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錐体順応量が変化すると考えられる3つの刺激呈示条件による影響 . 33

第 4 章 考察 17

4.5 考察2のまとめ

4.5.2 錐体順応量が変化すると考えられる3つの刺激呈示条件による影響 . 33

4.5 考察2のまとめ

近いため,色恒常性の強さは点の並び (配置)からは必ずしも明確ではない.直線近似の傾 きからは,両眼自由視がもっとも色恒常性が弱く(傾きが1に近い)Haploscopic呈示が最

も強く(傾きが1より離れている)なっている.差が大きくなるのは9300Kの方が青みが強

いからである.シャッター短時間呈示での色恒常性の強さは両者の間になっている.

L-2M錐体応答の場合

L-2M錐体の場合は,グラフを見るとばらつきに差があり,色恒常性の強さは点の配置か らも明らかである.もし 色恒常性の効果が弱い場合には,9300Kでの物理的な錐体刺激量 の点群のように上下に分離する.点配置からは,シャッター短時間呈示において最も色恒常 性の効果がもっとも小さくなっており,Haploscopic呈示,両眼自然視の順に,色恒常性が 強くなっている.

また近似直線の傾きからは,シャッター短時間呈示やHaploscopic呈示の色恒常性が弱く (傾きが1に近い),両眼自然視の色恒常性が強い(傾きが1より離れている (小さい))なっ

ている.またシャッター短時間呈示はおおよそその間になっている.差が小さくなるのは

9300Kの方が赤みが弱いからである

刺激呈示条件と色恒常性の強さ

予想では色恒常性の強さは,

Haploscopic呈示  ⇒  両眼自然視  ⇒  シャッター短時間呈示  と考えられた.

Haploscopic呈示では,右と左の目がそれぞれのディスプレ イの環境に対応することで,錐

体順応が効率よく起こるのではないかと考えたからである.また,両眼自由視,短時間だけ の刺激呈示のために錐体順応が極端に起こりにくいと考えられるので,シャッター短時間呈 示が一番色恒常性が弱くなると考えた.

S錐体応答にあらわれた順応(あるいは色恒常性)の強さは

Haploscopic呈示  ⇒  シャッター短時間呈示  ⇒  両眼自然視  であった.

4.5 考察2のまとめ

(L-2M)錐体応答 にあらわれた順応(あるいは色恒常性)の強さは

両眼自然視  ⇒  Haploscopic呈示  ⇒  シャッター短時間呈示  であった.

実験結果より,錐体順応レベルを変化させた実験条件であっても,色恒常性はあまり変化 しない.さらに,von Kries型順応式から,SL-2M錐体より色恒常性の強さを検証した ところ,色恒常性の強さと錐体順応レベルとは一致しないことが分かった.

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結論

照明空間が与えられず,また錐体順応が起こりやすいと考えられるHaploscopic 呈示や

シャッターにより刺激呈示時間を短縮し ,錐体順応が極端におこりにくいなどの方法を用い た.しかし ,錐体や網膜順応が制御されているような視環境であっても,ある一定レベルの 色恒常性が働いている.これはこのような呈示条件でも色恒常性が生じることを示す.ただ し ,その色恒常性の強さは,Haploscopic呈示条件やシャッター短時間呈示条件のように錐 体順応を( 限定的であるにせよ)制限した場合には弱くなる.さらに,そのときの色恒常性 の効果は単純な錐体順応式であるvon Kries型順応式で表現することができる.

しかし,錐体順応レベルを変化させた実験条件であっても,色恒常性はあまり変化しない.

また,色恒常性の強さは実験条件から考えられる錐体順応レベルとは一致しない.このこと は,錐体や網膜レベルでの順応が制御されるような条件でも色恒常性の効果があり,錐体レ ベルでの順応だけではうまく結果を説明できないことが分かる.

ただし,実験条件によって変化させて錐体順応の強さと色恒常性の強さが一致しないこと から,錐体順応だけで色恒常性が決まっているのではないことが分かる.つまり,色恒常性

がvon Kreis型順応の式で説明されうるという事自体は,必ずしも,色恒常性が錐体や網膜

レベルでの単純な順応効果により生じていることを意味するものではない.このことは,錐 体や網膜レベルでの順応効果ではなく,照明認識視空間などの考えに代表される高次の働き も寄与していると考えられる.

謝辞

研究を進めるあたりご 指導していただきました篠森先生には,学会参加についてや様々な アド バ イスをいただき,大変前向きに取り組むことができました.ありがとうござ いまし た.自分自身も研究をやり遂げたことに驚いています.

また,被験者としてお手伝いしていただいた,水口智映子さん,菱山浩司さん,貴重な時 間を割いていただきありがとうござ いました.感謝の気持ちでいっぱいです.

さらに,初めての日本視覚学会に参加した際には,篠森先生はもちろん,東野康幸さん,

深田良尚さんには,いろいろなアド バイスをいただき,レベルの高い学会でも楽しく乗り切 ることができました.このような学会に参加できたことを誇りに思います.大変貴重な体験 です.

そして,共に研究をしてきた,賀来途直さん,桧垣陽平さん,長い道のりでしたが,お疲 れ様でした.実験の際には,迷惑を掛けることも多々あったとは思いますが,学会などに共 に参加し,協力しあって乗り越えたことは決して忘れません.

一方,福本先生,秋山由佳さんには精神面においてはかなり鍛えられました.ありがとう ございました.前向きに取り組む精神は忘れません.

最後に,感謝してもしきれないほど お世話になりました平山正治さん.大変お忙しい中,

時間を割いていただきました.学会参加の際には,見違えるほどの作品に仕上げることがで きました.論文執筆にあたっても,いろいろなことを教えていただきました.心からお礼を 申し上げます.本当に本当にありがとうございました.

参考文献

1] 色の見えにおけるCRTデ ィスプレ イの色温度やカラーバランスの影響,清水泰智・篠 森敬三,日本視覚学会誌VISION],Vol.14,No.1,pp.44,2002

2] 色恒常性の神経計算理論,栗木一郎,光学28巻5号(1999)pp.232 241 3] 日本情報処理ハンドブック,日本視覚学会編,栗木一郎

4] 日本情報処理ハンドブック,日本視覚学会編,矢口博久

付録

A

色覚検査について

A.1

色覚検査表

色覚検査表は,色覚異常者にとって混同されやすい色が使用されている.検査表の目的 は,正常と異常をふるい分けることであるため,検査表による程度の判定は参考程度に捉え なければならない.本稿では色覚検査表に石原式 Plateとパネル D-15 テストを用いたが,

国内で用いられる色覚検査表は他にも大熊表や標準色覚検査表がある.いずれの検査表も

100%の検出は不可能である.また,色弱,色盲,全盲の診断は検査表では不可能であるこ とに注意しなければならない.

A.2

パネル

D-15

テスト

先天色覚異常の程度を軽度と強度の2群に区分することを目的とした検査器である.1

の基準色相 (reference cap) と,全色相から抽出された 15 個の検査色から構成されている.

検査色の裏側には色相順に 1から 15 までの番号が記されている.

検査は,全検査色を順不同に呈示し ,基準の色相に類似の色から色相順に並べさせる.検 査の結果は,検査用色相の裏側に示された番号を記録用紙に記載し,円形の色相環として示 された色相番号を示す点を配列番号順に結ぶ.得られたパターンにより,色覚異常のタイプ が判定される.

色覚検査表およびパネル D-15 テストともに,色票を用いたテストのため,使用する際に は十分に気を配る必要がある.テストの際,色票部分に直接手を触れないように気をつけ,

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