雑用水道の心臓部である水処理プロセスの決定は、使用する原水の種類(水質)と量、雑用水の利用 用途はもとより建物の用途や特性をも勘案しながら、総合的に行われます。したがって、雑用水道の 処理フローも、厳密に言えば、それぞれの建物によって大なり小なりの違いがあります。
この章では、国土交通省計画基準*2や下水処理水循環利用技術指針案*12 等に示されている標準的な 雑用水道の処理フローについて述べることにします。
4.1 排水再利用方式
排水再利用方式では、雑排水・厨房排水・汚水を原水とし、雨水は対象外とします。
(1) 標準処理フロー
国土交通省は、平成 9 年現在で代表的な雑用水道の実態調査を行い、それに基づいて、4 つの標準 処理フロー(図 4-1)を示しました。
標準処理フローNo.1~3 は、生物処理をメインとしたフローです。No.1 は、手洗い・洗面・湯沸し からの雑排水を原水とする場合に最も適しています。厨房排水や汚水が混入した雑排水を原水とする 場合には、この処理フローに活性炭処理装置やオゾン処理装置を追加する必要があります。また、No.2 は、手洗い・洗面・湯沸しからの雑排水に厨房排水や汚水を加えたものを原水とする場合に適してい ます。汚水の混入割合が高くなれば、活性炭処理装置やオゾン処理装置を追加する必要があります。
そして、No.3 は、いかなる原水にも適用可能であり、安定した処理水水質が得られる処理フローです。
一方、標準処理フローNo.4 は、膜処理をメインとしたフローです。No.4 は、手洗い・洗面・湯沸し からの雑排水を原水とする場合に限定され、厨房排水や汚水が混入した原水への適用は困難です。
1) 標準処理フローNo.1
2) 標準処理フローNo.2
3) 標準処理フローNo.3
4) 標準処理フローNo.4
図 4-1 排水再利用方式の標準処理フロー(国土交通省)
須賀工業株式会社 30
一方、福岡市では、同市技術指針案*7の中で、原水の水質、水量、負荷変動、水質基準、設置スペ ース、維持管理上の条件等を勘案して、図 4-2を参考に用水処理方式を定めるものとしています。
処理フロー 原水
前処理 主たる処理 後処理
雑排水厨房排水を 含まない
雑排水厨房排水を 含む
汚水
浄化槽処理水 - - 上記の処理方法の中から水質に応じて選定
する
【注】 図中┤├はどちらかを選択する。また、( )は、必要に応じて選択する。
図 4-2 福岡市の標準処理フロー(例)
須賀工業株式会社 31
(2)標準処理フローの適用性・相互比較
建設省は、標準処理フローから期待できる処理水質と、その原水の種類と適用性に関して、表 4-1 のように示しています。さらに、標準処理フローを選定する目安のひとつとして、表 4-2に示すよう な経済性や維持管理性などの比較を行っています。
4.2 雨水利用方式 (1)標準処理フロー
国土交通省は、同様に、雨水利用方式に関しても、4 つの標準処理フローを示し(図 4-3)、雨水集 水量、利用用途および建築物の用途・特性を総合的に考慮して決定するよう定めています。標準処理 フローNo.1 は、雑用水の使用状況と雨水貯留槽容量の関係で、細かい砂や微細な有機性浮遊物が自然 沈降できるだけの滞留時間が確保される場合に適用できます。また、No.2 は、適用事例が多く、最も 基本的な処理フローということになりますが、沈殿槽の流入部に砕石ろ過層を備えたものもあります。
No.3 は、処理設備の設置面積や水位の制約から沈殿槽を省略したい場合に適用できます。以上の標準 処理フローが対象とする使用用途は、水洗便所用水でありますが、No.4 により得られる処理水は、こ の他空調用水(冷却塔補給水)や散水、消火用水等にも使用可能です。ただし、雨水の集水場所は汚染 度の少ない屋根面を原則としており、酸性雨に対する特別な配慮はしていないので、これらの条件か ら外れる場合には、適切な措置が必要となります。
表 4-1a 標準処理フローの処理水質(国土交通省)
標準処理 BOD COD SS 色度 陰イオン活性剤
フローNo. [mg/L] [mg/L] [mg/L] [度] [mg/L]
1 15以下 30以下 10以下 不快感を感じない 40程度 5.8~8.6 1.0以下 2 10以下 20以下 10以下 不快感を感じない 40程度 5.8~8.6 1.0以下 3 10以下 20以下 トレース 不快感を感じない 30程度 5.8~8.6 1.0以下 4 15以下 30以下 トレース 不快感を感じない 10程度 5.8~8.6 1.0以下
臭気 pH
表 4-1b 標準処理フローの原水種別と適用性(国土交通省)
標準処理 A:雑排水 B:雑排水 C:汚水+雑排水
フローNo. ②③ ②③④ ①②③④
1 負荷が小さいため処理水 質が安定(生物膜法のと き)している。
原水の水質変動があると処理水 質の変化が起こりやすい。生物 処理の機能維持・管理が重要と なる
原水の水質変動があると処理水質の変化が起 こりやすい。生物処理の機能維持・管理が重 要となる。
2 過剰設備となる。 原水の水質が変動しても処理水 質は安定している。
原水の水質が変動しても処理水質は安定して いる。汚水①の混入割合が高いと色度除去に オゾンまたは活性炭が必要となる場合もあ 3 原水の水質が変動しても る
処理水質は安定してい る
原水の水質が変動しても処理水 質は安定している。
原水の水質が変動しても処理水質は安定して いる。
4 負荷が小さいため処理水 質が安定している。間欠 運転に適する。
原水中の有機物汚染に対し、活 性炭吸着の負荷が高く、処理コ ストが割高になる。
原水中の有機物汚染に対し、活性炭吸着の負 荷が高く、処理コストが割高になる。
【注】 原水種別:①便所、②手洗い・洗面、③湯沸し、④厨房
須賀工業株式会社 32
表 4-2 標準処理フローの建設費等からの比較参考例(国土交通省) 標準処理
フローNo.
建設費 造水コスト 設置面積 維持管理法
1 100 100 100 ○ 2 130 500 50 ○ 3 100 100 100 ◎ 4 110~125 160 35 ◎
1) 標準処理フローNo.により,最適な原水が異なるので,フローNo.1 及び No.4 は,原水(A), フロー No.2 及び No.3 は,原水(B)又は(C)とした。
2) 表中の数字は,原水種別にフローNo.1, フローNo.2 をそれぞれ 100 とした場合の指数である。
3) 建設費に幅があるのは,生物処理槽の方式や膜処理装置のシステム構成の違いによる。
4) 建設費は,機械及び電気・計装工事分であり,水槽等の土木・建築工事に含まれる躯体工事と機 器の基礎は含まれていない。
5) 機械の積算比較範囲は,スクリーンから処理水槽内部部品までで,再利用水を給水するポンプ以 降の給水系は含まれていない。また,付帯設備であるオゾン処理装置,活性炭吸着装置,脱水装 置,脱臭装置は含まれていない。
6)
電気工事は,制御盤以降のものであり,1 次側の電源供給は含まれていない。主な計測器として は,原水流量指示積算計,処理水流量指示積算計,処理水 pH 指示記録計及び処理水濁度計があ る。
7) 造水コスト計算においては,標準処理フローに含まれていないオゾン処理と活性炭吸着は考慮 していない。
8) 膜処理装置の膜ライフを 3 年とし,毎年 1/3 ずつ交換するとして試算した。
9) 活性炭ライフは,1 年として試算した(標準処理フローNo.4 の場合)。
10) 各フローとも,汚泥の脱水処理は行わず,濃縮後バキューム車による搬出処分とした。
【注】
11) 設置面積は,原水流量調整槽及び処理水槽は共通なものとして比較から除外し,処理プロセスに より相違する機器類や水槽の所要面積で比較を行った。
須賀工業株式会社 33
1) 標準処理フローNo.1
2) 標準処理フローNo.2
3) 標準処理フローNo.3
4) 標準処理フローNo.4
【注】 雨水の集水から使用に至る過程において、汚染、腐敗等のおそれがなく、かつ、十分な維持管理を 行うことができる場合には、消毒装置を省略することができる。
図 4-3 雨水利用方式の標準処理フロー(国土交通省)
また、東京都財務局は、同局指針*16 の技術基準の中で雨水利用における処理フローを示していま す(図 4-4)。
図 4-4 雨水利用の処理の流れ(東京都財務局)
この他、横浜市でも、「雨水利用システム設計要領(学校施設用)」を作成し、国土交通省の標準処 理フローNo.1 と同等のものを示しています。
(2)標準処理フローの相互比較
国土交通省では、標準処理フローNo.2 を基本として、コスト、面積等の比較を行っています(表 4-3)。
須賀工業株式会社 34
表 4-3 標準処理フローの比較例(国土交通省) 設置面積 標準処
理 フロー No.
集水場所の汚染度に対する適合性 建設 費
造水コス
ト 雨水貯留槽を 除く
雨水貯留槽を 含む
維持管 理
1 土砂や煤じん等の集積がほとんどない、きれ いな屋根面
80 100 15 80 ◎
2 土砂や煤じん等の集積があまりない、比較的 きれいな屋根面
100 100 100 100 ◎
3 同上 120 110 30 85 ○
4 土砂や煤じん等が集積しやすい、汚れの多い 屋根面
140 105 120 105 ○
1) 集水場所の汚染度とは、溶解性物質によるものではなく、非溶解性物質による汚れの程度をいう。
2) 建設費,造水コスト,設置面積は,処理フローNo.2 を基準(100)として作成した。施設の規模は,使 用水量 30m3/日とした。
3) 建設費のうち,水槽類は建物の地下ピットを利用するものとし,建築費に含めない。
4) 造水コストはランニングコストを示し、設備の減価償却費は含まない。
5) 設置面積は,国土交通省計画基準*2 の標準設計例をモデルとして算出した。沈殿槽と雨水貯留槽 上部は機器室や倉庫等に利用するのが一般的であるが,今回は他用途に利用しないものとした。
また、ろ過器も蒸気水槽の上部以外に設置するものとした。
【注】
6) 維持管理の欄の◎〇は,維持管理のしやすさを示し,◎が最も維持管理しやすい。