第 5 章 市民意識の評価
5.3 集計、統計方法
本調査で得られた調査表の回収結果を集計したのち、KJ 法を行い、本調査か ら内在化した問題・課題の構造化を行った。
KJ法とは、1950年代に文化人類学者であった川喜田二郎により考案され た、発想と問題解決の技法である。この技法は、当時の川喜田が文化人類学に おける各地でのフィールドワークで集められる様々な観察情報などをまとめる ために編み出したものである。川喜田二郎著作集によるとKJ法43とは、データ
をして語らしめて、よりよき判断を潭沌の中から取りだす方法とある。また、
丸山44は次のように述べている。「・・・それはアナロジーに基づいてデータ を組み立てていく(「グルーピング」と「表札づくり(コンセプト・メーキン グ)」を繰り返す)と、そこにひとつの統一的な世界(コスモスといっても良 いし曼荼羅といっても良い)が出現する。KJ法では、これを図解という。ここ には「縫い目のない世界」が現出し、エコロジカルといってよい構造が見えて くる。それは人を発見と洞察に導く。・・・」と述べている。つまりKJ法とは、
ある任意の情報(データ)に対して「グルーピング」と「コンセプト・メーキ ング」によりそれだけでは混沌としている問題を、データをして語らしめ自ら 構造化する手法である。
本研究では、加賀市における調査結果に対して KJ 法を行うために、まず「ラ ベル化」をおこなった。「ラベル化」とは、調査で得られた結果を 1 単位の文 章で「志」(コンセプト)を持つよう纏めてから、ラベルに書き起こしたもの を指す。例えば、実際に加賀市のバイオマスタウン構想の認知度を問う質問で は、「知っている」と答えた人が全体の 75%であり、「知らなかった」と答え た人が全体の 25%であった。これをラベル化すると「調査対象におけるバイオ マスタウン構想の認知度は 75%であった」と「調査対象におけるバイオマスタ ウン構想を知らない人は全体の 25%であった」と二つのラベルになる。同様に、
自由記述欄での回答で「加賀市と思考が合うので本事業に協力をしてきた」と いうものに対しては、そのままラベル化を行った。また、自由記述欄で文章が 冗長であったり複数のことを述べていたりする場合は、「ラベル化」を行う際 の規則であるラベル 1 つには 1 単位のことしか記述しないという原則を守り、
文章の意味を崩さない程度に短くするか複数のラベルに分割するなどの工夫を 行った。
この時、書き起こされたラベルは、市民、団体、農家と 3 グループ全体で 300 枚程度となった。しかし、これをすべて用いて KJ 法を行うにはラベル枚数が多 すぎて、さらにラベルには重複する内容がある。そのために KJ 法で言うところ の「花火」という方法で各調査対象の調査結果内容についてより重要度の高い ラベルを抽出するための傾向分析を行った。
この「花火」と呼ばれるものは、グルーピング作業に近いもので、階層構造 はなく各ラベルに対して相対的に近いものを集めてリンクを張っていくという ものである。そして、「花火」を行うとラベルは必然的に任意のグループに分 類され調査(結果)の全体像を掴むことができる。また、通常この作業は方眼 紙の上で行われることが多く、その中心からラベルを広げていき相対的に近い
ものを集めると同心円状に広がりちょうど花火のようになることから、このよ うに命名されたそうである。
そして、この「花火」を行った後、ラベルでより重要度の高いもの、つまり 調査目的と合致しており、他のラベルの内容や意味を包含しているものを「多 段ピックアップ法」により収集した。この「多段ピックアップ法」とは、「市 民」「団体」「農家」のそれぞれ「花火」の結果に対して重要度が高く、他の ラベルとの包含関係にあるものについて、まず数十枚を選別する。そして、そ の中でもより重要であるラベルをピックアップして段階的により重要なものを 収集するという方法である。
以上の「花火」と「多段ピックアップ」を用いて収集されたラベルは、「市 民」は 13 枚、「団体」14 枚、「農家」21 枚であった。これらのラベル合計 48 枚で KJ 法を行った。
先ほども述べたように、KJ 法を簡単に説明すると、全てのラベルでより相対 的に近いものを集めて、それらの「志」(コンセプト)を「表札」と呼ばれる ラベルに書き出す(メーキング)ことを繰り返すものである。これを繰り返す と最終的には、ラベル、表札同士が集まらなくなり KJ 法が完成する。