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金属錯体の電子移動触媒作用  3.3.1  SOD  モデル

ZnP + -NIm Š /Sc 3+

3.3   金属錯体の電子移動触媒作用  3.3.1  SOD  モデル

  上記のように酸素分子の活性化にはO

2•–

金属錯体の形成が重要な役割を果たし ている。生体内では、危険なO

2•–

はスーパーオキシド不均一化酵素(SOD)により消 去される。 SODでは複核錯体によってO

2•–

の電子移動反応が制御されている。こ のSOD作用機構を解明するため、Cu,Zn-SODと同じくイミダゾレート架橋し、か つ 配 位サ イト を 有す るス ー パー オキ シ ド不 均一 化 酵素 (SOD) の モデル 錯 体 [CuZn(bdpi)(CH

3

CN)

2

](ClO

4

)

3

・ 2CH

3

CN,  (Hbdpi  =  4,5-bis{di(2-pyridyl-methyl)aminomethyl}imidazole)を合成した(図 23) 。こ のモデル錯体はこれまで報告されたものの中で最高のSOD活性を示した。SOD触 媒機構ではO

2•–

の 

 

   

図 23.SOD活性中心構造と世界最高活性を有するSODモデル錯体のX線構造。 

 

酸化と還元の両方をいかに活性化できるかが不明であったが、SOD触媒サイクル 

(スキーム 15)において、Zn(II)イオンはCu(II)イオンの還元電位を正側にシ フトさせることによりO

2•–

の酸化を活性化し、一方O

2•–

と錯体を形成することによ り、O

2•–

の還元を活性化することがわかった。このようにSOD触媒サイクルに   

Cu(II)-Zn(II)

Cu(I)-Zn(II) Cu(I)-Zn(II)

O2•–

O2•–

O2

O2•–

H2O2

2H+

   

スキーム 15   

おける Zn(II)イオンの役割を解明することができた。このような複核錯体は生 体内の種々の酸化還元反応の活性中心として重要な働きをしている。 

3.3.2  NADH 補酵素の電子移動反応制御 

  金属イオンは生体内の酸化還元系補酵素の酸化還元反応の活性化にも重要な

役割を果たしている。特にジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド 

(NADH) は、生体内の電子伝達を司る重要な補酵素で、アルコール脱水素酵素で

ル化合物からキノン類へのヒドリド移動反応は電子移動、プロトン移動、 電子 移動を経て進行することがわかっている。 NADHモデル化合物として 1-ベンジル -4- t -ブチル-1,4-ジヒドロニコチンアミド ( t -BuBNAH) を用いると、 p -ベンゾ キノン (Q) との反応は全く進行しないが、Sc(OTf)

3

を添加すると、  t -BuBNAH とQとの[2+3]環化付加体 (1) が定量的に得られることがわかった(図 24,  JACS ,  2001,  123 , 11331) 。Sc

3+

以外の金属イオンを用いた場合の生成物は環化付加体   

N2 O1

N1 O2

O3

   

図 24.  t -BuBNAH と p -ベンゾキノン (Q) との[2+3]環化付加体 (1)のX線構造。 

 

だけではなく、BNA

+

および t -BuBNA

+

が生成する。Qへの電子移動反応における金 属イオンの触媒作用との比較から、この環化付加反応では t -BuBNAHからQへの電 子移動を経て進行しすることがわかった。金属イオンは、生成したセミキノン ラジカルアニオンと 1:1 および 1:2 錯体を形成して安定化することで、電子移 動反応を活性化する。このことはESRにより確認できた。ルイス酸性の強いSc

3+

を 用いた場合には、これらがラジカルカップリングし、C-O結合を形成することで 環化付加反応が進行する。一方、ルイス酸性の弱い金属イオンを用いた場合に は、この錯体の塩基性は強まり、 t -BuBNAH

・+

からH

+

が移動し、BNA

+

が生成する反 応が同時に進行する(スキーム 16) 。 

  このように金属イオンは電子移動過程を制御できるだけでなく、後続の反応

過程も制御できることがわかった。また、 p -ベンゾキノン類とアントラセン類

とのDiels-Alder 反応、NADH類縁体とのヒドリド移動反応も金属イオン触媒電

子移動過程を経て進行することがわかった( JACS , 2002,  114 , 14147) 。さらに

Sc

3+

を用いると比較的弱い電子受容体である p -ベンゾキノン類によりフラーレ

ンおよびその誘導体を光電子移動酸化することが可能となり、 種々のフラーレ 

N CH2Ph H H

CONH2 O

O

N CH2Ph H H

CONH2

N CH2Ph H H

CONH2 O

O H

N C H H

CONH2

Ph H H O HO

H

H O––Mn+

O•–Mn+

Mn+

Mn+

Mn+

N CH2Ph H H

CONH2 O

O H Mn+ Mn+

Mn+

OH

Mn+ OH H+ Mn+

+

(a)

Electron Transfer

(b)

BNA+ + BNA QH–Mn+

BNAH•+ Q•––2Mn+

   

スキーム 16   

ン 類 の ラ ジ カ ル カ チ オ ン 種 の 生 成 、 検 出 す る こ と が で き た ( JACS ,  2001,  123 ,12458) 。   

  NADH モデル化合物のラジカルカチオンについては、初めて ESR で直接検出す ることに成功した(図 25,  JACS , 2002,  124 , 14538) 。NADH のラジカルカチオ ンについてはケト・エノールの平衡があり、どちらが安定であるかについて議 論があった。しかし、NADH ラジカルカチオンの ESR スペクトルが観測できたの で、その超微細構造と同位体を用いた解析からエノール型ではなくケト型であ ることを明らかにして永年の論争に決着をつけた。 

 

N H H

NH2 O

N NH2 HO H tautomerization

CH2Ph

CH2Phketo form enol form

N CH2Ph

NH2

O H

H H

H H

40 G g = 2.0031

∆Hmsl = 1.8 G

1 2

5 6

a (H5) = 7.6 G a (H2) = 1.0 G

a (N1) = 8.0 G a (H6) = 1.8 G

a (CH a (H4) = 53.0 G

2Ph) = 7.4 G 4

N CH2Ph

NH2

O H

H H

D D

∆Hmsl = 1.8 G 40 G g = 2.0031

1 2

5 6

a (D4) = 8.1 G a (H5) = 7.6 G a (H2) = 1.0 G

a (N1) = 8.0 G a (H6) = 1.8 G

a (CH2Ph) = 7.4 G 4

   

図 25.NADH モデル化合物(BNAH)ラジカルカチオンのスペクトル。 

 

  一方、NADHモデル化合物(BNAH)のRu(bpy)

33+

による電子移動酸化に伴い、

の詳しい速度論解析により、化学発光過程の全容を明らかにした(スキーム 17,  JACS , 2003,  125 , 4808) 。BNAHの一電子酸化で生成するBNAH

•+

からの脱プロト   

N

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