• 検索結果がありません。

高保磁力化に及ぼす Tb スパッタ改質処理の影響

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 41-44)

第 3 章 Tb スパッタ改質 Nd-Fe-B 系焼結磁石

3.3 高保磁力化に及ぼす Tb スパッタ改質処理の影響

37

38

が同時に生じて,一部のTbが主相に取り込まれる.その結果,Fig. 3-11(c)に示すように,

Nd2(Fe,Co)14B粒の粒界には滑らかな2 nm程の厚みのアモルファス粒界相が形成されるとと

もに,Nd2(Fe,Co)14B粒の表面部にTbが一部のNdを置換した(Nd,Tb)2(Fe,Co)14B層が形成さ れたものと考えられる.

次に,Tbスパッタ改質処理が保磁力に及ぼす影響について考察する.高保磁力化の要因 として以下の点を提案する(Fig. 3-12).

(1) 未処理磁石の逆磁区の発生サイトを低減させる.

未処理磁石の粒界に存在していたNd粒界析出物と厚みの不均一な粒界相はTbスパ ッタ改質処理によって低減された.Nd は非磁性であるため,Nd 粒界析出物が磁性 を示すことは考えにくい.したがって,磁性を有していなくとも,粒界に存在する 不均質な箇所が逆磁区の発生サイトとなって保磁力低下の原因となるものと考えら れる.Tbスパッタ改質処理はこれらの逆磁区の反転サイトを消失させて,逆磁区の 発生確率を減少させる.

(2) 2 nm程の厚みのアモルファス粒界相でNd2(Fe,Co)14B主相粒を滑らかに覆う構造を形成 させたことによって,Nd2(Fe,Co)14B相粒を磁気的に分断させる.

未処理磁石における不均質な主相粒界から 2 nm 程のアモルファス粒界相が形成さ れた均質な粒界に変化したことは磁気分断の強化を導いたものと考えられる.また,

粒界相の構造が結晶とアモルファスの混合したものから,Tbスパッタ改質処理によ ってアモルファス構造のみに変化したことで,主相粒の周囲を滑らかに取り囲むこ とが容易になったものと推察される.

(3) 粒界相に磁気異方性の大きなTbが含まれることで,粒界相の磁気異方性が高まって主 相粒の磁気的分断を強める.

粒界相におけるTb濃度は0.5 at%と極微量である.R-Fe系アモルファス薄膜の磁気 Fig. 3-12 Schematic illustrations of changes improving coertcivity by Tb-sputtered treatment: (a) the original magnet and (b) the Tb-sputtered magnet.

39

特性を調査したTakahashiら122の報告を参考にすると,Tb含有による粒界相の磁 気異方性の増加分は0.1 %程度と見積もられる.

(4) Nd2(Fe,Co)14B相粒表面に磁気異方性の大きな(Nd,Tb)2(Fe,Co)14B層が形成され,主相粒 表面領域の逆磁区の伝搬を抑制する.

Nd2(Fe,Co)14B相粒表面領域におけるTb濃度はSTEM-EDS分析では検出できないほ ど極微量である.仮に粒界相と同程度のTbが粒界近傍のNd2(Fe,Co)14B相に分布し て(Nd,Tb)2(Fe,Co)14B層を形成したとすると,磁気異方性増加分は5 %程度と計算さ れる.

したがって,Tb スパッタ改質処理では逆磁区の核発生サイトを低減するとともに,

Nd2(Fe,Co)14B主相粒を滑らかな極薄いアモルファス粒界相と薄い(Nd,Tb)2(Fe,Co)14B層とで 2 重に覆う組織を形成することによって主相粒間の磁気的な分断を高めて高保磁力を発現 させるものと結論できる.高保磁力化の要因となった微細組織変化の中でも,(1)逆磁区の 核発生サイトとなるNd 粒界析出物を低減したことと,(2)滑らかな粒界相で Nd2(Fe,Co)14B 主相粒を覆う構造を形成して逆磁区の核発生抑制を強めると共に主相粒の磁気的分断を高 めたことの寄与は大きいものと考えられる.

以上の考察より,焼結磁石では,微細な粒界析出物が逆磁区の反転サイトになり,保磁 力機構はニュークリエーション型が支配的になるものと推察される.しかし,粒界に存在 する逆磁区の発生サイトが低減して粒界近傍の組織が磁気的分断に十分な形態になれば,

粒界相がピンニングサイトとして働き,磁気的分断が強まって,高保磁力が発現するもの と考えられる.一方,Tb スパッタ改質処理前後で粒界相と(Nd,Fe)Ox構造のNd-rich 相の組 成の変化も観察されたが,これらが保磁力に及ぼす影響に関しては次章で検討する.

40

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 41-44)