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ネオニコチノイド系農薬 の動物の健康への影響に

3.3 他の陸生無脊椎動物のネオニ コチノイド系農薬に対する感受性

3.3 他の陸生無脊椎動物のネオニ

図11. ダイズアブラムシへのAphelinus certus(ツヤコバチ科の寄生バチ)の寄生率(±SE)を調べるために、イ ミダクロプリドまたはチアメトキサムで処理した種子から育てた大豆で採餌するものと殺虫性の種子処理をされてい ない大豆(対照)で採餌するもので比較した。同じの文字の付された縦棒は有意な変化がないことを示す。(Tukey の正当な有意差、α= 0.05)、各処理についてn=35である。Frewinら (2014年) の研究より作成。

3.3.2 アリのネオニコチノイド系農薬 に対する感受性

ネオニコチノイド系農薬のアリへの影響を考察した 信頼できる研究は4編ある。Galvanho et al. (2013) は、菌類病原体の広がりを抑える重要な行動であるグ ルーミングへの影響を調査するため、ハキリアリの 一種(Acromyrmex subterraneus)をイミダクロ プリドで処理した。働きアリに1匹当たり10 ng、20 ng、40 ngのイミダクロプリド処理を行った。幅1.6

~2.0 mmの頭蓋を持つ働きアリだけが選ばれた。

えていることになる。この最低投与量はグルーミング 行動を有意に抑制するのに十分だった。死亡率は測定 されなかったが、以前の研究で、ハキリアリの別の種

(Atta sexdens)では、菌類病原体とともに1匹当 たり10 ngの同じ濃度でイミダクロプリドに曝露した 際、菌類病原体にのみ曝露したアリに比べて死亡率が 有意に上昇することが確認されている (Santos et al.

2007)。

Barbieri et al. (2013) では、ヒメアリの一種(Mono- morium antarcticum、調査が行われたニュージーラ

への攻撃性は弱まり、逆に曝露を受けた侵入アリ種の 攻撃性が強まり、結果として生存率は低下した。ヒメ アリの繁殖は影響を受けなかったが、ネオニコチノイ ド系農薬に曝露したアルゼンチンアリの繁殖は、曝露 していないコロニーと比較して50%減少した。採餌 能力へのネオニコチノイド系農薬曝露の影響は検出さ れなかった。

Wang et al. (2015a) は、0.01、0.05、0.25、0.50、

1.00 µg/ml(10~1,000 ng/g)のイミダクロプリ ド濃度のショ糖水をヒアリ(Solenopsis invicta)

のコロニーに与えた。摂餌、巣穴掘り、採餌への影 響が数値化された。10 ng/g の濃度に曝露したアリ はショ糖水の摂取が有意に増加し、巣穴掘り行動が 増えた。250 ng/g 以上の濃度ではショ糖水の摂取、

巣穴掘りおよび採餌行動は有意に抑制された。

Wang et al. (2015b) は、ヒアリ(Solenopsis invicta)の交尾直後の女王アリに濃度 10 ng/g また は 250 ng/gのイミダクロプリドを含有する水を与 えた。どちらの濃度でも女王アリの死亡率は上昇しな かったが、どちらも女王アリの卵を世話する能力を 有意に低下させ、混乱やコロニーの脅威を意味する、

光への反応時間が有意に長くなった。Solenopsis 属 は、卵をグルーミングし、水分量を維持して卵塊のす ばやい移動を可能にする粘着性の物質で卵をコーティ ングする。250 ng/g の濃度では、卵塊の数が有意に 増えた(卵の世話が行き届かず、幼虫の移動に必要な 労力が増えることを示す)ことから、女王アリが卵を グルーミングする能力の低下が示唆された。放置され た卵はカビが生え、結果的にコロニーの発達が抑制さ れる。10 ng/g の濃度に曝露したコロニーは、対照 群と比較して卵塊の数に違いは見られなかった。

これらのアリに関する研究全般において、用いられる ネオニコチノイド濃度は一般的に非常に高く、ほとん どの事例で、野外の現実的な条件下で見込まれる曝露 率よりもはるかに高い(セクション2.1および 2.2を 参照)。野外条件下で遭遇することが合理的に見込ま れるであろう濃度10 ng/g では、亜致死的影響はほ とんど検知されなかった。ネオニコチノイド系農薬に よって生じ得るアリへの影響について理解を深めるた めに、より低い濃度を用いた実験室および野外でのさ らなる研究が必要である。

3.3.3 ミミズのネオニコチノイド系農薬 に対する感受性

Pisa et al. (2015) は、ネオニコチノイド系農薬の ミミズへの影響に関する既存文献をレビューした。

ミミズは昆虫と類似する神経経路を持ち、土壌との直

接接触や、ネオニコチノイド系農薬と結合した有機物 の摂取、汚染された植物体の摂取を通じてネオニコチ ノイド系農薬に曝露する可能性が高い (Wang et al.

2012、セクション2.2.1を参照)。13 件の研究で報告 されたミミズのネオニコチノイドのLC50は1,500

~25,500 ppbまで幅があり、平均値は5,800 ppb、

中央値は 3,700 ppbである(Pisa et al. 2015を参 照)。繁殖への亜致死的影響を測定した入手可能な研 究はさらに少ない。繭産生への負の影響は、ミミズ 種とネオニコチノイドの種類によって 300~7,000 ppb の間と測定された。

野外条件下での現実的なミミズのネオニコチノイド曝 露に関する入手可能なデータはほとんどない。土壌 中のネオニコチノイド濃度は、有機物の組成、施用量 および他の要因によって 2~50 ng/g の幅があると 考えられるが、粉衣処理された種子のすぐ近くでは もっと高い可能性がある(セクション2.2.1を参照)。

Douglas et al. (2015) では、チアメトキサムで処理 されたダイズ畑に生息するミミズからネオニコチノ イド系農薬が検出された。2匹のミミズが、土壌試料 の収集中に偶然採取された。2つの試料には、総濃度 54 ppb および 279 ppbのネオニコチノイド(ミミ ズ1匹当たり約16ngおよび約126 ng に相当)が含 まれていることが分かった。チアメトキサムとその代 謝産物に加え、2匹のミミズ試料には 25 ppbおよび 23 ppb 濃度のイミダクロプリドが含まれていた。こ れらが採取された畑は少なくとも過去1年間は、イミ ダクロプリド処理が行われていなかったため、ネオニ コチノイド系農薬は1年超にわたり土壌に残留する可 能性があるという証拠がさらに追加された(セクショ ン2.2.1を参照)。採取されたのは生きているミミズ のみで、試料サイズが小さかったため、これらが典型 的な濃度を示しているのか、それとも実際よりも低く 評価しているかは明らかではない。例えば、死亡の原 因となる、より高い濃度に曝露されれば、これらのミ ミズを後に試料採取して残留分析をすることはできな い。この領域ではさらなる研究が必要である。

総括すると、これらの研究は、ネオニコチノイド系農 薬の非標的生物への負の影響に関する私たちの理解を 継続して高めている。調査対象とされた分類群の大半 は、ネオニコチノイド系農薬に対する感受性がハチよ りも低く、数桁も低い場合もあった。調査対象生物の 栄養段階は重要であると考えられる。低次栄養段階の 昆虫は食性が絶対的に植食性であるために有害な植物 代謝産物に頻繁に接触するという理由から、ネオニコ チノイド系農薬の解毒によりうまく対応できるからで ある。報告された中で最も顕著な影響があったのは捕 食性昆虫だった。

3.4 水生無脊椎動物のネオニコチ