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避難所の開設・運営やそれに伴う事前準備などについて、現行の地域防災計画に基づき対応 ができたのか、問題点はどうだったのか検証を行った。

⑴ 当時の状況 基本情報

指定避難所数 229施設

開設避難所数(最大) 73施設(地域開設含む)

避難者数(最大) 1,601名

市の体制

従事人数 2名/各避難所

開設の流れ(例) 自宅⇒本庁⇒各避難所 従事時間(1 人/時間) 約8時間

運営概要 避難者名簿作成、本部へ定時報告、非常

食の配布等

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【避難者数及び避難所の推移】

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⑵ 現行の各種計画の記載状況

現行の地域防災計画において、避難所の開設・運営やそれに伴う事前準備などに関する記 載は、次のとおりである。

【事前準備等】 P.40~42

・ 市は、避難所の開設及び運営について、あらかじめ計画を策定しておくものとする。また、マニュアルの作成、訓練等を通じて、避難所 の運営管理のために必要な知識等の普及に努めるものとする。この際、住民等への普及に当たっては、住民等が主体的に避難所を運営でき るように配慮するよう努めるものとする。

・ 市は、指定管理施設が避難所となっている場合には、指定管理者との間で事前に避難所運営に関する役割分担等を定めるよう努めるもの とする。

・ 災害発生時には、放浪・逸走動物(特定動物を含む)や負傷動物が多数生じると同時に、多くの動物が飼主とともに避難所等に避難して くることが予想される。市は、動物愛護管理の観点から、これらの動物の保護や適正な飼養に関し、関係機関と連携を図りながら、犬や特 定動物による人への危害防止や被災動物の保護・受入れ等に係る体制の整備に努める。また、飼い主に対して、所有者明示の実施や避難所 での飼養について、ゲージの準備等の周知を図るものとする。

【避難所の開設】 P.127

・ 市は、災害により被害を受けた者又は受けるおそれのある者で避難を必要とする者を、一時的に入所させ保護することを目的に避難所を 開設する責務を有する。災害救助法が適用され、知事が実施を指示した場合、市長は設置義務者として(災害救助法第 13 条及び災害救助 法施行令第 17 条による)、災害が発生した日から7日以内(特に必要な場合は延長を行う。)の間、避難所を開設して救助に当たる。

・ 避難所としては、学校、生涯学習センター、地域センター、集会所等が適当とされるが、これらの土地、建物の所有者と事前に協議し、

避難予定場所の所在地、名称、概況、受入れ可能人員等その実態を把握するとともに、関係者に周知させる。

・ 福祉避難所は、施設がバリアフリー化されているなど、一般の避難所では生活することが困難な障害者等の要配慮者のために特別の配慮 がなされた条件で指定した避難所のことである。社会福祉施設等の既存施設を利用するのが適当である。また、市は、福祉避難所として利 用可能な施設に関する情報を収集し、施設管理者と十分調整し、協力を得られる施設を選定し、福祉避難所として指定する。

【避難所の運営】 P.127~128

・ 情報伝達手段を確保し、避難住民に対して正確な情報及び指示を与えるとともに、避難者数の確認、避難者名簿の作成等により避難所及 び避難者の状況を把握し、関係防災機関へ連絡する。

・ 避難所の衛生管理に努め、救護所の設置等必要な医療体制を確保するとともに、特に避難が長期化するおそれのある場合等は、避難者の プライバシー確保に配慮する等良好な生活環境を維持するよう注意を払う。

・ 避難所における食料、飲料水及び生活必需品等の必要量を把握し、効率的に配給する。

・ 高齢者、障害者等要配慮者の避難所での健康状態の把握に努める。

・ 要配慮者用の窓口を設置し、ニーズを把握し支援を行う。

また、心身双方の健康状態には特段の配慮を行い、福祉避難所への避難や必要に応じ福祉施設等への入所、介護職員等の派遣、車椅子 等の手配等を福祉事業者、ボランティア団体等の協力を得つつ、計画的に実施するものとする。

・ 避難所の運営における女性の参画を推進するとともに、女性専用のトイレ、物干し場、更衣室、授乳室の設置や生理用品、女性用下着の 女性による配布、避難所における安全性の確保など、女性や子育て家庭のニーズに配慮した避難所の運営に努めるものとする。

・ やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に対しても、食料等物資の提供、保健師等による健康相談の実施及び正 確な情報の伝達等に努めるものとする。

・ 必要に応じて、避難所における家庭動物のためのスペースの確保に努めるものとする。

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⑶ 課題

上記「⑴ 当時の状況」において、地域防災計画どおり行えたのか、実際の活動ではどう だったのかなどの課題について、次のとおりである。

ア 地域防災計画の課題 【事前準備等】

○ 自主防災組織や住民自治協議会などで運営するための避難所開設・運営マニュア ルがなかった。

○ 家庭動物の受入れ体制の整備ができていなかった。

【避難所の運営】

○ 家庭動物の受入れ体制の整備ができていなかったため、一部の施設において、受 け入れることができなかった。

イ 活動の課題 【事前準備等】

○ 福祉避難所の設置・運営マニュアルの整備ができていなかった。

○ 家庭動物の受入れ体制ができていなかった。

【避難所の開設】

○ 職員が開設する避難所へ向かうのに、交通状況により時間がかかったり、到着で きなかった。

【避難所の運営】

○ 避難者の出入りが多く、避難者名簿を作成していても、個人の特定に苦慮した。

○ 今回のように、一度に多くの避難所を開設した場合、集中備蓄では道路の寸断な どがあり、すべての方へ備蓄品を配ることは困難であった。

○ 今回のように、一度に多くの避難所を開設し、また長期化した場合には、市職員 で全ての避難所運営業務を行うこととなり、多くの職員が避難所へ従事すること で、他の災害対応業務に従事できない事象が生じた。

○ 様々な報道機関や国県などによる調査が避難所へ来て、取材等することで、プラ イバシーの確保などが難しく避難者が疲弊していた。

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⑷ 対応方針

「⑶ 課題」の対応方針は次のとおりである。

ア 地域防災計画の対応方針 【事前準備等】

○ 避難所の開設・運営マニュアルを自主防災組織や住民自治協議会などでも使用 できるものを作成する。

○ 避難所の動物受入れ可否の検証、受け入れる場合の対応はどうするのかなどの 体制整備を行うと共に、飼い主に対して、事前準備をしてもらうよう周知する必 要がある。

【避難所の運営】

○ 避難所の動物受入れ可否の検証、受け入れる場合の対応はどうするのかなどの 体制整備を行う必要がある。

イ 活動の対応方針 【事前準備等】

○ 福祉避難所の設置・運営マニュアルを作成する必要がある。

○ 避難所の動物受入れ可否の検証、受け入れる場合の対応はどうするのかなどの 体制整備を行う必要がある。

【避難所の開設】

○ 市職員が道路状況で避難所に行けない場合など、開設に時間を要する事象が生 じるため、迅速な開設に向け、自主防災組織や住民自治協議会などで協力し、開 設してもらうよう啓発する必要がある。

【避難所の運営】

○ 避難所内でエリアを区切り班長を決めるなど、避難者の把握方法について検討 する必要がある。

○ 各家庭での備蓄を啓発する必要がある。また、備蓄品を配布する基準を決める などの検討が必要である。

○ 災害対応になると、公助には限界があり、自主防災組織や住民自治協議会など で行えるところは行ってもらい、公助でしかできないところに注力することが、

早期復旧には必要なので、そのことを周知し、理解してもらうことが必要である。

○ 避難所での報道対応等について、避難所の開設・運営マニュアルで整備する必 要がある。

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⑸ 検証結果及び提言

⑴当時の状況、⑵現行の各種計画の記載状況、⑶課題及び⑷対応方針について検証した結 果、各種計画及び活動の課題では、家庭動物の受入れ体制の未整備や集中備蓄などが挙げら れ、その課題に対して、事前周知や家庭内備蓄などが挙げられており、対応方針は概ね妥当 であると考える。

避難所開設・運営には自主防災組織や住民自治協議会などの協力が必要不可欠であり、ま た、開設・運営のためのマニュアル整備も必要である。さらには、地域住民と協力していく ためは、避難所に携わる職員のスキルアップが重要である。以上のことから、次のとおり提 言する。

避難所開設・運営マニュアルの整備活用 多くの避難所を開設・運営をしていくためには、自主防災組織や住民自治協議会など との協力が必要不可欠である。自主防災組織や住民自治協議会などで開設・運営してい くためには、基本的な事項をまとめたマニュアルがあれば、スムーズな活動が行えると 考える。

そのため、まずは市でマニュアル整備を行い、つぎに自主防災組織や住民自治協議会 などでこのマニュアルを基に、地域毎の事情に合わせて、見直していくことで、よりス ムーズな活動が行えるものと考える。

自主防災組織や住民自治協議会などとの協力体制の推進 過去の災害においても、避難所の開設・運営に関して、地域住民が主体的に行うこと で、避難所内で地域コミュニティが形成され、スムーズな運営が行われている事例もあ り、地域住民で行ったからこそ成しえた結果だと考える。

しかしながら、地域住民も被災者であり、避難所運営が長期する場合も考えられる。

こうした中、市として、どのように支援していくのか検討するとともに、顔の見える 関係の構築を図るべきである。

職員向けの訓練実施 今回の豪雨災害では、多くの避難所を開設・運営したこともあり、今まで避難所に関 わったことのない職員が対応に当たる場面も見受けられた。そのため、定期連絡の方 法、引継ぎ方法、ペットの受入れ体制など、避難所の開設・運営に関する訓練や研修を 実施し、活動の効率化を図るべきである。

ペットの同行避難に関する周知 ペットの同行避難に関して、基本的には飼い主が事前準備(ゲージなど)することが 前提であるが、住民へ十分周知できていない可能性があることから、広報紙や動物病院 の協力を得るなど、様々な機会を通じて、周知すべきである。

地域特性に応じた一時避難場所の推進 地域によっては、市の指定避難所へ行くことが、遠方な場合や交通手段がない場合などで困

難な場合がある。そのような中で、地域の事情にあった一時的に避難する場所を、地域住民 で事前に取り決めておき、避難するということは早期の避難行動に繋がると考える。

市は、そのような地域独自の一時的に避難する場所を事前に取り決めてもらえるよう、支 援する必要がある。

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