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リステリア・モノサイトゲネス(以下「LM」という。)に係る規格基準の設 定について、厚生労働省から意見を求められたため、これまでに蓄積されてい る科学的知見を用いて食品健康影響評価を実施した。

LM 感染症には胃腸炎症状等の非侵襲性の感染症と髄膜炎等の侵襲性の感染 症があるが、ヒトへの健康影響に関して、より重篤であり、かつ、確実な診断 が可能である侵襲性の感染症を本評価の対象とした。また、諸外国において発 生した LM 感染症においては、食品を原因とする集団事例が多数報告されてお り、国内外における各種食品の汚染実態、喫食方法による影響等を勘案し、喫 食前に加熱を要しない調理済み食品(RTE 食品;Ready-to-eat foods)を本評 価の対象とした。

本 評 価 は 、JEMRA の リ ス ク 評 価 手 法 ( 用 量 反 応 関 係 を 表 す 指 数 モ デ ル

P1erN )等)に基づき、用量反応関係の係数 r 値を健常者集団及び感受性 集団について、それぞれ 2.37×10-14及び 1.06×10-12として、日本におけるLM 感染症の年間患者数を推定し、その結果得られた推定値と、日本の現状を表し て い る と 考 え ら れ る JANIS の デ ー タ を 解 析 す る こ と に よ り 得 ら れ た 患 者 数

(200 人)との比較を行うこと等により実施した。年間患者数は、RTE 食品の 喫食時の汚染菌数に喫食量を乗じることによって摂取菌数を求めた後に、用量 反応関係を表す指数モデルを用いて発症リスクを算出し、汚染率、感受性集団 の割合等で補正した上で、当該発症リスクに年間総食数を乗じることによって 推計した。その際、汚染されている全ての食品が同一の菌数であると仮定した 単一用量に基づくアプローチ及び喫食時のRTE食品のLM汚染菌数の分布を考 慮した複数用量に基づくアプローチを用いた。喫食量、感受性集団の割合、汚 染率等については、日本のデータを使用した。RTE 食品の喫食量については、

1 食当たり 50g、100g 及び 200gと仮定した。LM 感染症の感受性集団の割合 については、27%とした。RTE 食品の平均 LM汚染率については、日本の汚染 実態調査結果に基づき2.58%とした。RTE食品の喫食時の汚染菌数については、

日本における関連データが不足しているため、JEMRA による評価で用いられ たデータ(日本のデータも含む。)を用いた。

喫食時のRTE食品のLM汚染菌数の分布を考慮した複数用量に基づくアプロ ーチが実態に即していると考えられたため、当該アプローチを採用した。1食当 たりのRTE喫食量を50gと仮定した場合、喫食時のLM汚染菌数が100、 1,000、

10,000 又は 100,000 CFU/g 以下である場合は、各汚染菌数の食品の喫食時の患 者数はそれぞれ 1 人未満、4 人(感受性集団 4 人、健常者集団 1 人未満)、20 人(感受性集団 19人、健常者集団 1 人)99人(感受性集団 94人、健常者集団 5 人)と推定された。同様に RTE 喫食量を 100g と仮定した場合、各汚染菌数 の食品喫食時の患者数は 1人(感受性集団 1人、健常者集団 1 人未満)、8人(感

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受性集団 8 人、健常者集団 1人未満)、41人(感受性集団 39人、健常者集団 2 人)、199人(感受性集団 188 人、健常者集団 11人)と推定された。同様に 200g と仮定した場合、3人(感受性集団 3 人、健常者集団1 人未満)、18人(感受性 集団 17人、健常者集団1 人)、83人(感受性集団 79人、健常者集団 4人)、398 人(感受性集団 376 人、健常者集団22人)と推定された。

この結果から、喫食時のRTE 食品のLM 汚染菌数が 10,000 CFU/g以下であ

れば、JANIS のデータを解析することにより得られた推定患者数(200 人)を

下回り、発症リスクは、特に、健常者集団に限定すれば極めて低いレベルと考 えられた。

しかしながら、日本における LM 感染症推定患者数が 200 人であることを踏 まえると、10,000 CFU/gを超える食品の喫食によって LM感染症を発症してい ることになる。国内流通食品の中での LM 汚染に関する限られた定量的なデー タから推察すると、当該患者は、一部の食品(例えば、LMが増殖可能な食品で あって、冷蔵状態で比較的長い時間保管された食品)中で LM が著しく増殖し て高い菌数に達し、その汚染食品を喫食している可能性が考えられた。

そこで、JEMRAを参考に、非常に高い菌数(今回の試算では 1,000,000 CFU/g を使用)で汚染された食品が存在する割合が患者数にどのように影響するかを 検討した。大部分の RTE 食品の汚染菌数が、上記の推定に用いた喫食時の汚染

菌数 10,000 CFU /gを超えない条件下で、非常に高い菌数で汚染された食品が

含まれている場合に、その割合が 0.0001%までであれば患者数はほとんど増加 しないが(1 食当たりの喫食量を 200g と仮定した場合、0%で 83 人に対し、

0.0001%で 91 人)、0.001%であれば約 2 倍(167 人)に、0.01%であれば約 10倍(933 人)に、0.1%であれば約 100倍(8,593人)に、それぞれ患者数が 増加すると推定された。この推定結果から、汚染菌数が比較的低い場合にあっ ても、非常に高い菌数で汚染された食品が含まれ、その占める割合が増加する ことによって、患者数が著しく増加すると考えられた。また、患者数を減少さ せるためには、4℃以下でも増殖可能であるとの知見を踏まえ、保管期間を設定 すること等のリスク管理により、非常に高い菌数で汚染された食品の発生比率 を抑えることが必要であると考えられた。

なお、本評価を実施する上で得られた知見から、LMは、低温で増殖できる能 力に加え、環境中に広く分布し食品製造環境下で長期間生存する能力を有する ため、製造加工中に RTE食品を汚染し増殖する可能性があることが示唆されて いる。したがって、RTE 食品の製造・加工取扱者は、食品の LM検査のみに依 存することなく、環境由来の LM による製造機器、食品等の汚染及び LM の増 殖の防止に向けて、特に製造環境対策としての一般的衛生管理及びその効果の 検証のための環境モニタリング(製造環境中の LM 検査等)を行うことによっ

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て、RTE 食品のLM汚染率を下げることが可能と考えられた。

また、JEMRA によると、免疫機能が低下している感受性集団は健常者集団

よりも LM感染症リスクが約 200 倍高いと推定されており、また、JANISデー タの解析結果より、65歳以上の高齢者が全患者の 77.6%を占めることが明らか にされた。そのため、このような感受性集団に焦点を絞ったリスク管理措置の 検討及び実施並びにその効果の検証が LM 感染症リスク低減に効果的であると 考えられた。

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