第 4 章 集中指標による照明環境評価実験
4.3 実験結果と考察
4.3.2 集中
単語分類タスク及び暗算加算タスクを実施し得られたデータに対して、3.2で述べた EMアルゴリズムにより対数正規分布へのフィッティングを行い、2つの対数正規分布 のパラメータを導出した。その一例を表4.9に示す。なお、µ1, µ2が平均解答時間に、
σ1, σ2が解答時間の標準偏差に、p、1−pが分布の高さにそれぞれ対応する。なお、実験 データをEMアルゴリズムでフィッティングする際、局所解へ落ちてしまいフィッティ ングがうまくいかなかったデータに関しては無効データとし、解析対象から除外した。
無効データは全データに対して2割程度存在した。この原因としては、単語分類の票を めくる際の時間の揺れや、キーの押し間違いなど3状態モデルでは想定していない外 乱が解答時間に影響を与えたからだと考えられる。フィッティングの一例を図4.11に 示す。また、解析対象から除外した例を図4.12に示す。実験で得られた単語分類タス クの集中時間比率の一覧を表4.10に、暗算加算タスクの集中時間比率の一覧を表4.11 示す。なお、N/Aは上記で述べた無効データである。
表 4.9: 得られたパラメータの例(被験者E02)
パラメータ 1日目SET1 1日目SET2 2日目SET1 2日目SET2 3日目SET1 3日目SET2
µ1 1.82 1.77 1.55 1.53 1.56 1.57
σ1 0.179 0.192 0.169 0.135 0.148 0.152
µ2 2.32 2.02 1.84 1.81 1.88 1.89
σ2 0.260 0.271 0.343 0.230 0.286 0.256
p 0.703 0.701 0.647 0.510 0.760 0.667
図 4.11: EMアルゴリズムによるフィッティングが成功した例
図 4.12: EMアルゴリズムによるフィッティングが失敗した例
表4.10:単語分類タスクの集中時間比率(%)一覧 E01E02E03E04E05E06E07E08E09E10E11E12E13E14E15E16E17E18E19 1日目SET1N/A83.4N/A95.570.0N/AN/A82.780.264.5N/A84.582.474.191.578.580.6N/A66.0 1日目SET2N/A91.5N/AN/AN/AN/A90.070.5N/A86.190.1N/A80.891.3N/A70.1N/AN/A53.9 2日目SET1N/A87.768.894.474.983.176.691.176.378.5N/A80.274.685.382.277.976.2N/A39.6 2日目SET2N/A85.7N/A91.258.478.380.183.271.683.8N/A77.775.084.875.677.9N/A70.136.4 3日目SET174.890.964.790.873.080.384.079.5N/A72.486.981.2N/A91.777.180.577.0N/AN/A 3日目SET269.488.065.382.877.288.275.881.764.769.9N/A80.0N/A85.884.583.6N/AN/A30.5 表4.11:暗算加算タスクの集中時間比率(%)一覧 E01E02E03E04E05E06E07E08E09E10E11E12E13E14E15E16E17E18E19 1日目SET1N/A87.480.880.970.7N/A72.989.890.879.496.8N/A90.081.4N/A90.5N/AN/A59.2 1日目SET270.583.480.1N/AN/A91.956.9N/A91.976.693.078.4N/AN/AN/A93.885.7N/A62.8 2日目SET1N/A82.190.380.164.894.070.685.288.172.088.176.592.286.885.891.088.0N/A36.8 2日目SET281.682.893.483.868.989.965.590.685.863.296.670.189.883.284.485.786.0N/A35.6 3日目SET185.688.796.078.765.196.1N/AN/A77.767.2N/A81.0N/A88.484.889.287.135.531.7 3日目SET275.688.992.775.572.687.479.9N/A90.453.892.669.0N/AN/A86.187.889.332.731.6
単語分類タスク
照明条件を変化させたときの単語分類タスクの集中時間比率を図4.13に示す。それ ぞれ各条件間で集中時間比率に差があるかどうかを対のあるt検定で比較した。
その結果、前半及び後半、両グループとも条件間で、集中時間比率に有意差は認め られなかった。
!!"!"#$%#
$%&'()# *%&'()#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
,$&
-$&
.$&
%$$&
+,-%./0# /01-'./0# +,-(./0#
123456-!0#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
,$&
-$&
.$&
%$$&
/01-%./0# +,-'./0# /01-(./0#
123456-!0#
図 4.13: 単語分類タスクの集中時間比率(条件間比較)
暗算加算タスク
照明条件を変化させたときの暗算加算タスクの集中時間比率を図4.14に示す。それ ぞれ各条件間で集中時間比率に差があるかどうかを対のあるt検定で比較した。
その結果、前半及び後半、両グループとも条件間で、集中時間比率に有意差は認め られなかった。
!!"!"#$%#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
,$&
-$&
.$&
%$$&
$%&%'()# /01&''()# $%&('()#
*+,-./&!)#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
,$&
-$&
.$&
%$$&
/01&%'()# $%&''()# /01&('()#
*+,-./&!)#
012345# 612345#
図 4.14: 暗算加算タスクの集中時間比率(条件間比較)
全グループにおいて、標準条件とT&A条件 の二つの条件間で集中時間に差がある かどうかを対のあるt検定で比較した。単語分類タスクの結果を図4.15に、暗算加算
の結果を図4.16に示す。
!"!"#$%#
$&
'$&
($&
)$&
*$&
%$&
+$&
,$&
-$&
.$&
'$$&
$%# /01&
&'()*+,!-#
!#
図 4.15: 単語分類タスクの集中時間比率条件間比較
!"!"#$%#
$&
'$&
($&
)$&
*$&
%$&
+$&
,$&
-$&
.$&
'$$&
$%# /01&
&'()*+,!-#
図 4.16: 暗算加算タスクの集中時間比率条件間比較
単語分類タスクにおいて、T&A条件 の集中時間比率が標準条件に比べて2.7ポイン ト有意に高かった(p < .05)。つまり、単語分類タスクでは、T&A条件 による集中時 間比率の向上を確認することができた。一方、暗算加算タスクでは条件間で有意差は なかった。
4.3.3 生理的脳疲労
各セット終了時のフリッカー値測定の全被験者平均の結果を図4.17に示す。昼、SET1、
SET2、SET3のデータをそれぞれ対のあるt検定で比較した。一日の最後の施行であ るSET3と、その他のセットを比べると、SET3で有意に値が低くなっていた。つまり、
SET3終了後に大脳の疲労が確認された。これは、タスクを続けることで、大脳系の疲
労が蓄積したためと考えられる。しかし、フリッカー値の変動は小さいため、大脳系 の疲労はパフォーマンスや集中に差を与えない程度であったと考えられる。
標準、T&Aの2つの環境間で、実験時の脳疲労がどのように変化するかを確認した。
各条件間でのフリッカー値測定の比較を図4.18に示す。1日目、2日目、3日目のデー タをそれぞれ対のあるt検定で比較した。前半グループではいずれの条件でもフリッ カー値に有意差は見られなかった。つまり、前半グループにおいては、環境間で脳疲 労に差は確認できなかった。一方、後半グループについては、1日目のT&A条件 と比 較して2日目の標準条件で有意に値が高くなっていた。また、1日目のT&A条件 と比
較して3日目のT&A条件 でに有意に値が高くなっていた。
!"
#!"
$!"
%!"
&!"
'!"
(!"
!" )*+#" )*+$" )*+%"
#$%&'()!"*" ++"
++"
++" ++,,-.!#"
図 4.17: フリッカー値(全被験者平均)
!!"!"#$%#
$%&'()# *%&'()#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
+,-%./0# ,-.-'./0# +,-(./0#
1234(5-!"0#
$&
%$&
'$&
($&
)$&
*$&
+$&
,-.-%./0# +,-'./0# ,-.-(./0#
1234(5-!"0# !!# !!#
図 4.18: フリッカー値(条件間比較)