- ポイント☝ -
・様々な環境の変化に順応する必要がある。
・感染症に対する十分な注意が必要である。
・体重の増減は、健康状態を知る有用な指標となる。
・この時期の仔馬の取り扱いは、しつけの面でも極 めて重要な意味をもつ。
生後 2~7 日目の仔馬は、出生直後の虚弱な状態を乗り 越え、健康状態が安定する。また、初めての放牧など、環 境の変化に順応する必要がある。さらに、新規環境におけ るウイルスや細菌の暴露に加え、新規刺激によるストレ スに起因する感染症に対し、細心の注意を払わなければ ならない。このため、少なくとも 1 日に 1 回は、体温、心 拍数および呼吸数などを測定する必要がある。可能であ れば、体重の測定が推奨される。この時期における体重の 増減は、健康状態を知るうえで有効な指標となるからで ある。
一方、この時期は不適切な仔馬の取扱いに起因する事 故や外傷が多発する。この時期の取り扱いは、その後の騎 乗を含めた人馬の関係に強い影響を及ぼす。以上のよう に、生後 1 週間は極めて重要な時期であると位置付ける 必要がある。
4.分娩直後の新生子の管理
- ポイント☝ -
・生後 1~2 ヶ月齢までは、母乳のみで成長するた め、母乳の摂取量は成長に大きな影響を及ぼす。
・体重の増減は、母乳の摂取量の有用な指標となる。
○母乳の摂取
生後 2 週間までは、唯一の栄養源である母乳の摂取量 が、仔馬の健康状態に大きな影響を及ぼす。1~2 ヶ月齢ま では、十分量の母乳が産生されていれば、仔馬は母乳のみ によって要求栄養量を満たすことが可能である。
●体重の増減
母乳摂取量の測定は、仔馬を管理するうえで極めて重 要であるが、実際には測定困難である。最も簡便かつ確実 な方法は、毎日の体重測定である。1 日当りの増体量の目 安は、生後 1 週までは 1.75kg、1~2 週は 1.5kg、2~8 週ま では 1.35kg である。増体量は仔馬の健康状態の指標とな るため、日々の継続的な測定が推奨される。
新生子期の体重測定は、母乳の摂取量および健康状態の有用な指標となる。
(クールモアスタッド)
●仔馬の吸乳回数および吸乳後の行動
母乳摂取量をある程度把握する方法としては、仔馬の 増体量の他に、その吸乳回数と吸乳後の行動の観察があ げられる。
生後 2 週齢までの仔馬は、1 時間に 7~8 回吸乳する。仔 馬は乳房に接近して鼻端あるいは頭で乳房を突つくこと
により、乳房を刺激して泌乳を促す。十分量の母乳の摂取 後は、横臥して休息することが多い。一方、十分量の母乳 が産生されていない場合は、繰り返して鼻端あるいは頭 で乳房を突つき、乳房から離れた後も休息しようとしな い。
●乳房の状態
母乳摂取量を把握するもう一つの指標は、母馬の乳房 の状態である。泌乳量が十分な乳房はある程度の張りが あるが、不十分な乳房は皺が寄って十分な張りが認めら れない。
乳房の状態を観察する際は、乳頭の湿潤程度にも注意 する必要がある。搾乳の実施も、泌乳量を把握する方法の 一つである。通常、1 回の搾乳によって 1ℓ以上の採乳が 可能であるが、100ml 程度の採乳量に留まる場合は、仔馬 は十分量の母乳を摂取していないことが推測される。一 方、泌乳量が十分であっても、仔馬が病気などによって食 欲が低下している場合は、乳房が膨張して乳頭が乾燥す る。母乳の摂取量が不十分であると推測された場合は、仔 馬が削痩する前に、人工哺乳を併用する必要がある。
母馬の乳房の状態から、母乳摂取量を推測できる。
(クールモアスタッド)
- ポイント☝ -
・生後数日間は、1 組の親子のみで暖かい時間帯に 1~2 時間、小パドックに放牧する。
・雪上では寝藁を敷き、仔馬の休息場所を確保する。
○生後 1 週間までの放牧
●放牧の開始時期
新生子の出産翌日の放牧は、仔馬の状態を確認してか ら実施する。放牧は、新生子の外部環境への適応を促すた めに重要である。健康な仔馬であれば、出産翌日から小パ ドックでの放牧が可能である。一方、歩行時にふらつき、
母馬を速歩で追いかけることが困難な虚弱子の場合、少 なくとも、生後 24 時間は馬房内での収容が望ましい。虚 弱状態が著しい場合は、放牧の開始までに 2~3 日が必要 である。
生後 4~5 日間は、他の親子と一緒に放牧せず、1 組の親 子のみで実施する。これは、この時期の母馬は神経質に仔 馬を守ろうとするため、母馬のみならず、仔馬も負傷する 可能性が高いからである。生後 2 週間が経過する頃には、2ha 以上の大きな放牧地に、複数組の親子の放牧が可能となる。
健康であれば、出産翌日から小パドックに放牧する。
(クールモアスタッド)
●気候と放牧
放牧の実施に際して、仔馬の健康状態とともに重要な 要素は天候である。新生子は体温の調節機能が未発達で あるため、長時間の寒冷下での放牧によって体温が低下 しやすい。このため、雨、雪あるいは強風時などの放牧は、
見合わせた方がよい。また、放牧地の地面は乾燥している ことが望ましく、雪や泥などで覆われている場合は、寝藁 や乾草を敷いて休息場所を確保する必要がある。さらに、
仔馬用の馬着を着せて体温の低下を防止する。
雪上では寝藁を敷いて、仔馬の休息場所を確保する。
●生後 1 週齢までの放牧時間
仔馬の成長には、睡眠と休息が不可欠であり、馬房内で は 40%以上の時間を横臥して休息に費やしている。この ため、生後 1 週齢までの仔馬は、1 時間程度の放牧が望ま しい。これ以上の時間の放牧では、駐立状態を継続してい ることが多い。特に、天候が優れない場合、仔馬は横臥し ないため、このような放牧は殆ど意味がない。
1~3 月の日高地方の放牧条件は恵まれたものではない ため、生後 3 日目までは暖かい時間帯に 1~2 時間、小パ ドックに放牧する程度で十分である。その後は、状況に応 じて放牧時間を延長する。
●放牧と仔馬の成長
仔馬の成長には適度な運動が重要であるため、この時 期の放牧は疲労とストレスを軽減させるとともに、効果 的な運動を実施できることが理想である。
仔馬の行動は、吸乳、睡眠および自由運動の 3 要素が基 本であり、それぞれが重要な役割を担っている。特に、3 ヶ月齢までの仔馬の成長は、その後の成長に比較して急 激であり、成長ホルモンが豊富に分泌されている。成長ホ ルモンの分泌は母乳からの栄養、良質の睡眠、そして適度 な運動によって亢進するため、適切な放牧環境の整備が 重要である。このため、厳冬期の日高地方では生後 4 日目 以降から 2 週間程度まで、パドック放牧と馬房内休息を 繰り返すことが推奨される。
以下に、厳冬期における放牧例を示す。
①8 時に放牧
早朝の放牧でフレッシュ、ハッピーになる。
②11 時に馬房に収容
疲労した頃に収容して、休息させる。
③14 時に再放牧
再び放牧し、フレッシュな状態で遊ばせる。
④16 時に馬房に収容
4.分娩直後の新生子の管理
仔馬の正常な発育に睡眠は不可欠であり、放牧と馬房内休息を繰り 返すことが推奨される。
仔馬の成長にとって、放牧地での運動は極めて重要である。
特徴である。また、出産直後は異常に気付かないが、起立 困難や起立までに時間を要すること、乳房の探査が困難 であること、あるいは吸乳姿勢を維持できないことによ り、初めて明らかとなる場合がある。
重症例では脳の損傷程度が著しく、突発的な痙攣、横臥 状態での遊泳運動、頭頚の振り回し、突発的に駆け出して 壁に激突するなどの異常行動が観察される。これらの症 状は、生後 3 時間から遅くても 24 時間以内に発現する。
また、発作や痙攣による呼吸困難に起因する犬の遠吠え、
あるいは豚のような鳴き声を発することから、「吠える仔 馬(Barker foals)」といわれる。母馬の認識が困難となり、
馬房内をふらつくことから「さ迷う仔馬(Wanderers)」、あ る い は 歩 行 時 に ふ ら つ く こ と か ら 「の ろ ま の 仔 馬
(Dummy foals)」など、様々な名称で呼ばれている。
●処置方法
この疾患に対する処置は、確実に初乳を給与して馬体 を保温することである。また、発作および痙攣を起こして 馬房内を歩き回る場合は、寝藁を深く敷くとともに、馬房 の壁の周りに梱包された寝藁を置く。さらに、四肢に保温 を兼ねたバンテージを装着することにより、衝突時の受 傷を予防する。重症例に対しては、獣医師によって発作に 対する鎮静処置、脱水を含む循環系の改善、感染症や膀胱 破裂の予防処置が実施される。