第3章 砂防施設設計(土石流区間)
2) 開口部の設定
透過型砂防堰堤の開口部の幅、高さ、位置は、土石流や流木を効果的に捕捉できるように設定する。
開口部の幅は、透過型の機能を十分生かせるようにできるだけ広くとる。
開口部の高さは、土石流や洪水の水深以上を確保し計画捕捉量により決定する。
なお、開口部の底面は、未満砂の状態で平常時の流量を下流へスムーズに流し得る形状とする。
3) 透過部断面の設定
透過型砂防堰堤の透過部断面は、土石流の最大礫径、流木の最大直径、および施設の目的等により 決定する。
土石流捕捉のための透過型砂防堰堤は、透過部断面の純間隔(図 3-16 参照)を適切に設定すること により、土石流を捕捉する機能、および、平時の土砂を下流へ流す機能を持たせることができる。した がって、透過部断面の設定は、土石流の流下形態や最大礫径(D95)、流木の最大直径、流域内の既施設 配置状況、堰堤高等に十分留意する必要がある。
水平純間隔は最大礫径(D95)の 1.0 倍程度に設定する。土石流の水深より高い透過型砂防堰堤を計 画する場合、鉛直純間隔も最大礫径(D95)の 1.0 倍程度に設定し、土石流の捕捉を確実にする。最下 段の透過部断面高さは土石流の水深以下程度とすることが基本であるが、土石流の水深よりも最大礫径
(D95)が小さい場合等においては、最下段の透過部断面高さは最大礫径(D95)の1.5倍まで狭くする ことができる。(表 3-8参照)
実験(図 3-17 参照)によると、土砂容積濃度が高い場合においては、水平純間隔及び鉛直純間隔が 最大礫径(D95)の 1.5 倍より小さければ、透過部断面が閉塞することが分かっているため、機能上、
必要な場合、水平純間隔及び鉛直純間隔を1.5倍まで広げることができる。機能上、必要な場合とは、
例えば、流下区間に複数基透過型砂防堰堤を配置する時の上流側の透過型砂防堰堤の水平純間隔及び鉛 直純間隔を広げることにより効果的に土石流に対処できる場合等である。
なお、平時の土砂を下流へ流す機能を持たせた上で、土石流を捕捉する機能として以下の条件の全て を満たす場合には、渓流の状況等に応じて上記以外の方法で透過部断面を設定することができる。
図 3-16 透過部断面の純間隔
表 3-8 透過型砂防堰堤における透過部断面の設定について
機能 水平純間隔 鉛直純間隔 最下段の透過部断面高さ土石流の捕捉 D95×1.0
*1
D95×1.0
*1
土石流の水深以下
*2
*1 上述のとおり、水平純間隔・鉛直純間隔を最大礫径(D95)の1.5倍まで広げることができる。
*2 上述のとおり、最下段透過部断面高さを最大礫径(D95)の1.5倍まで狭くすることができる。
*3 最下段の透過部断面の高さは、最下段以外の透過部断面の鉛直純間隔より小さくならないように 設定する。
(参考)透過部の閉塞(実験結果)
図 3-17 土石流ピーク流砂量の変化
出典:土石流・流木対策設計技術指針及び同解説 p81
(4) 非越流部の安定性及び構造
非越流部の本体の断面は、安定計算により合理的に決定する。
透過型砂防堰堤の非越流部の安定条件及び設計外力の考え方は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
ただし、洪水時には水位差がなく、平常時は堆砂していないため、堰堤高 15m 未満の場合は土石流 時のみ、15m以上の場合は土石流時と平常時に対して安定計算を行う。
(5)
前庭保護工
前庭保護工は、砂防堰堤本体の安定性が維持できるよう現地の地質、地形等を考慮して必要に応じ て計画する。
透過型砂防堰堤の場合には、通常の流水は河床沿いに設置前とほとんど変わらずに流下するものであ り、前庭保護工を必要としないと考えられる場合が多い。
しかし、捕捉された土石流の後続流による洗掘が予想される場合、および透過部下端と河床面との間 に落差を生じる構造などには、不透過型砂防堰堤に準じた前庭保護工を必要とする。減勢工や副堰堤に ついては、その必要性を十分吟味して計画する。
(6) 付属物の設計
透過型砂防堰堤の付属物は必要に応じて設計を行う。
付属物の設計は不透過型砂防堰堤と同様とする。
3-1-4 部分透過型砂防堰堤の構造 (1) 越流部の安定性
部分透過型砂防堰堤は堤体全体が滑動、転倒および支持力に対して安定であるとともに、透過部を はじめ堤体を構成する部材が土石流及び土砂とともに流出する流木に対して安全でなければならな い。
部分透過型砂防堰堤は構造物全体として一体性をもって安定であることが必要である。そのため、透 過型砂防堰堤は設計外力に対して安全な構造を有することが必要である。
1)
安定条件
部分透過型砂防堰堤体全体の安定条件は不透過型砂防堰堤と同様とする。
2) 設計外力
部分透過型砂防堰堤の設計外力は、基本的には、不透過型砂防堰堤と同様とするが、透過部の構造 に応じた設計外力が作用するものとする。
① 安定計算に用いる設計外力の組み合わせは表 3-9のとおりとする。
表 3-9 部分透過型砂防堰堤の安定性に用いる設計外力(自重を除く)
平常時 洪水時 土石流時
堰堤高15m未満 静水圧 静水圧、堆砂圧、
土石流流体力
堰堤高15m以上
静水圧、堆砂圧、
揚圧力、
地震時慣性力、地震時動水圧
静水圧、堆砂圧、
揚圧力
静水圧、堆砂圧、
揚圧力、
土石流流体力
② 安定計算に用いる計算外力は図 3-18に示すように透過部と不透過部に作用させる。
③ 透過部の自重は透過部分に砂礫および水が詰まっていないものとして算出する。なお、洪水時に 透過部を越流する水の自重は静水圧として不透過部に作用させる。
(H<15m、上段:土石流時、下段:洪水時)
図 3-18 部分透過型砂防堰堤 非越流部の設計外力図
3) 設計流量
設計流量は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
4)
設計水深
設計水深は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
(2) 透過部の構造検討
透過部の構造検討は透過型砂防堰堤と同様とする。
(3) 本体構造 1) 水通し断面
水通し断面は、透過型砂防堰堤と同様とする。
2)
開口部の設定
開口部の設定は、透過型砂防堰堤と同様とする。
3) 透過部断面の設定
透過部断面の設定は、透過型砂防堰堤と同様とする。
4) 不透過部の天端幅
不透過部の天端幅は、礫および流木の衝突によって破壊されないよう、決定する。
不透過部の天端幅は、衝突する最大礫径の2倍以上を原則とする。ただし、不透過型砂防堰堤に準じ、
不透過部の安全性を考慮し、不透過部の天端幅は3m以上とする。
5) 下流法勾配
下流法勾配は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
6) 基礎
基礎は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
図 3-19 部分透過型砂防堰堤越流部側面図(例)
(4) 非越流部の安定性及び構造
非越流部の安定性および構造は、透過型砂防堰堤と同様とする。なお、設計外力は部分透過型砂防 堰堤の越流部と同様とする。
(5)
前庭保護工
部分透過型砂防堰堤の前庭保護工は、不透過型砂防堰堤と同様とする。
部分透過型砂防堰堤の前庭保護工の設計において、H1及びh3は、洪水時と土石流時で異なるため、
双方で計算し、比較して安全側となる前庭保護工を採用する。
洪水時 : H1 水叩き工天端から不透過部天端までの高さ
h3 土砂含有を考慮した流量に対する不透過部での越流水深
土石流時: H1 水叩き工天端から透過部天端までの高さ
h3 土石流ピーク流量に対する透過部(水通し断面)での越流水深
図 3-20 部分透過型砂防堰堤の前庭保護工における
H1、h
3(6) 付属物の設計
部分透過型砂防堰堤の付属物は必要に応じて設計を行う。
付属物の設計は不透過型砂防堰堤と同様とする。
3-2 土石流・流木発生抑制工
土石流・流木発生抑制工は、土石流及び土砂とともに流出する流木等の発生を抑えるための土石 流・流木対策施設である。
3-2-1
土石流・流木発生抑制山腹工
土石流・流木発生抑制山腹工は、植生または他の土木構造物によって山腹斜面の安定化を図る工法 である。
土石流・流木発生抑制山腹工には、主として山腹保全工等があり、土石流となる可能性のある山腹崩 壊を防ぐ。
土石流・流木発生抑制山腹工の設計は、「第5章 山腹工」に準じる。
3-2-2 渓床堆積土砂移動防止工
渓床堆積土砂移動防止工は、床固工等によって河床堆積物の移動を防止する工法である。
渓床堆積土砂移動防止工には、主として床固工等があり、河床や渓岸の堆積物の移動を防止する。原 則として床固工の上流側を天端まで埋戻し礫及び流木の衝撃力を直接受けない構造とする。また袖部の 上流側についても土砂を盛る等の処置を行い土石流による破壊をできるだけ避けるものとする。設計外 力については「3-1-2 (1) 2) 設計外力」を参考とし土石流荷重は考慮せず、静水圧のみを対象とす る。
渓床堆積土砂移動防止工としての床固工等の水通し断面は「3-1-2 (2) 1) 水通し断面」によるが、
水通し幅は地形を考慮してできるだけ広くとる。
土石流ピーク流量に対しては、余裕高は原則として考慮しなくてよい。その他の設計は、コンクリー ト製では、不透過型砂防堰堤の構造に準ずる。