンエネルギー(30 eV)での照射にもかかわらず,タ ングステン中に多くのバブルが形成され,それに伴いタン グステン表面には多くの穴が開いていることがわかる.こ のバブル・ブリスター形成はタングステン表面温度に大き く依存しており,水素プラズマ照射では 950 K 以下の温度 でブリスターが形成され,ヘリウムプラズマ照射では1,400 K 以上の温度でバブル形成が顕著になることが報告され ている.現在のトカマク装置への高 Z 材料導入実験(第7 章を参照)の実験条件では,上記のような顕著なバブル・
ブリスター形成は観測されていない.しかし長時間核燃焼 プラズマでは,周辺のヘリウム密度の増大や対向材料表面 温度の上昇により,特にヘリウムバブルの発生が懸念され る.
Fig. 4 Evolution of the ion saturation current at P2 (midstream) and P3 (downstream), normalized to P1 (upstream), as a function of neutral pressure for (a) He, (b) H2, (c) CH4
and (d) C2H6puffing series. The values ofp1/edenote the e-folding pressures in mTorr. Note that the pressure scale of (c) and (d) is expanded compared with that of (a) and (b).
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また,核融合装置中での微粒子発生が,不純物発生や安 全上の問題(トリチウム吸蔵など)の観点から重要視され てきている.しかし核融合装置中での微粒子の発生機構は 明らかではなく,現在ダイバータ模擬実験装置などを用い た炭素系微粒子形成に関する実験が行われている.
6. 5 おわりに
ダイバータ模擬実験装置での最近の研究成果の概要を紹 介した.今後,ITER 等の次期核融合装置で想定される長 時間放電下での高熱流・高粒子束プラズマと対向壁相互作 用研究が重要であると考えられる.特に長時間放電は,短 時間放電の積算では必ずしも模擬しえない場合がある.例 えば先に述べたダスト発生については,プロセスプラズマ 中では放電のパルス化により同じ放電積算時間でも定常プ ラズマ中に比べてダストの発生が著しく抑制されることが 知られている.このような議論は,まだ核融合周辺プラズ マではすくないようである.また,ELM やディスラプショ ン発生にともなうパルス的プラズマ熱流の対向材への流入 過程も重要である.特に6.4節で述べたブリスターやバブ ルが発生した材料では,局所的に熱伝導が著しく悪化して いる可能性があり,パルス的プラズマ熱流により局所的に 対向材表面温度が上昇し,ホットスポットの形成や材料の 溶融が考えられる.また,非接触プラズマ形成やプラズマ
冷却に関連して,輻射輸送を考慮した放射損失過程や再結 合過程などに関連した原子・分子過程に関する研究も重要 である.
ダイバータ模擬実験装置を用いた研究を発展させるため に,現在名古屋大学では高熱流トロイダルダイバータ模擬 試験装置の開発が行われている(Fig. 6).この装置は,トロ イダル磁場と垂直磁場の組み合わせにより螺旋状の長い磁 力線接続を実現することができる.今後,長い磁力線下で の沿磁力線方向のプラズマ輸送や非接触プラズマの発生,
トロイダル効果による Blob 的なプラズマ輸送現象の解明,
さらに磁力線が浅い角度で壁へ流入する場合のプラズマ−
対向壁相互作用の研究などをおこなう予定である.
ダイバータ模擬研究では,核融合周辺プラズマ研究の重 要課題を如何に切り出して,研究テーマとして設定するか が重要である.課題の適切な設定により,多くのプラズマ 生成装置はダイバータ模擬実験装置としての研究を展開す ることが可能である.このためには大型核融合装置,シ ミュレーション,原子・分子過程などの関連研究者間の連 携と議論が不可欠である.このような活動が大学における 核融合研究を行う上で重要であることを指摘し,本稿の結 びとしたい.
謝辞
本稿をまとめるにあたり,清水勝宏博士,滝塚知典博士,
門信一郎博士,高村秀一博士には貴重なコメントをいただ きました.また,西島大輔博士の博士論文を参考にさせて いただきました[43].ここに感謝いたします.
参 考 文 献
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Fig. 6 Troidal Divertor Plasma Simulator.
Fig. 5 SEM Photograph of tungsten exposed by helium plasma;
(a) surface, (b) cross section.
215
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Mater.313-316, 97 (2003).
[42]K. Tokunaga, R.P. Doerner, R. Seraydarianet al.,J. Nucl.
Mater.313-316, 92 (2003).
[43]西島大輔:博士論文(名古屋大学,2002年).
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はじめに
1970年代のトカマク装置 PLT の実験において,炉心プラ ズマ中心に金属壁材料が流入して蓄積し,電子温度が凹型 の分布となるという実験結果が報告された[1].その一方 で,このような金属不純物の蓄積は,高密度放電やエッジ に強いガスパフをした条件下では避けられるという結果も 同時に報告されていた.しかし,これ以降炉心プラズマの パラメータを改善するために,プラズマ中に混入しても放 射損失の小さい低 Z 材(炭素,ボロン,ベリリウム)をプ ラズマ対向壁(コーティング材も含む)に使用することが 実験の主流となった.特に,炭素材は耐熱衝撃特性に非常 に優れているため,トカマク装置で高熱負荷を受けるリミ タ板やダイバータ板に使用され,さらに JT-60U,JET,お よび TFTR などの大型トカマクでは,第一壁すべてに炭素 板が使用された.また,ボロンやベリリウムは主にコー ティング材として使用され,酸素不純物を吸着するゲッ ター材として有用だったため,炉心プラズマの特性改善に 大きな貢献をした.
しかしながら,これらの低 Z 材は,プラズマイオンが衝 突した際の物理スパッタリング率が大きいことにより,発 電実証炉における使用が疑問視されている.特に,炭素材 は物理スパッタリングに加え,化学スパッタリング,照射 促進昇華など水素同位体イオン照射下において特有の損耗 過程を有しているため損耗が大変に大きく,それに加え て,中性子照射による材料の劣化(熱伝導率の低下など)も 大きい.また,近年,いったん壁から放出された炭素原子 の再堆積層に,多くの水素同位体が吸蔵される可能性があ
ることが指摘された.このように炭素再堆積層中のトリチ ウム吸蔵量低減の観点からも,炭素材の使用には懸念があ る.したがって,発電実証炉では損耗が少なくトリチウム 吸蔵量の少ない高 Z 金属材料(タングステン等)をプラズ マ対向材料として使用することが必要と考えられている.
しかしながら,1980年代はほとんどの装置で低 Z 材がプラ ズマ対向壁に用いられ,高 Z 材については,その研究必要 性は理解されていても,プラズマに与える影響を懸念して 一部の装置でしか使われなかった.
1990年代に入り,高 Z プラズマ対向壁材料のプラズマに与 える影響や,損耗した高 Z 原子のプラズマ中での輸送につ いて,トカマク実機で検証することの必要性が強く指摘さ れた[2].それを受けて,TEXTOR トカマクで高 Z 材のテ ストリミタ実験が1992年に始まり,続いて ASDEX-U でも タングステンをプラズマ対向材に使う実験が始まった.ま た同時に,以前から高 Z 材料をプラズマ対向材に使用して いるトカマク装置(Alcator-C 等)についても,高 Z プラズ マ対向壁という視点から注目を集めるようになった.これ らの実験結果から,高 Z プラズマ対向壁を使用しても,プ ラズマ中心に高 Z イオンが蓄積せず,高性能炉心プラズマ を安定に保持できる可能性があることがわかった.その結 果,ITER でも一部ではあるが(ダイバータの垂直ターゲッ トやドーム),高Z材であるタングステンがプラズマ対向壁 に採用された.
本章では,これらの高 Z 第一壁(テストリミタを含む)下 でのトカマク実験の最近のトピックスと,JT-60U の炭素 ダイバータ板における炭素の輸送の問題を取り上げ,プラ