電気は、最も重要なライフラインの一つとなるため、耐震化だけでなく十分なバッ クアップを想定しておく必要がある。
また、その供給先について十分に検討しておく必要がある。
<電気設備の耐震化・バックアップ例>
◆ 受変電設備の耐震化
受変電設備の転倒による破壊を防ぐため、防振ゴムの設置など転倒防止装置を 設置しておく。
◆ 非常用発電機燃料の備蓄量
非常用発電機の燃料について3日分の備蓄量を確保しておく。
◆ 燃料補充方法の想定
近隣業者と具体的な協定を締結し、緊急時においても確実に燃料が補充され るよう想定しておく。
◆ 非常用発電機電力供給先
一般的に手術室やICUなどは最低限想定されているが、非常用発電機の容 量を鑑みたうえで、一般病室や災害対策本部が設置される室などを供給先に加 えておく。
② 上水道設備
医療現場において衛生管理に必要なライフラインであり、食事など日常生活におい ても重要なライフラインである。
<上水設備の耐震化・バックアップ例>
◆ 上水設備の耐震化
耐震継手により、地震時においても給水管の断絶を避けられるよう対策をして おく。
◆ 上水の補充方法の想定
受水槽による備蓄だけではなく、近隣施設からの優先供給や業者等との取り 決めにより、確実に補充が行えるよう想定しておく。
③ 下水道設備
特にトイレ対策として想定をしておく必要がある。
<下水設備の耐震化・バックアップ例>
◆ 下水設備の耐震化
耐震継手により、地震時においても下水管の断絶を避けられるよう対策をして おく。
◆ 井戸水の利用
上水が不足した場合に井戸水を利用することで、上水の代替とすることが可 能である。しかし、水質について厳密な管理が行われていないため、十分注意 のうえ使用することを想定しておく。
◆ トイレの想定
下水設備が破損した際に排泄物の処理が可能なように、簡易トイレなどを備 蓄しておく。
④ ガス設備
冬に発災した場合には、給湯が非常に重要なライフラインとなり、暖房などにも影 響を及ぼすため、ガスの供給停止を想定しておく必要がある。
<ガス設備の耐震化・バックアップ例>
◆ ガス設備の耐震化
耐震継手により、地震時においてもガス管の断絶を避けられるよう対策をして おく。
◆ 代替燃料の想定
ガスが不足した場合に、重油や灯油など代替燃料を想定し、それに対応でき るよう機器を更新しておく。
◆ 仮設ボンベによる供給
災害時に仮設ボンベによる供給が可能なように近隣業者と取り決めておく。
(5) 昇降機の閉じ込め防止対策
建物内の縦移動は、横移動に比べて大きな労力が必要であり、また患者などを搬送す るにあたっては、昇降機設備は必須である。地震時においても適切に機能するよう対策 が必要である。
<昇降機の閉じ込め防止対策例>
◆ P波感知器付地震時管制運転
P波(初期微動)を感知した時点で、最寄階に着床し、乗客のカゴ内への閉じ 込めを防ぐ機能。
◆ 自動診断・仮復旧システム機能
安全装置が稼働した場合に、保守会社による確認を経ずに、エレベーターが自 動で状態を確認し、異常がなければ運転を再開する機能。
(6) 家具や医療機器の転倒・破損防止対策
地震により建物及びライフラインに影響がなかったとしても家具の転倒による事故 や医療機器の転倒による破損しないように、転倒・破損防止の対策を行う必要がある。
<家具や医療機器の転倒・破損防止対策例>
◆ 突っ張り棒による天井へ家具を固定しておく。
◆ アンカーボルトによる床へ家具を固定しておく。
◆ 固定ベルトによる医療機器を固定しておく。
第5章 適切なBCPの運用への取組み
1 BCPの運用に向けた備え
BCPを着実に実行するための必要な備えとして、組織のトップ(病院長など)がそ の必要性を認識したうえで、適切に予算化を行い、中長期的な視点で取り組んでいく必 要がある。
<関係機関との連携の推進(例)>
近隣の医師会や町会などにも防災訓練に参加してもらい、災害時の行動について確 認を行う。訓練において課題等を共有し、BCPやマニュアルへの反映を行う。
<耐震化の推進(例)>
耐震化の実施には、多額の費用と工事が必要となるため病院機能を維持しながら一 度に対応することは難しい。Is 値(耐震指標)と建物の病院内における重要性を比較・
考慮した優先順位を設定し、計画的に耐震化を行う。
2 BCPに基づく訓練・教育 (1) 訓練
BCPに記載した業務が、実際に対応可能か訓練により検証を行う必要がある。検証 にあたっては、病院の被害想定を踏まえた訓練を行い、病院単独でなく近隣医療機関や 近隣住民も含めた訓練を行う必要がある。
<訓練項目の例①>
ライフラインが寸断されたことを想定し、バックアップによる病院の一部の稼働や 備蓄食料の調理を行い、緊急時の燃料不足や食料等の消費期限切れがないことを確認 する。
<訓練項目の例②>
近隣住民を搬送される傷病者として訓練に参加させて、病院の側だけでなく住民に 対するBCPの啓発を行う。
<訓練項目の例③>
訓練を繰り返し行い、より多くの職員に参加させることによりBCPやマニュアル の周知を行う。
(2) 教育
BCPは、病院全体において策定されたものであり、災害時に職員個々の行動を規 定したマニュアルとは性格の異なるものである。病院としてどのような対応を行うの か全体像を日常的な教育を通して全職員へ周知する必要がある。
<教育の例>
院内研修において、全部門に対してBCPの内容について説明を行い、その後部門 横断的に少人数で議論を行う。
3 BCPの点検・是正
BCPの取組状況実施内容や取組状況について、定期的に確認を行う。
また、実施できていないところを把握して、上層部も含めて共通認識を持って是正に努 める。
<点検・是正(例)>
看護部門で、BCPの一部を是正するにあたり、その内容について他部門と調整し、
影響がないことを確認する。
4 BCPの見直し
BCPの訓練後に、病院長を責任者としたBCP見直し会議を行い、訓練の結果だけ でなく社会情勢の変化などを踏まえてBCPの見直しを行う必要がある。
<BCPの見直しが想定される例(社会情勢の変化)>
◆ 周辺において大規模開発が行われ、周辺人口が大幅に増大した。
◆ 想定地震の大きさが見直され、より大きな地震が発生するリスクが高まった。
◆ 都や市区町村の地域防災計画の見直しが行われた。
<BCPの見直しが想定される例(病院機能の変化)>
◆ 法律の変更により通常において配置されている医師及び看護師の数が増加した。
◆ 非常用発電機容量の増強により、より長時間電力の供給が可能となった。