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静的光散乱による重量平均分子量測定の原理

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 40-43)

第二章 ファミリー D DNA ポリメラーゼの生化学解析

2.2. 材料と方法

2.2.4. 静的光散乱による重量平均分子量測定の原理

光散乱を用いたタンパク質の分子量の決定について過去の文献で詳細に述べられている (Wen et al., 1996)。本項では、光散乱検出装置Viscotek TDAmax (Malvern社) を用いる場合に おけるタンパク質の重量平均分子量の原理を説明する。

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静的光散乱の基本式はRayleighの方程式で定義され、(1)式のように表される。

𝐾𝑐

𝑅(𝜃)= [ 1

𝑀𝑤+ 2𝐴2𝑐] 1 𝑃(𝜃)

(1)

R(θ) はRayleigh比、K*は光学パラメーターを示し、4π2 n02 (dn/dc)2 / NA λ04で表される定数 である。n0は溶媒の屈折率、cは溶質の重量濃度 (mg/ml)、dn/dcは溶質の屈折率の濃度増分、

NAはアボガドロ定数、λ0は真空中での入射光の波長、Mwは重量平均分子量、A2は第二ビリア ル係数という溶質分子の溶液への分散状態を表す係数である。P(θ) は散乱光の角度依存性と 分子の大きさに依存する項であり、次の式であらわされる。

1

𝑃(𝜃)= 1 +16𝜋2𝑛02

3𝜆02 〈𝑟𝑔2〉 sin2(𝜃 2)

(2)

ここで<rg2>は平均二乗慣性半径である。Rayleighの方程式から、光散乱は分子量と分子の 大きさと溶質の濃度に依存していることがわかる。

静的光散乱において、光散乱検出器をゲルろ過カラムクロマトグラフィーと連結して測定 する実験系は、ゲルろ過カラムによって目的タンパク質を分画すると同時に、バッファー交 換および微粒子によるノイズを除去することができるため、タンパク質分子の分析において 非常に有効な手法である (Wen et al., 1996)。ゲルろ過カラムクロマトグラフィーから溶出され たタンパク質を分析する場合は、溶質の濃度が希薄な条件であると仮定でき、このような条 件下では第二ビリアル係数を無視することができる。また、糖鎖修飾を受けていないタンパ ク質の屈折率の濃度増分dn/dcの値はアミノ酸配列に依存せず0.185 ml/gと一定であるとして よい。さらに、(2) 式で定義される散乱角の角度依存性については、一般的には溶質分子の直 径が測定波長の1/20以下の場合は光散乱の角度依存性は無くなり、等方散乱として扱っても よい。静的光散乱では、測定に633 ~ 670 nmの波長のレーザー光を用いることが多いため、

根平均二乗慣性半径<rg2>1/2が15.8 ~ 16.8 nm以下の場合は、(2) 式の角度依存性の項を無視す ることができ、(2) 式は1/P(θ) = 1となる。従って、(1) は次式のように近似できる。

40 𝐾𝑐 𝑅(𝜃)= 1

𝑀𝑤

𝑅(𝜃) = 𝐾𝑀𝑤𝑐

(3)

なお等方散乱として扱う場合、どの散乱角度を用いても良いが、一般的には S/N比の良い 90°で測定する方が望ましい。

Rayleigh比は散乱光強度を散乱角θの関数として表す時の物理量で、次の式で定義される。

𝑅(𝜃) = 𝐼𝑟2 𝐼0𝑉𝜃

(4)

Iは散乱光強度、I0は入射光強度、rは散乱点からの距離、Vθは散乱体積の角度依存性を示 している。

続いて、測定装置の校正について記述する。測定装置の校正には分子量既知の標準タンパ ク質を用いた校正と、Rayleigh比が既知の物質を用いた校正の2種類があるが、本研究では 標準物質を用いて校正を行った。

光散乱検出器で検出される光強度をILSとすると、(3) (4) 式より (5) 式が導ける。

𝐼𝐿𝑆= 𝐼0𝑉𝜃

𝑟2 𝐾𝑀𝑤𝑐

𝐼𝐿𝑆 = 𝐾𝐿𝑆𝑀𝑤𝑐

(5)

ここで、KLS = I0Vθ/r2 K*とすると、KLSは光散乱検出器の装置定数を示している。この装置 定数KLSを、標準タンパク質を用いてあらかじめ算出しておき、未知試料を同条件で測定す ることで、(5) 式より未知試料の重量平均分子量Mwを求めることができる。

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分子量既知の標準タンパク質を用いた校正には次のような利点がある (Wen et al., 1996)。一 つ目に、簡便に校正や検定を行えることである。これは、測定装置の動作が不安定で都度校 正を行わなければいけないような状況では大きなメリットである。二つ目に、実際の測定系 と同じ条件で校正できることである。Rayleigh比既知の物質を用いることによる絶対校正で は、標準物質 (トルエンなどがよく用いられる) から実際の測定系である水層への溶媒交換が 必要であり、交換時に検出装置に塩が析出する危険性を孕む。しかし、標準タンパク質を用 いた校正方法では、このようなリスクも回避することができる。

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