• 検索結果がありません。

電子挙動シミュレーション結果と考察

本章では,第 2 章で記述した粒子軌道計算コードを用いて行ったシミュレー ション結果を示す.シミュレーション結果の妥当性を評価するために前章で記 述した平衡計算法Grad-Shafranov方程式から導いた装置中央部における1D平衡 プラズマの各種径方向分布との比較を行う.

計算が進むと場の数値が大きくなるため,粒子計算を解くアダムス法が収束 しづらくなる.このためシミュレーションタイム最後まで計算が終了していな い.

3-1 シミュレーション結果

Fig. 3-1~3-6に各シミュレーション結果を示す.

Fig. 3-1に粒子位置の時間発展を示す.2章で述べたように電子の初期配置は

装置半径rwで規格化した計算領域内に一様に分布させている.

Fig. 3-1-1(a)10stepから(f)60stepでは見かけ上大きな変化はなく,少しずつ粒子

密度が薄くなっていく様子が分かる.シミュレーションの初期では外部コイル が作る磁場が支配的であり,その磁場勾配により電子が装置外部にむかって加 速され計算領域から出てしまい粒子が損失していく.(i)90stepでr=0.9付近に粒 子が少し線状に集中していき,(j)100stepでは装置中央をくりぬいたドーナツ状 に粒子が径方向に圧縮されてきている.(k)500stepからFig. 3-1-2 (c)2500stepで は段々と電離を起こしながら,粒子が装置中央へ圧縮されていく様子が確認で きる.そのため500step以降粒子損失が発生しにくくなる.なお粒子の運動方程

式は(2.1)式でといておりR方向の圧縮が起きる条件は

 

0

2 2

i

r ei e z

e m

r q

vr v Bv となる.

Fig. 3-4に電離数と電子損失の時間変化を示す.青いラインが電離数,赤いラ インが電子損失を表している.Fig. 3-2に電子密度の径方向分布,Fig. 3-3にプラ ズマ電流の径方向分布の時間発展をそれぞれ示す.

シミュレーション初期にはたくさんの粒子が存在するため多少の電離が発生 している.しかしFig. 3-1(i)90stepの磁場反転が起こるまでに多くの粒子が損失 してしまい,電離を起こす粒子自体が少なくなってしまうために電離数が減少 している.このような少粒子数の状態はおよそ1400step程度まで続き,少量ず つのみしか電離が発生していない.電子密度と電流の関係からおよそ1400step から粒子がθ方向に加速される様子が確認でき,粒子が大きなエネルギーを持 ったため電離数の大きな増加が見られる.

Fig. 3-1-1 10-1000stepまでの電子配置

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step (i)90step (j)100step (k)500step (l )1000step

Initial position

(a) (b) (c)

(d)

(g)

(j)

(e)

(h)

(k)

(f)

(i)

(l)

Fig. 3-1-2 1500-2500stepまでの電子配置 (a)1500step (b)2000step (c)2500step

Fig. 3-2 電離数と電子損失の時間変化

(a) (b) (c)

Fig. 3-3 電子密度の時間発展 (a)10-40step (b)60-100step (c)500-2500step (a)

(b)

(c)

Fig. 3-4 プラズマ電流の径方向分布の時間発展 (a)10-50step (b)60-80step (c)90-100step (d)500-2500step

(a)

(b)

(c)

(d)

Fig. 3-5に磁束の径方向分布,Fig. 3-6に磁場の径方向分布の時間発展を示す.

青いラインは外部磁場によって作られる磁束・磁場,赤いラインはプラズマ電 流による磁束・磁場,緑がトータルとなっている.

磁束・磁場はFig. 3-5-1・Fig. 3-6-1 (a)10-(h)80stepではほぼ外部コイルによる 磁束・磁場が支配的になっている.Fig. 3-5-2・Fig. 3-6-2 (a)90stepから外部コイ ルにかかる電流が小さくなるため,プラズマ電流による場が支配的になってい る.同時にFRCプラズマの特徴である磁場の逆転が確認でき,粒子が装置中央 部へと閉じ込められていく.(c)500stepから(g)2500stepでは,プラズマ電流が作 る磁場によって逆転磁場が維持されている.

Fig. 3-5-1 10-80stepの磁束の径方向分布

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step

(a) (b)

(d)

(f) (c)

(e)

(g) (h)

Fig. 3-5-2 90-2500stepの磁束の径方向分布

(a)90step (b)100step (c)500step (d)1000step (e)1500step (f)2000step (g)2500step

(a) (b)

(d)

(f) (c)

(e)

(g)

Fig. 3-6-1 10-80stepの磁場の径方向分布

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step (a)

(c)

(e)

(g) (h)

(f) (d) (b)

Fig. 3-6-2 90-2500stepの磁場の径方向分布

(a)90step (b)100step (c)500step (d)1000step (e)1500step (f)2000step (g)2500step (a)

(c)

(e)

(g)

(b)

(d)

(f)

3-2 反射の導入

3-1節では,計算領域外へ粒子が出た場合にすべて損失とし計算をやめていた が,実際の装置ではガラスが装置壁となっているため粒子が全損失するとは考 えづらい.そこで粒子が計算領域外へ出てしまった場合に,粒子が装置壁で全 反射するモデルを考え計算を行う.

反射のモデルは粒子が計算領域外へ出た場合に,計算を行う前の粒子の状態 へ戻し,r方向の速度成分のみを折り返して再度計算を行う.

Fig. 3-7 反射の概要図

原点 O(0,0)

electron r

w

Loss

v r

v

v r

3-3 反射導入後のシミュレーション結果

反射導入後のシミュレーション結果をFig. 3-8~3-13に示す.

Fig. 3-8に反射を導入した粒子位置の時間発展,Fig. 3-9に電離数の変化を示す.

なお電子は装置壁面において全て反射するものとするので損失は発生しない.

Fig. 3-10に電子密度,Fig. 3-11をプラズマ電流の径方向分布を示す.

外部コイルが作る磁場は反射導入以前のシミュレーションと同様なので,初 期段階では外部コイルが作る磁場が支配的であり,その磁場勾配により電子が 装置外部にむかって加速される.しかし電子が壁面で全て反射されるため,電 子が装置壁付近に押し付けられ電子密度が高い領域が形成されている.ここで 装置壁部に圧縮された電子による電流が発生し,早いシミュレーションステッ プよりプラズマ電流が場に大きな影響を与えている.(e)50stepでは装置壁面が 青く縁取られるほどの集中が見られる.この電子密度によって作られる磁場か

ら(f)60stepでは装置壁面付近の粒子がr=0.9付近へと圧縮されている.さらに

(g)70stepではr=0.5まで圧縮されてきている.(h)80stepではr=0.8程度まで散乱

するが,(i)90stepから(k)110stepで中央へと強く圧縮されていく.

電子が損失しないため,計算粒子数が多く反射を導入する以前のシミュレー ションに比べ,電離が多く発生している.また,(f)60stepより場が大きくなり粒 子速度が加速されるのでさらに多くの電離が発生している.

Fig. 3-8 粒子位置の時間発展(反射導入後)

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step (i)90step (j)100step (k)110step

(a) (b) (c)

(d)

(g)

(j)

(e)

(h)

(k)

(f)

(i)

Fig. 3-9 電離数の変化

Fig. 3-10 電子密度

(a)10-50step (b)60-90step (c)100-110step (a)

(b)

(c)

Fig. 3-11 プラズマ電流の径方向分布 (a)10-50step (b)60-70step (c)80-90step (d)100-110step

(a)

(b)

(c)

(d)

Fig. 3-5に磁束の径方向分布,Fig. 3-6に磁場の径方向分布の時間発展を示す.

青いラインは外部磁場によって作られる磁束・磁場,赤いラインはプラズマ電 流による磁束・磁場,緑がトータルとなっている.

電子が損失せず,装置壁付近ではあるが電子の集中があるためにプラズマ電 流の寄与が大変大きくなっている.プラズマ電流の大きい装置壁付近から粒子 を外から内へとかき集めるような磁場勾配が発生している.(e)50stepではプラ ズマ電流による磁場がやや支配的になり,磁場の逆転が見られる.以降ではほ ぼプラズマ電流のつくりだす場によって粒子軌道が計算されている.それより 粒子が装置中央部へと移動し,多くの粒子が閉じ込められている.しかし

(h)80stepで磁場が初期磁場の30倍程度になった後,10ステップ毎に磁場の正負

が反転する現象が確認できる.

Fig. 3-12-1 0-50stepの磁束の径方向分布

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step

(a) (b)

(c)

(e)

(g)

(d)

(f)

(h)

Fig. 3-12-2 0-50stepの磁束の径方向分布 (a)90step (b)100step (c)110step

(a) (b)

(c)

Fig. 3-13-1 40-60step磁場の時間発展(反射導入後)

(a)10step (b)20step (c)30step (d)40step (e)50step (f)60step (g)70step (h)80step

(a) (b)

(d)

(f)

(h) (c)

(e)

(g)

Fig. 3-13-2 100-110step磁場の時間発展(反射導入後)

(a)90step (b)100step (c)110step

(a) (b)

(c)

3-4 G-S方程式から求めたFRCの平衡状態と無反射モデルとの比較

Grad-Shafranov方程式から求めたr方向1次元の平衡解をFig. 3-14に示す.こ

のとき使用した計算パラメータをtable 3-1に示す

ここでは短時間しか計算の進まなかった反射を行うモデルの結果を考えずに,

外部コイルにかけた電流が反転し一定時間以上計算の進んだ反射を行わないモ

デルの2500stepでの計算結果Fig. 3-15と平衡解の比較を行う.

Table 3-1 平衡計算用パラメータ

装置半径 : 0.17[m]

外部磁場 : 0.5[T]

磁気軸の電子数密度 : 2.5*1021 [m-3]

Fig. 3-15に示す結果は生成途中であるので平衡状態ではない.そこでこの節で

の目的は,厳密な比較というよりむしろ今後のシミュレーションに向けた指針 を得ることとする.

電子密度に関して,平衡解に比べてシミュレーション結果では電子の局在化 がみてとれる.当シミュレーションでは計算領域に残っている粒子の大半が,

初期の損失を免れ中央へと圧縮された粒子が電離を起こし発生した粒子である.

外部コイルに流れる電流値が反転し終わり,電子の大きな位置変化が無くなっ た状態で電離した粒子は,ほぼ安定した磁場で計算されることになる.このよ うな状態で計算を進めていくと

 

0

2

2   

i

r ei e z

e m

r q

v r v B v

vr0となる

位置で安定すると予想される.このことが粒子の集中している原因であり,ま たこの問題に対処するために粒子集中がおきている場所でピッチ角散乱等の密 度を考慮する衝突を導入する必要があると思われる.

磁束に関して,平衡解ではr=0.5付近において磁束が0となるseparatrixを確 認することができる.磁場に関しても,r=0.4付近で磁場が0となるO-point そして磁場の逆転というFRCプラズマの特徴が確認できる.シミュレーション 結果では,separatrixは確認できない上O-pointの位置も装置中央部に寄りすぎて いる.しかし,反転磁場が方向のプラズマ電流から維持されるというFRCプラ ズマの特徴は再現できている.さらに電離数の変遷とプラズマ電流の増加率か らシミュレーションをすすめていくことでより平衡解に近づいていくのではな いかと予想できる.

(a)

(b)

(c)

Fig. 3-14 平衡解の径方向分布

(a)密度分布 (b)磁束分布 (c)磁場分布

Fig. 3-15 反射を用いないモデルの結果(2500step) (a)密度分布 (b)磁束分布 (c)磁場分布

(a)

(b)

(c)

3-5 考察

反射を用いないモデルでは,初期粒子の多くを損失するものの初期粒子以上 の電離を得ることができた.また電流反転後では安定した磁場配位を維持し続 け,粒子を装置中央付近に閉じ込めている.

反射を用いたモデルでは,初期粒子の損失が無く計算初期から多くの電離を 得ることができる.また早いステップよりプラズマ電流の作る磁場によって装 置壁面から粒子をかき集め,中央にとじこめることができた.しかし場の変動 が大きく,ステップ数を長く計算できなかった.

粒子の異常な集中が見られるため,ピッチ角散乱等の密度に応じて粒子が衝 突するシステムを導入する必要がある.

磁場の大きさが初期の磁場の数十倍以上となっている.軌道計算の計算ステ ップは初期の磁場を用いて規格化を行なっているため,磁場の大きさに合わせ た計算刻み時間の変更が必要である.

また磁場の時間変化がとても大きいため,現在プラズマ電流からの磁束をア ンペールの法則よりもとめているが磁場の時間変化を反映するアンペール・マ クスウェルの法則等より求める必要がある.

関連したドキュメント