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5. 合理的な安全の考え方による社会との対話

5.3 長期的価値の評価

原子力の価値を議論する場合によく取り上げられるのが、地球温暖化の問題とエネルギー資源枯 渇の問題であり、その有効性を理解することが大切である[5-17]。

地球温暖化の問題では、衡平性(Equity)を議論しているが、これは現在生きている我々現世代だ けの課題であり、世代間衡平性すなわち世代間倫理(Inter-Generation Ethics)の議論がこの先の問 題として残っている。いずれにしても、今対策しなければ不可逆的な地球レベルの影響が避けられ ないので、将来世代への責任から世代間倫理の議論として、事前警戒原則(転ばぬ先の杖原則とも 呼ばれ、以前は予防原則と呼ばれていた、Precautionary Principle)に基づく行動あるのみである[5-18]。

中国、インドやブラジルのように途上国といえども大国として、過去の森林伐採による排出責任 の大きさも明らかである。それ以上に、これから排出量が大幅に増加すると考えられる途上国の将 来世代に対する責任の大きさもまた明らかである。

世代間衡平性の議論では、同世代のNIMBY(Not In My Back-Yard)問題と同じで、リスクの受益 者負担原則が成立しないため、リスクベネフィットで何らかの代替ベネフィットを提供するしかな い。NIMBY問題の補償金はあまり有効な政策ではなく、現実的には地域共生の道を探すことになろ う。世代間衡平性では、事前警戒原則に則り、最大限の削減努力を早急に始めることに尽きる。

最低限の要求は将来世代に選択肢を与えられること、もう少し積極性を持つと将来世代に研究開 発能力(知的贈与)とその成果を残しておくこと、さらに言うと社会資本(公共財、きれいな大気 や永続的なエネルギー源)をきちんと残してあげることであろう。

地球温暖化の問題では、現世代がミニマムの成長で我慢し将来世代のために対策費用を捻出する 努力(持続的発展の概念そのもの)をしてきた実績、研究開発により新たな革新技術の芽を提供す ること、原子力や再生可能のような長期のエネルギー源を確保しておくこと、が大切であると考え られる。

気温上昇への歴史的貢献(排出量)で、発展途上国が先進国を責める構図があるが、将来世代へ の衡平性を問えば、少なくとも今後に大幅な排出が予想される新興国の国々(中印など)には大き な責任がかかることを認識する必要がある。将来世代への発展途上国の責任を考慮すると、やはり 先進国からエネルギー環境技術を移転することにより、早急な環境技術の高度化と大幅な環境製品 の普及が必要とされる。

次に資源問題を検討する。図5.9で分かるように、人類の歴史から見て、化石燃料時代とは膨大 なエネルギー密度で資源を消費しつくす儚い瞬間であり、それ以降は核分裂・核融合のエネルギーで 賄うか本質的に新たなエネルギー源を開発しなければ、人類が存在し得ない[5-18]。

図5.9 一瞬の化石燃料時代[5-18]

では、ウラン資源は豊富にあるのかについても検討する。図5.10にCO2濃度が550ppmの場合 の軽水炉によるウラン資源の利用状況を示す[5-19]。ウランは、当初先進国による消費が大であるが、

2020年頃以降になると途上国の消費が急増し、21世紀中にウラン資源が枯渇する結果となった。

濃縮ウランを用い、使用済燃料中のUやPuを再利用しない現行の軽水炉システムでは、確認資源 だけでは需要をまったく満足できない。

図5.10 ウラン資源の利用(CO2制約)[5-19]

21世紀後半に高速増殖炉(FBR、 Fast Breeder Reactor)が軽水炉に取って代わって導入される シミュレーション結果を示すが、軽水炉で使われるウラン235(存在比0.7%)の枯渇のために、そ れに代わり残り99.3%を占めるウラン238から生成されるプルトニウム239を利用するシステムに 変換していくことを示している。増殖炉の意味は、100年しか持たないウラン235の代わりにその 100倍になると予測されるプルトニウム239を利用するからである。これにより、表5.3に示すよ

うに10、000年以上のエネルギー資源を確保できることになり、世代間衡平性の視点から要求され

る長期の地球温暖化とエネルギーセキュリティの問題への抜本的な対策を提供できることになる [5-18]。

表5.3 ウラン鉱石の埋蔵量と燃料サイクル [5-18]

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