次に補遺に回すとしていた,重複対数の法則の証明について述べる.まずは上からの評価である.ただし,
表記を簡単にするためにη, µ1等といった記号は省いて書いてあることに注意する.
命題12.5 (命題10.1). ある正の定数C12が存在して,ψ(n) :=nν(log logn)1−νとするとき,
lim sup
n→∞
|X(n)|
ψ(n) ≤C12, P−a.s.
が成り立つ.
証明. µˆN をPの下でのλ−NT0,1ex,N(X)の分布とする.つまり,µˆN :=P◦(λ−NT0,1ex,N(X))−1と定義する.
また,x >1に対して,3N ≤x≤3N+1を満たすようなN ∈Nを固定する.このとき,k >0を3−Nk≥C5
を満たすようにとると,
( 3(1ν−1)
)N( 3 x
)1/ν
k= (
3(1ν−1) )N(
1 3N
)1/ν
k= (
3(ν1−1) )N(
1 3N
)1ν−1
3−Nk
= 3−Nk≥C5
であるから,命題7.3と命題7.4(2)から,
P( max
0≤j≤k|X(j)|> x)≤P(T0,1ex,N(X)≤k)
= ˆµN([0, λ−Nk])
≤C6e−C7(xk−ν/3)1/(1−ν)
となる.ここでγ >1, A >0とする.任意のm∈Nに対してx=Aψ(γm)とし,k∈Z+をk≤γm+1とな るようにとる.このとき,mを十分大きくとればkも大きくなるので,3−Nk≥C5が成り立つ.したがって k−ν ≥γ−mνγν に注意すると,
P( max
0≤j≤γm+1|X(j)|> Aψ(γm))≤C6exp(−C7(Aψ(γm)k−ν/3)1/(1−ν))
≤C6exp(−C7A1−ν1 γ1−ν−ν 31−ν−1 log logγm)
=C6exp(log(logγm)−C7A
1−ν1 γ1−ν−ν 31−ν−1
)
=C6(logγm)−C7A
1−ν1 γ1−ν−ν31−ν−1
=C6 ( 1
mlogγ )C7A
1−ν1 γ1−ν−ν 31−ν−1
= c1
mα となる.ここで,α=C7
( A 3γν
)1/(1−ν)
とおき,c1=C6(logγ)−αがmに依らない正の定数であることに注 意する.したがって,ある正の定数c2があって,
∑∞ m=1
P( max
γm<j≤γm+1|X(j)|> Aψ(γm))≤ ∑∞
m=1
P( max
0≤j≤γm+1|X(j)|> Aψ(γm))
≤c2+c1
∑∞ m=1
1 mα であるからα >1となるようにAを十分大きくとれば,∑∞
m=1 1
mα は収束するのでボレル・カンテリの定理 より,C12=Aとして重複対数の上からの評価が成り立つ.
以下では,重複対数の下からの評価について論じる.上からの評価では本質的にタウバー型定理から由来す る確率測度の評価が証明の鍵となっていたが,以下の議論もそれを用いて示していく.ただし上からの評価の ように直接使えば直ちに結果が得られるわけではなく,いくつかの補題の準備が要る.以下ではまず,その補 題たちから論じてゆく.
補題12.6 (命題10.2を証明しやすくした形). もし,ある正の定数cが存在して,
P(
∩∞ N=1
∪∞ M=N
{(logM)(1−ν)/νλ−MT0,1ex,M(X)≤c}) = 1
が成り立つならば
lim sup
n→∞
|X(n)|
ψ(n) ≥c−ν P−a.s.
が成り立つ.
証明. 補題の仮定の部分から,ほとんどいたるところのω ∈ Ωに対して,ある増加列Mk′ =Mk′(ω), k = 1,2, . . . を
(logMk′)(1−ν)/νλ−Mk′T0,1ex,Mk′(X)≤c
となるようにとることができる.この式ををまずλMk′ について整理し両辺の対数をとることによって,
Mk′ ≥3に対して,
Mk′ ≥logT0,1ex,Mk′(X)−logc
logλ +
1−ν
ν log logMk′ logλ
≥logT0,1ex,Mk′(X)−logc logλ
を得る.また,任意のε > 0 に対して,f(x) = x−loglogλc −x1−εとおくと,十分大きいx > 0 に対して f′(x) = log1λ−(1−εx1ε)を正にすることができるので,十分大きいx >0に対してf(x)>0とすることが できる.したがって,あるk0∈Nが存在して,k≥k0なる任意のkに対して,
(logT0,1ex,Mk′(X))1−ε≤ logT0,1ex,Mk′(X)−logc logλ ≤Mk′ であるからlogをとれば,
(1−ε) log logT0,1ex,Mk′(X)≤logMk′
を得る.一方で,(logMk′)(1−ν)/νλ−Mk′T0,1ex,Mk′(X)≤cの両辺をν乗し,λν = 3に注意すれば,
|X(T0,1ex,Mk′(X))|= 3Mk′ ≥c−ν(logMk′)1−ν(T0,1ex,Mk′(X))ν を得る.以上のことを合わせれば,
|X(T0,1ex,Mk′(X))|
(T0,1ex,Mk′(X))ν(log logT0,1ex,Mk′(X))1−ν ≥c−ν(1−ε)1−ν を得る.したがって,
lim sup
n→∞
|X(n)|
ψ(n) ≥c−ν(1−ε)1−ν であるから,εの任意性から補題の主張を得る.
今示したことから,補題12.6の仮定が成り立つことを調べれば,重複対数の法則の下からの評価が示され たことになる.したがって以下では,補題をいくつか示したのち,補題12.6の仮定が成り立つことを調べ る.以下では表記を簡単にするために,T0,1ex,M をTM と略記する.命題7.2(2)より,GrN(−1)はgr(−1)に r= 1,2, N → ∞で収束するから,ある正の定数Dがあって,r= 1,2, N ∈Nで,GrN(−1)≤Dとするこ とができる.このこととチェビシェフの不等式から
PˆN0,(j)(TN(w)≥t)≤De−λ−Nt, N ∈N, j = 1,2,3,4
が成り立つ.特に,
PˆNmax(A) := max
j=1,2,3,4
PˆN0,(j)(A), A⊂Γ0N と定義すれば,
PˆNmax(TN(w)≥t)≤De−λ−Nt (c) を得る.また命題7.3と命題7.4(1)からある正の定数Cが存在して,任意のb >0とj = 1,2,3,4に対して αN =b(logN)−(1−ν)/νとおくと
lim inf
N→∞ αν/(1N −ν)log ˆPN0,(j)(TN(w)≤λNαN)≥ −C が成り立つ.すなわち,あるN′∈Nから先の無限個のN > N′, N∈Nに関して
inf
N <k{αν/(1k −ν)log ˆPk0,(j)(Tk(w)≤λkαk)} ≥ −C
であるから,任意のC0> Cに対してあるN0∈Nが存在して,N0≤Nなる任意のN∈Nに対して PˆN0,(j)(TN(w)≤bλN(logN)−(1−ν)/ν)≥N−C0b−ν/(1−ν)
が成り立つ.特に
PˆNmin(A) := min
j=1,2,3,4
PˆN0,(j)(A), A⊂Γ0N と定義すれば,
PˆNmin(TN(w)≤bλN(logN)−(1−ν)/ν)≥N−C0b−ν/(1−ν), N ≥N0 (d) が成り立つ.ここで導かれた,式cと式d は以下で示す補題を示す中で役に立つ.また以下の補題では,
tn := 2C0(1−ν)/νλn(logn)−(1−ν)/ν,[·]をガウス記号,η:= log1λlog 2
C(10−ν)/ν とするとき,
Mn:=
[ 1 logλ
(
1 + 2(1−ν) ν
)
(n+ 1) log log(n+ 1) + (η+ 1)n ]
と定義する.この準備の下,補題12.6の仮定が成り立つことを調べるための補題を準備する.
補題12.7.
∑∞ n=1
P(TMn−1(X)>1
2tMn)<∞ 証明. Mnの定義から,n≥2に対して
Mn−Mn−1≥ 1 logλ
(
1 + 2(1−ν) ν
)
log logn+η である.したがって,
λ−Mn−1tMn/2 =C0(1−ν)/νλMn−Mn−1(logMn)−(1−ν)/ν ≥2 logn
((logn)2 logMn
)(1−ν)/ν
が成り立つ.したがって,Mn=O(nlog logn)であるから十分大きいnに対して,λ−Mn−1tMn/2≥2 logn が成り立つ.このことと式cを合わせると,
P(TMn−1(X)>1
2tMn)≤PˆMmaxn
−1(TMn−1(X)> 1
2tMn)≤De−λ−Mn−1tMn/2≤De−2 logn= D n2 が成り立つので∑∞
n=1P(TMn−1(X)> 12tMn)は収束する.
補題12.8.
∑∞ n=1
PˆMmin
n (TMn(w)−TMn−1(w)≤1
2tMn) =∞ 証明. 式dにおいて,b=C0(1−ν)/ν とおくとMnの定義からn0を十分大きくとれば
∑∞ n=1
PˆMmin
n (TMn(w)−TMn−1(w)≤ 1 2tMn)≥
∑∞ n=1
PˆMmin
n (TMn(w)≤ 1 2tMn)≥
∑∞ n=n0
1 Mn
≥ 1
η+ 2 +log1λ(1 + 21−νν)
∑∞ n=n0+1
1
nlog logn=∞ である.ただし1つ目の不等号は集合の包含関係に依る.
これで準備が整ったので,補題12.6の仮定が成り立つことを調べて行く.
P(
∩∞ N=1
∪∞ M=N
{(logM)(1−ν)/νλ−MT0,1ex,M(X)≤2C0(1−ν)/ν}) =P(
k=1∩
∞
∪∞ l=k
{TMl(X)≤tMl}) であるから,k < Kとなる任意のk, K∈Nに対して,
P(
∪K l=k
{TMl(X)≤tMl})≥P(
∪K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)≤ 1
2tMl, TMl−1(X)≤ 1 2tMl})
= 1−P(
∩K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)> 1
2tMl} ∪ {TMl−1(X)> 1 2tMl})
≥1−P(
∩K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)> 1
2tMl})−
∑K l=k
P(TMl−1(X)>1
2tMl) (e)
が成り立つことに注意し,まず,
P(
∩K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)>1
2tMl})→0, K→ ∞ が成り立つことを調べる.Pの構成やP˜N の定義を思い出せば,
P(
∩K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)>1
2tMl}) = ˜PMK(
∩K l=k
{TMl(w)−TMl−1(w)>1 2tMl})
=PMrwK(
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl})
= 491 1248(PM0,(1)
K +0,(2)M
K)(
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl}) + 133
1248(PM0,(3)
K +0,(4)M
K )(
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl}) であることに注意する.Mnはnについて単調増加であることに注意すると,Mk < MKであり,
PM0,(1)
K (
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl})
= ∑
w′∈Γ0
MK−Mk
PM0,(1)
K (
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1
2tMl}|3−MkQˆMk(w) =w′)
×PM0,(1)
K (3−MkQˆMk(w) =w′)
= ∑
w′∈Γ0MK−Mk
PM0,(1)
K (TMk(Lw)−TMk−1(Lw)> 1
2tMk|3−MkQˆMk(w) =w′)
×PM0,(1)
K (
∩K l=k+1
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1
2tMl}|3−MkQˆMk(w) =w′)PM0,(1)
K (3−MkQˆMk(w) =w′)
= ∑
w′∈Γ0
MK−Mk
PˆM0,r(Mk)
k (TMk(w)−TMk−1(w)> 1 2tMk)
×PM0,(1)
K (
∩K l=k+1
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1
2tMl}|3−MkQˆMk(w) =w′)PM0,(1)
K (3−MkQˆMk(w) =w′)
≤PˆMmax
k (TMk(w)−TMk−1(w)>1 2tMk)
× ∑
w′∈Γ0
MK−Mk
PM0,(1)
K (
∩K l=k+1
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)>1
2tMl}|3−MkQˆMk(w) =w′)PM0,(1)
K (3−MkQˆMk(w) =w′)
≤PˆMmaxk (TMk(w)−TMk−1(w)>1
2tMk)PM0,(1)
K (
∩K l=k+1
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)>1 2tMl})
である.ただし2つ目の等号は命題6.11より,3つ目の等号は命題6.17の証明内でのQˆN に関する注意と,
命題6.13より従う.j= 2,3,4に関しても同様にして,
PMrw
K(
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)>1 2tMl})
≤PˆMmax
k (TMk(w)−TMk−1(w)> 1
2tMk)PMrw
K(
∩K l=k+1
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl})
となるから,これを繰り返せば,補題12.8より P(
∩K l=k
{TMl(X)−TMl−1(X)>1
2tMl}) =PMrw
K(
∩K l=k
{TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl})
≤
∏K l=k
PˆMmax
l (TMl(Lw)−TMl−1(Lw)>1 2tMl)
=
∏K l=k
(1−PˆMminl (TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl))
≤exp(−
∑K l=k
PˆMminl (TMl(Lw)−TMl−1(Lw)> 1 2tMl))
→0 (K→ ∞) が成り立つ.また,補題12.7より∑K
l=kP(TMl−1(X)>12tMl)においてまずK→ ∞してからk→ ∞する ことにより,
∑K l=k
P(TMl−1(X)>1
2tMl)→0 を得るので,式(e)の最右辺は1に収束する.したがって,
P(
∩∞ N=1
∪∞ M=N
{(logM)(1−ν)/νλ−MT0,1ex,M(X)≤2C0(1−ν)/ν}) =P(
k=1∩
∞
∪∞ l=k
{TMl(X)≤tMl})
= lim
k→∞ lim
K→∞P(
∪K l=k
{TMl(X)≤tMl}) = 1
を得るので,補題12.6の仮定が成り立つ.つまり命題10.2を得る.