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遺伝子変異誘発実験

ドキュメント内 Microsoft Word - NIMS端.doc (ページ 110-131)

2θ/ degree0

2.3 遺伝子変異誘発実験

QC774株およびその野生株をLB培地中で,37℃,

4hr前培養した後, Plumbaginを含むLB培地に所定量 を接種し,定常磁場曝露装置を用いて,5 および 13T の磁場に同時に24hr曝露した。曝露後の大腸菌を生菌 数測定のために LB 寒天培地プレートに(Survival

assay),また,遺伝子変異としてチミン非要求性(Thy+

から要求性(Thy-)への形質変化を指標とし,変異を 起 こ し た 菌 体 の 検 出 を 行 う た め ,Trimethoprim と

Thymineを含むM63グルコース最小寒天培地プレート

に(Mutation assay)播種した。大腸菌を播種した各プ レートを 37℃でコロニーが出現するまで培養し(LB

培地:約18hr,M63培地:約66hr),各プレートのコ

ロニー数を計数した。107個の生存菌あたりの遺伝子変 異菌体数を遺伝子変異頻度として算出した。

3. 実験結果と考察

本研究 では ,まず, 磁場 を曝露し ない 条件下で

QC774株のPlumbaginに対する感受性の確認を行った。

この結果,野生株と比較し,QC774 株においては,

Plumbagin 濃度が高くなるにつれて,突然変異頻度が

上昇したことから,Plumbagin から発生した活性酸素 種により遺伝子変異が高頻度に誘発されていると考え られた(Data not shown)。

次に,Plumbagin(25µM)を含む培地中で,供試菌 株を5および13Tの定常磁場に曝露した(Fig. 1)。こ

の結果,Plumbagin 25µMの条件下では,磁束密度が高

くなるにつれて QC774 株の遺伝子変異頻度が低くな る傾向が見られたものの,磁場曝露系と非曝露系とで 統計的に有意な差は,QC774株と野生株ともに見られ なかった 。こ のことか ら, 活性酸素 種を 発生する

PlumbaginのQC774株に対する影響に対し,定常磁場

は影響を及ぼさないことがわかった。これまでの定常 磁場の生体影響に関する研究では,遺伝子修復系の遺 伝子に欠損がある場合,定常磁場により,遺伝子変異 がわずかに誘発されることが示唆されている 1)。本研 究の結果と合わせて考察すると,磁場の生体影響を明 らかにするためには,今後,superoxide 以外の活性酸 素に対する影響または遺伝子損傷の修復機能に対する 影響を検討する必要があると考えられた。

4. まとめ

活性酸素種の一つであるSuperoxideに対して高感受 性 で あ る Superoxide dismutase を 欠 損 す る 大 腸 菌

QC774 株を用いて,活性酸素種を発生するPlumbagin

を含む培地中で5および13Tの定常磁場に曝露したと こ ろ , ど の 磁束 密 度 条 件 にお い て も Plumbagin の

QC774 株への作用に対する明らかな影響は見られな

かった。

参考文献

[1] Koana et al., Mut. Res. Vol. 373, pp. 55-60 (1997)

Fig. 1 Effect of 5 and 13T strong static magnetic field on mutagenicity of plumbagin in E. coli QC774.

0 100 200 300

0 5 13

磁束密度 [T]

遺伝子変異頻度 (107 生菌あたりのThy- 菌数)

0µM Plumbagin

25µM Plumbagin

独立行政法人 物質・材料研究機構 NIMS ナノテクノロジー拠点 極限環境領域 NMR ファシリティー

2008 年度 成果報告書 (委託事業および自主事業)

改良したハイブリッド磁石を用いた強磁場NMR

High-Field NMR with a Newly Designed Hybrid Magnet

物質・材料研究機構 端 健二郎、清水 禎、藤戸 輝昭、後藤 敦、大木 忍、浅野 稔久、二森 茂樹 Kenjiro Hashi, Tadashi Shimizu, Teruaki Fujito, Atsushi Goto, Shinobu Ohki, Toshihisa Asano and Shigeki Nimori

National Institute for Materials Science Abstract:

Nuclear magnetic resonance (NMR) measurements using a newly designed hybrid magnet system installed at the National Institute for Materials Science were performed up to 28 T. A modified resistive insert magnet improved the field homogeneity of the hybrid magnet from 186 ppm/±5mm to 16 ppm/±5mm along the z-axis. Reconstruction of the power source for the resistive magnet suppressed the field instability from 30 to 3 ppmrms. These improvements enable us to obtain an NMR spectrum with narrower line width.

Keywords: high magnetic field, high resolution, magic-angle-spinning, NMR, hybrid magnet E-mail: [email protected]

1. はじめに

一般にNMRの感度と分解能は磁場が高ければ高い ほど優位になるためNMR測定では常に高磁場化が求 められている。超伝導磁石と電磁石を組み合わせたハ イブリッド磁石は超伝導磁石だけでは到達することが 困難な 30T以上の定常磁場を発生することが出来る ため、NMR測定には魅力的な磁石になっている。し かし、ハイブリッド磁石はその構造、電源の性能など から、磁場の空間分解能、時間安定度とも100pp m程度しかないことが分かっており、NMR測定には 十分な性能を有しているとは言えなかった[1]。これま でに、空間分解能を向上させるために水冷銅磁石の中 層ビッター磁石にスプリットギャップをつくり、磁場 分布がより均一になるよう変更を行った[2]。また時間 安定度を向上させるために、電磁石電源にFETドロ ッパーを導入するなどの改良を行った[3]。本年は、こ れらの改良を行ったハイブリッド磁石を用いたNMR 測定を行なったので、その結果について報告する[4]。

2. 実験方法

標準試料KBrの79Br核をプローブとしたNMR測 定を行った。KBr試料は4mmφのジルコニア試料管 に直径2mmの球状となるように入れた。磁場プロフ ァイルは試料位置を磁場中心からz軸方向に少しずつ 変化させながら共鳴周波数を測定することによって得 た。また、磁場中心において、1 秒毎のシングルショ ットスペクトルの共鳴周波数の時間変化を測定するこ とによって、時間安定度の測定を行った。

3. 実験結果

図1にスプリットギャップを持たない水冷銅磁石

(改良前)とギャップを持つ水冷銅磁石(改良後)を

用いたハイブリッド磁石の磁場プロファイルを示す。

水冷銅磁石がスプリット構造を持つことにより、磁場 の分布は磁場均一度のうちz成分が大幅に改善され、

磁場中心 は変 わってい ない が、均一 度が 改良前の

186ppm/±5mm から16ppm/±5mm まで、およそ12倍

改善されていることがわかる。

また図2に水冷銅磁石用電源の改良前と改良後の磁場 の時間変化を示す。磁場の揺らぎは主に水冷銅磁石の電 源リップルに由来するものであるが、FETドロッパーの 導入や時定数の最適化などの電源の改良によって、改良 前に 30ppmrmsあった磁場の揺らぎが改良後には3ppmrms まで低減化されていることが分かる。このような磁場

Fig.1 Field profiles of (a) the new and (b) the previous magnets measured at B0=28T and B0=30T, respectively.

均一度・安定度の向上はNMRスペクトルの線幅の先 鋭化として観測することが出来る。

図3にこれら空間分解能、時間安定度を向上させた ハイブリッド磁石を用いた KBr のシングルショット MAS-NMRスペクトルを示す。改良前に同一試料につ いて測定した結果と比べて信号対雑音比(S/N)と線幅 が格段に改善されていることが分かる。中心ピークの 裾 に ある ウィグ ル も小 さくな り 、線 幅は約 700Hz

(2ppm)まで狭くなっている。しかし、固体高分解能の

目安となる1ppm以下の分解能には達していない。ま た電源の改造後に残った 3ppmrms程度の磁場の揺らぎ によってスペクトルの共鳴周波数は測定ごとに変動し てしまうため、信号の積算は依然、困難なままになっ ている。磁場揺らぎ補正機などの開発により一層の磁 場の安定化が必要となっている。また、均一度の更な る向上のために、磁場揺らぎ補正機と共存する室温シ ムの開発も必要である。

4. まとめ

中層にスプリットギャップをもつ水冷銅磁石、およ びFETドロッパーを持つ水冷銅磁石用電源を用いた ハイブリッド磁石を用いて、28Tにおいて強磁場N MR測定を行なった。水冷銅磁石のスプリットギャッ プによって、磁場の均一度は 186ppm/±5mm から

16ppm/±5mmまで、およそ12倍改善された。また電

源にFETドロッパーを導入することで、30ppmrmsあ った磁場の揺らぎは 3ppmrmsあったまで低減化された ことが分かった。これらの均一度・安定度の改善によ り、シン グル ショット のN MRスペ クト ル線幅を 700Hz(2ppm)まで先鋭化することができた。今後、高 分解能NMR測定の目安となる1ppm以下の分解能を 実現するために磁場揺らぎ補正機および室温シムの開 発が必要である。

Reference

[1] K. Hashi, T. Shimizu, A. Goto, T. Iijima, and S. Ohki:

Jpn. J. Appl. Phys. 44 (2005) 4194.

[2] T. Asano, H. Yoshioka, S. Matsumoto, and T. Kiyoshi: J.

Phys.: Conf. Ser. 51 (2006) 587.

[3] G. Kido, S. Nimori, K. Hashi, M. Kosuge, H. Kudo, K.

Suda, T. Miyoshi, K. Nakayama, and K. Takeshita: J. Phys.:

Conf. Ser. 51 (2006) 580.

[4] K. Hashi, T. Shimizu, T. Fujito, A. Goto, S. Ohki, T.

Asano, and S. Nimori: Jpn. J. Appl. Phys. 48 (2009) 010220.

Fig.2 Field stability of the magnetic field (a) after and (b) before the reconstruction of the power source at B0=28T and B0=30T, respectively.

Fig.3 Single shot 79Br-MAS-NMR spectra measured with (a) the new magnet at 28T and (b) the previous magnet at B0=30T.

光ポンピング法を用いた核スピン偏極器の開発 VII

Development of a nuclear spin polarizer with the optical pumping method: VII

1物質・材料研究機構、2科学技術振興機構さきがけ 後藤 敦1,2、清水 禎1,端健二郎1,大木 忍1, 瀧澤智恵子1

Atsushi Goto1,2, Tadashi Shimizu1, Kenjiro Hashi1, Shinobu Ohki1 and Chieko Takizawa1

1National Institute for Materials Science, 2PRESTO-JST

Abstract:

We have developed an optical pumping double resonance system for GaAs and an intensity modulation system for infrared light. These systems will be indispensable for future dynamic nuclear polarization in semiconductors.

Keywords: dynamic nuclear polarization, optical pumping, double resonance, cross polarization E-mail: [email protected]

1. はじめに

固体中の偏極核スピンはNMRや偏極中性子散乱な どの先端計測・分析や原子核実験において高感度な観 測プローブとして期待されています。一方、近年の半 導体スピントロニクス研究の進展に伴い、半導体にお ける超偏極に注目が集まっています。このような状況 を背景に、私達は半導体をはじめとした固体における 偏極核スピンの生成と制御のための技術開発を進めて います[1,2]。

2. 実験方法

私達が現在開発中の光ポンピング2重共鳴NMRシ ステムでは、磁場内に設置された半導体試料の表面に 円偏光した近赤外光を照射することで、試料表面に偏 極原子核スピンを生成することができます。さらに、

生成された超偏極核スピンに対して各種2重共鳴測定 を行うことができます。

3. 実験結果と考察

本年度は、以下の2つのシステム(装置および制御 系)の開発を行いました。

(1) GaAs用光ポンピング二重共鳴システムの開発

これまでに開発したInP用の光ポンピング二重共鳴測 定システム[2]を元に、GaAs に対応した測定システム を構築しました。具体的には、GaAs の励起波長に対 応した光学系や71Ga, 75As等の共鳴周波数に対応した プローブ(図 1)を設計・構築し、その基本性能を確 認しました。

(2) 励起光変調システムの開発

励起光強 度の 高周波パ ルス 変調を実 現す るため、

EO(電気光学)素子を NMR システムにより制御する

「励起光変調システム」を構築しました(図2)。これ により、励起光強度とNMRパルスをNMR分光計上 のパルスシーケンスにより一体的に制御することが可 能となりました。

Fig.1 Lower end of the optical pumping double resonance NMR probe for GaAs.

Fig.2 Intensity modulation system with an EO element.

ドキュメント内 Microsoft Word - NIMS端.doc (ページ 110-131)