された第 1 章の第 7 節において, 「微分 (differential) 」 が最初に登場する.
D.1 重心質量中心セントロイド
D.11 重心の決定
任意の形状の3次元的物体をとる.重力が同一方向に一様な力の場であ
る場合に,この物体の重心を決定することを考えてみよう
([81, PP 237$-238)$.
25[原文] provided that the limits ofintegration areproperly evaluated each time.
任意の物体の重心の位置を数学的に決定するために,モー メントの原理26を平行な重力系27に適用する.合力としての重 力 $W$の任意の軸に関するモーメントは,この物体の無限小の 要素 (in丘nitesimal element) として扱われるすべての質点 (all
particles) に作用する重力$dW$
の,同じ軸に関するモーメント
の和に等しい.すべての要素に作用する重力の合力は,この 物体の重量 (weight)
であり,和
$W=\int dW$ によって与えられる.ここで,モーメント法則を,
$y$軸,例えばだが,に関して 適用してみると,この軸に関する要素重量
(elemental weight)のモーメントは $xdW$であり,物体のすべての要素に対するこ うしたモーメントの和$F$は $W= \int xdW$
となる.このモーメン
ト和は,和のモーメント $W\overline{x}$ に等しくなければならない28. こ
うして,
$\overline{x}W=\int xdW$ が得られた.他の二つの成分についても同様の表式が得られるから,次 のように重心$G$ の座標を表すことができる.
$\overline{x}=\frac{\int xdW}{W}$ $\overline{y}=\frac{\int ydW}{W}$ $\overline{z}=\frac{\int zdW}{W}$
$(5/1a)$
三番目の等式に現われる重力の物理的なモーメントが見え るようにするためには,物体の向きを変えて $z$ 軸が水平にな るように置くとよいだろう.本質的なことは,各々の表示式 の分子がモーメントの和を表す一方で,$W$ と $G$ の対応する座 標を掛け合わせたものが和のモーメントを表していることを 認識することである.このモーメント原理は,力学の全体を 通じて繰り返し用いられることがわかるだろう.
26Principle of Moments. 物体に複数 (有限個) の力が作用しているとき,物体を構 成している部分のモーメントの和が,力の和 (合力) のモーメントに等しいという原理.
第2章で導出されている.
27鉛直方向が $z$軸方向であるとする.
$28_{\overline{X}}$は,重心の $x$座標.
D12 質量中心
一様性の条件の下で,重心の位置は重力に無関係となる.この点は,物
体の質量分布だけで決まることから, 「質量中心
(center ofmass)」 と呼ばれる.
考えている物体の密度 (density)[単位体積あたりの質量.座標の関数
として表示される] を $p$
とすると,質量中心の表示式は,重心の公式を書 き直して,次のようになる.ただし,
$dV$は,体積の微分要素である
([8],p.239).
$\overline{x}=\frac{\int x\rho dV}{\int\rho dV},\overline{y}=\frac{\int y\rho dV}{\int\rho dV},\overline{z}=\frac{\int z\rho dV}{\int\rho dV}$ (5/3)
D.1.3 セントロイド
質量中心の公式 (5/3)
において,密度
$\rho$が一様であれば,
$\rho$ の寄与は分母と分子で打ち消しあう.こうして得られた表示式は,純粋に物体の 幾何学的な性質を表現することになる.このように,計算が幾何学的な 形状のみに関係するという意味をこめて,得られた点を「セントロイド (centroid)」 と呼ぶ.
セントロイドの計算は,物体の形状を線状,面状,立体状にモデル化
することに拠って,三つの異なるカテゴリーに分かれることになる
([8],pp..240-241).
(1) 曲線
長さが $L$
である曲線分を,断面積
$A$ と密度$\rho$ が一様な針金だと考えれ ば,セントロイド $C$の座標は,線要素$dL$ を用いて,次のように書ける.$\overline{x}=\frac{\int xdL}{L},\overline{y}=\frac{\int ydL}{L},\overline{z}=\frac{\int zdL}{L}$
(5/4)
(2) 曲面
同様にして,面積$A$の曲面分のセントロイド $C$ の座標は,面積要素$dA$
を用いて,次のように書ける.
$\overline{x}=\frac{\int xdA}{A},\overline{y}=\frac{\int ydA}{A},\overline{z}=\frac{\int zdA}{A}$
(5/5)
(3) 立体
体積 $V$の立体のセントロイド $C$ の座標も,同様に考えれば,体積要素
$dV$ を用いて次のように書ける.
$\overline{x}=\frac{\int xdV}{V},\overline{y}=\frac{\int ydV}{V},\overline{z}=\frac{\int zdV}{V}$
(5/6)
なお,以上の諸々の表示式において,積分記号
$\int$の役割は,連続的な
分布における「和の記法」としてのものであることに注意しておこう.