3.1 量的面の課題
現在の競争的研究資金の総額は約
3 , 500
億円で、今後 も増加していく傾向にある。しかし、政府の研究資金 総額に占める競争的研究資金のシェアは欧米主要国と 比較するといまだ相対的に小さい。即ち、全政府研究 開発費に占める競争的研究資金の比率は、欧米では30
−40
%程度であるが、日本においては10
%未満である。表
13
科学研究費補助金配分状況(2001
年度)研 究 種 目 科学研究費 特定領域研究 基盤研究(S)
基盤研究(A)
基盤研究(B)
基盤研究(C)
萌芽研究 若手研究(A)
若手研究(B)
学術創成研究費 合 計
資金配分額
(単位:千円)
66,222,500 21,221,100 1,718,700 7,441,500 17,905,200 11,344,600 1,411,200
−5,180,200 1,732,500 67,955,000
研究計画申請・採択状況
日本学術振興会(JSPS)『科学研究費補助金』(
2003
年)より作成 申請件数83,223 7,305 2,091 2,666 16,385 30,354 9,145
−15,277 51 83,274
採択件数
17,200
2,490 61 450 2,726 6,229 1,074
−4,170 24 17,224
採択率
20.7 34.1 2.9 16.9 16.6 20.5 11.7
―27.3 47.1 20.7
(単位:千円)
表
14
科学研究費補助金配分状況(2002
年度)研 究 種 目 科学研究費 特定領域研究 基盤研究(S)
基盤研究(A)
基盤研究(B)
基盤研究(C)
萌芽研究 若手研究(A)
若手研究(B)
学術創成研究費 合 計
資金配分額(単位:千円) 研究計画申請・採択状況
日本学術振興会(JSPS)『科学研究費補助金』(
2003
年)より作成 申請件数77,359 7,448 595 2,544 11,416 26,340 13,296 1,999 13,721 98 77,457
採択件数
17,629
2,460 74 604 2,718 5,662 1,750 206 4,155 21 17,650
採択率
22.8 33.0 12.4 23.7 23.8 21.5 13.2 10.3 30.3 21.4 22.8
(単位:千円)
73,704,000 23,132,600 1,995,700 9,354,300 17,125,700 10,097,700 3,243,600 1,899,900 6,854,500 1,741,800 75,445,800
(間接経費:
3,974,970
)(間接経費:
598,710
)(間接経費:
2,806,290
)(間接経費:
569,970
)(間接経費:
522,540
)(間接経費:
4,497,510
)例えば、表15に示されるように、アメリカの連邦政 府の研究開発経費総額約
10
兆2000
億円中の競争的研究 資金総額は3兆6000億円で、政府研究開発経費総額中 のシェアは約35
%である。一方、日本の政府の研究開 発経費総額約3兆5000
億円中の競争的研究資金総額は 約3500億円で、政府研究開発経費総額中のシェアは約10
%である。つまり、アメリカの研究資金総額は日本 の3倍であるが、競争的研究資金総額は10
倍というこ とになる。日本の競争的研究資金制度の中でも特に
30
歳代の若 手研究者向けの制度は量的にも拡大する必要がある。即ち、現在若手研究者向け資金は全体の約6%である。
また、若手研究者向けプログラムの1課題当り研究費 は同一制度内の他のプログラムに比較して少額の場合 が多い。例えば、日本の代表的な若手研究者向けプロ グラムである文部科学省の科学研究費補助金:若手研 究Bは研究期間2−3年で合計
500
万円である。一方、アメリカの代表的な若手研究者向けプログラムである NSF(国立科学財団)のCareer Programが研 究期間約5年で年間
1200
万円・NIH(国立衛生研究 所)のK Awardsが研究期間約5年で年間1000−4000 万円という規模である。3.2 資金使途面の課題
研究費の使途は、備品費、消耗品費、役務費、旅費、
研究支援者を雇用する人件費等であるが、日本の競争 的研究資金には研究者本人の人件費を含めることがで きない。一方、アメリカでは既に競争的研究資金に研 究者本人の人件費を計上できる制度になっている。つ まり、獲得された競争的研究資金は研究機関の適切な 管理の下で研究者本人への給与としても支払われ、競 争的研究資金の獲得が研究者の給与に直接的に反映さ れる制度になっている。
今後は本格的な競争的研究環境を形成するために、
研究開発を実施する研究者本人の当該研究開発活動に 係わる人件費についても、直接経費から充当するよう 検討すべきである。
備品費、消耗品費、役務費、旅費等の実際の研究費 使途における費目間の振替の制約(例えば、振替にお ける費目内容・金額等の制約)を更に弾力化すること も検討する必要がある。又、研究開発課題の実施期間 内においては研究費の年度間繰越を十分に行えること も必要であると考える。
3.3 間接経費の課題
2001年度から直接経費の30%程までの間接経費がい
くつかの競争的研究資金制度の中で実施され始めた。しかし、その絶対額は欧米主要国の間接経費と比較す るといまだ小さい。欧米主要国では研究者への研究費
(直接経費)の
50
−100
%もの間接経費を研究者が所属 する研究機関に措置する場合も多い。例えば、アメリ カでの間接経費は制度・機関毎に異なるが、その比率 は40
−60
%であり、間接経費中に人件費等を含めても よい制度になっている。又間接経費比率の算定に、研 究機関の財務面の実態を反映するシステムが構築され ており、間接経費比率は、配分機関と研究機関の交渉 によって決定される。アメリカの大学等の研究機関に おいては間接経費が経営上の重要な収益源であるた め、競争的研究資金を獲得することができる研究者を 競って雇用する傾向がある。今後は、第Ⅱ期科学技術基本計画で打ち出された方 針である「間接経費比率30%」を徹底し、いずれ全て の競争的研究資金制度が間接経費を措置するようにす べきである。
日本の競争的研究資金の
60
%以上が、いまだ煩雑な 研究資金の管理・責任が研究者個人が担当せざるをえ ない「個人補助制度」の形になっている。即ち、個人 補助制度の場合、補助金の管理責任は補助金獲得者で ある研究者個人(科学研究費補助金の場合は研究者の 所属する研究機関の長である個人)が負うことになる。現在、研究者個人が経理を機関に委任している場合で も、最終責任を負うのは当該補助金を交付された研究 者個人である。基本的に研究機関に所属する研究者が その業務の一環として行う研究業務における研究費に
アメリカ 日 本
競争的研究資金総額 (兆円)
文部科学省『平成15年版 科学技術白書』(2003年)より作成 表
15
アメリカ・日本の競争的研究資金総額・政府研究開発資金総額政府研究開発資金総額 (兆円)
政府研究開発資金総額中の 競争的研究資金総額の割合 3.6
0.35
10.2 3.5
3 5
%1 0
%ついては研究者個人にその管理責任を負わせるべきで はない。今後は研究者の所属する機関が資金配分機関 に対して補助金の交付申請を行い、交付を受け、補助 金を直接責任を持って管理する制度を形成していく必 要がある。研究機関の側も間接経費等を活用して研究 資金の申請・管理に関する事務体制を強化する等の競 争的研究資金の効率的なマネジメント体制の整備を図 るべきであると考える。
3.4 配分主体の課題
配分機関の業務効率を向上させるために、アメリカ の配分機関等で有効に機能しているプログラム・オフ ィサー(PO)、プログラム・ディレクター(PD)
の本格的な導入が検討されている。POとは個々のプ ログラムや研究課題の選定、評価、フォローアップ等 の実務を担当する専門家である。POは評価プロセス の選択、評価段階における評価者の選任、現地調査、
審査会議等の評価プロセスの計画と実行、どのような 課題にどの程度の資金提供を行うかといった計画、実 施されている研究開発課題の進行状況の評価などを担 当する。例えば、アメリカのNSFでは約400名・N IHでは約
1100
名・DARPA(国防省国防先端研究 プロジェクト局)では約140名のPOが配置されている。NSF、NIH、DARPAのPO1人当たりが 扱う年間予算額も、それぞれ約
15 . 6
億円、約17 . 6
億円、約18.6億円と大きい。またドイツのDFG(ドイツ研 究協会)でも約
125
名のPOが配置されている。PD は競争的研究資金制度と運用について統括する上級責 任者である。PO・PDの配置は研究開発プロジェク トの募集・選択・詳細な資金配分計画・進行・中間評 価・最終評価など、競争的研究資金の執行に関するマ ネジメント効率を上げるものとして非常に有効と考え られる。「第Ⅱ期科学技術基本計画」「国の研究開発評価に 関する大綱的指針」において、研究経歴のある責任者 を各配分機関に専任で配置し、競争的研究資金制度の 業務の科学技術面の責任を担う体制を整備するという 方針が出されてきた。今後は各機関におけるPO・P Dの設置を促進する必要がある。又、総合科学技術会 議のイニシアティブにより各配分機関のPDで構成さ れる会議を設置し、各競争的研究資金制度のマネジメ ントシステムの向上を図りつつ、課題の不必要な重複 の排除や制度間の調整等、競争的研究資金全体の有機 的な運用を図る制度の形成も検討すべきである。
現在日本では研究開発以外の政策業務も担当する7 つの省庁が競争的研究資金配分を担当しているが、欧 1
2 3 4 5 6 7 8
プログラムの方針(案)(目的、目標、重点テーマ、新規テーマの設定)の作成 評価者の選任
外部評価(ピアレビュー)に基づき、採択課題候補(案)の作成(優先順位付け、研 究費の査定、研究分担者の必要性、重複の排除)
評価内容や不採択理由の開示。それに対する申請者からの質問、不服申し立てへの対応 採択課題に関する研究計画の改善点の指摘。不採択の申請者への助言
進捗状況や予算執行の状況の把握。必要に応じての現地調査。
研究計画の変更(中止・縮小・拡大を含む)の提言 プログラム全体の運営見直し等の提案
科学技術学術審議会学術分科会『競争的研究資金制度改革について(意見)』(
2003
年)より作成 表16
プログラムオフィサー(PO)の役割1 2 3 4 5 6
競争的研究資金制度におけるマネジメントシステムの向上 プログラムの方針決定・新規プログラムや新規領域設定の決定
各制度内の領域間・分野間・プログラム間等の資金の配分額や配分方式(個人研究と グループ研究等)の決定
プログラムオフィサー間の調整 採択課題の決定
プログラムオフィサーの評価
科学技術学術審議会学術分科会『競争的研究資金制度改革について(意見)』(2003年)より作成 表