各共同相続人は,相続債権者に対して,債権を6カ月以内に自己に又は遺産裁判所に届け出るよう公 示することができる(BGB 第2061条第1項第1文)300。届出がなくても,債権は消滅せず,共同相続人の責 任が相続分の限度に縮減されるに過ぎない(同第1項第2文)。反対に,債権者が期限内に届出をするか,
遺産分割時に相続人が債権の存在を知っていれば,共同相続人は依然として連帯債務者として責任を負
297 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 454, Rn. 2.
298 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 454, Rn. 3.
299 Jauernig/Stürner, 15. Aufl., München 2014, § 2358 BGB, Rn. 1 ff.; Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O.,
§ 454, Rn. 4.
300 この私的な公示は,連邦官報等に掲載される(同第2項)。州によっては,電子媒体しか用いないところもある。
MünchKomm/Ann, 6. Aufl., München 2014, § 2061 BGB, Rn. 1 ff.
う(BGB 第2058条)301。
c) 土地管轄(FamFG 第454条第2項)及び国際裁判管轄
相続法上の公示催告手続については,原則として,被相続人の最後の住所地の区裁判所が土地管轄を もつ(FamFG 第454条第2項第1文)。管轄原因をもつ裁判所が複数存在する場合には,最初に申立てを受け た裁判所が管轄をもつ(同第2条第1項)。ただし,無管轄の裁判所が行った公示催告手続も有効である(同 第2条第3項)302。同じ管轄ルールは,国際裁判管轄にも妥当すると解される。
各州は,異なる職分管轄を定めることもでき,たとえばバーデン・ビュルテンベルク州では,公証人 事務所が遺産裁判所として指定されている(FamFG 第454条第2項第2文,Bad.-Württ. LFGG 第38条)。ただし,
公示催告手続は,公証人事務所ではなく,公証人事務所の所在地を管轄する区裁判所が行う303。
(4) 船舶債権者に対する公示催告(FamFG 第465条)
a) 総説
FamFG 第465条は,船舶債権者に対する公示催告について定めている。内水運航法(Bin-SchG)第102 条は,船舶債権者の債権の種類を,同第103条第1項は,船舶債権者が船舶及び付属物に対して質権を もつことを定めている。質権は,船舶のあらゆる占有者に対して行使できる(BinSchG 第103条第2項)。ま た,同第110条によれば,船舶が任意に譲渡された場合,譲受人は,不明な船舶債権者を排除するため,
公示催告手続を申し立てることができる304。
b) 船舶債権者の排除のための公示催告手続
申立権者は,船舶の譲受人だけである。申立てには,FamFG 第434条が定める事項のほか,知れている 船舶債権者の名前を記載する(FamFG 第465条第4項)305。ただし,譲渡人に債権者の存在を問い合わせる 義務はない。登記すべき内水船舶については,申立ては,船舶の譲渡の登記後に行う(同第3項)306。譲 渡人も一定範囲で責任を負うため(BinSchG 第113~第114条),公示催告の送達を受ける307。公示催告手続 を経て,届出のない質権は排除されるが,譲受人に知れている債権はこの限りでない308。
c) 土地管轄及び国際裁判管轄
土地管轄は,FamFG 第465条第2項によれば,船舶の復帰港(Heimathafen)又は復帰地(Heimatort)
を管轄する区裁判所がもつ。復帰港又は復帰地とは,そこから当該船舶による航行が開始される地を指 す(BinSchG 第6条)309。同じ法理は,国際裁判管轄にも妥当すると解される。
301 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 454, Rn. 5; MünchKomm/Ann, a.a.O., § 2061 BGB, Rn. 4 ff.
302 裁判所内部では,一般民事部が担当するのか,あるいは遺産部が担当するのか明らかではない。専門性という点では,
遺 産 裁 判 所 の ほ う が 適 し て い る で あ ろ う 。 技 術 的 な 権 限 は , 司 法 補 助 官 が 行 使 す る 。Keidel/ Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 454, Rn. 7 f.
303 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 454, Rn. 9.
304 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 465, Rn. 1.
305 また金額,債権の法的根拠,債権者の召喚可能な住所も示す。
306 登記義務は,SchiffRegO 第10条第2項に基づく。
307 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 465, Rn. 3 f.
308 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 465, Rn. 5.
309 Keidel/Zimmermann, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 465, Rn. 2.
(5) 有価証券の無効宣言のための公示催告(FamFG 第466~第484条)
a) 総説
FamFG 第6編(第466条~第484条)は,有価証券の無効宣言のための公示催告手続について定めており,
有価証券が紛失又は滅失した場合を対象としている310。実体法上の根拠規定は,各々の有価証券を規律 する法律に置かれている311。
b) 対象となる有価証券
FamFG 第466条以下に定める公示催告手続の対象となる有価証券は,次のとおりである。
① 抵当権証券,土地債務証券,定期土地債務証券(BGB 第1162条,第1192条第1項,第1199条):実務で最 も頻繁に無効宣言が申し立てられる有価証券である312。
② 手形(手形法〔WG〕第90条):手形の引受,支払拒絶,満期,消滅時効の如何は問われない。白地手 形も対象となる313。
③ 小切手(小切手法〔ScheckG〕第59条):白地小切手も対象となる。他方,通説によれば,ユーロ小切 手帳及び担保証は対象とならない。支払手続における小切手の紛失には,金融機関が合意で簡易な 手続を用意しており,公示催告手続による権利保護は必要ない314。
④ 無記名債務証券:証券裏面に別異の定めがなければ,無記名債務証券も対象となる(BGB 第799条第
1項第1文)。銀行債務証券,工業債券,公債が挙げられる。債務簿に記載されるだけでなく,有価
証券として発行される投資証券,無記名倉庫証券,富籤券も対象となる。無記名土地担保権証券も 同様である(BGB 第1195条,第1199条)315。
⑤ 特別の資格証券(BGB 第808条第2項):偏面的な無記名証券として,鉄道旅券及び航空券,担保証券,
貯金通帳が挙げられる316。
⑥ 指図証券(HGB 第365条第2項):商事指図証券(HGB 第363条第1項第1文),商事債務証券(同第1項第2 文),船荷証券(同第2項),貨物引換証(同),倉庫証券(同),運送保険証券(同)が挙げられる317。
⑦ 株式及び中間証券(AktG 第72条)318
⑧ 連邦及び帝国国債,国庫証券:国内で発行されるかぎり,原則として無効宣言の対象となる。反 対に,外国国家が発行する証券は,固有の主権行為としての「国家行為」(iure imperii)に基づくた
310 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 1.
311 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 2.
312 一定の場合には,補充的に「抵当権証券,土地債務証券及び定期土地債務証券の失権宣言に関する法律」(Gesetz über die Kraftloserklärung von Hypotheken-, Grundschuld- und Rentenschuldbriefen (HypKrlosErklG) vom 18.4. 1950)
が適用される。州によっては,特別法も制定されている。Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 3.
313 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 4.
314 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 5.
315 それに対して,利札,定期金証券,利益配当証券,無利息無記名債務証券(BGB 第799条第1項第2文)は無効宣言の 対象とならない。無記名証券,無記名引換券も対象外である(BGB 第807条)。Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O.,
§ 466, Rn. 6.
316 貯金通帳には,州法における実体法及び手続法上の特則が多い(民法施行法(EGBGB)第102条第2項)。郵便貯金通帳 は,その紛失が疎明されれば,ドイツ郵便貯金銀行株式会社が預金取引のために再発行する。ただし,郵便貯金銀行は,
預金者に対して,公示催告手続を取るよう求めることもできる。Keidel/Giers, FamFG- Kommentar, a.a.O., § 466, Rn.
7.
317 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 8.
318 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 9.
め,その証券についてドイツで公示催告手続を行うことはできない319。
c) 紛失及び滅失
有価証券を紛失したとは,所持人が占有を失い,もはや手が届かず,強制執行によっても取り戻し得 ない状態を指す320。有価証券の滅失とは,完全な消滅又は少なくともその本質的内容が判明しない程度 の 損 傷 を 指 す 。「 抵 当 権 証 券 , 土 地 債 務 証 券 及 び 定 期 土 地 債 務 証 券 の 無 効 宣 言 に 関 す る 法 律 」
(HypKrlosErklG)第1条及び第13条によれば,証券が紛失も滅失もしていなくても,ドイツ国内で法 的に無効な措置がとられたために,あるいは国外で証券提出命令の執行が不当に拒否されたために,抵 当権者がもはや証券の占有を回復できない場合には,無効宣言の対象となる321。
d) 土地管轄 aa) 総説
FamFG 第466条は,有価証券の無効宣言のための公示催告及び除権決定の土地管轄について,次のよう に規定している。
「FamFG 第466条〔土地管轄〕
(1) 公示催告手続については,有価証券において指定された義務履行地を管轄する裁判所が土地 管轄をもつ。有価証券にそのような指定がない場合には,有価証券の発行者が普通裁判籍を有する 裁判所が,それが存しない場合には,有価証券の発行者が発行時に普通裁判籍を有していた裁判所 が土地管轄をもつ。
(2) 有価証券が土地登記簿に登記された権利について発行された場合には,土地が所在する地の 裁判所が専属的な土地管轄をもつ。
(3) 本条に従い土地管轄をもつ裁判所以外の裁判所が公示催告を行う場合には,その内容は,土 地管轄をもつ裁判所においても,裁判所掲示板への掲示又は情報システムへの登録によって公示し なければならない。」
この FamFG 第466条においては,管轄原因として,①義務履行地又は有価証券発行者の普通裁判籍,
②不動産所在地が挙げられているほか,③第3項に特則がある。
bb) 義務履行地及び普通裁判籍に基づく管轄(FamFG 第466条第1項)
FamFG 第466条第1項第1文によれば,有価証券の無効宣言のための公示催告手続の土地管轄について は,第一義的には,有価証券において指定された義務履行地が基準となる。義務履行地は,有価証券に おいて明示的に指定されている必要はなく,BGB 第269条又は WG 第4条等の規定に従って客観的に決定 される場合も含むという。
義務履行地が外国である場合には,(家事事件のように)ベルリン・シェーネベルク区裁判所が土地管轄 をもつのではなく,FamFG 第466条第1項第2文による。義務履行地が決定できない又は存在しない場合
319 Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 10.
320 学説の中には,BGB 第935条(逸失物に関する即時取得の排除)にいう逸失と同義とする狭い解釈に従う見解もある。
しかし,BGB 第935条は,占有者の意思を判断基準としているのに対して,公示催告手続においては占有者の意思は問題 とならないため,この見解は批判されている。
321 同法第2条は,FamFG 第466条以下を準用している。Keidel/Giers, FamFG-Kommentar, a.a.O., § 466, Rn. 11.