• 検索結果がありません。

遷移過程評価

ドキュメント内 久保様-本文55-pp2 (ページ 127-136)

6.  金属燃料炉心の炉心損傷評価

6.2  遷移過程評価

(1) 金属燃料高速炉の炉心損傷事象推移

金属燃料高速炉の遷移過程解析を実施するにあたり、その事象推移の定性的な考察を 以下のように行った。

1) 金属燃料炉は金属の高熱伝導率のために燃料の軸方向温度分布は冷却材の温度分布 と対応しており、流量の減少に伴って炉心の上部から溶融を開始する。上部軸ブラ ンケットが中空もしくは無い場合は溶融燃料の extrusion が発生する可能性がある。 

2) 金属燃料の融点(約 1300K)以上の温度では被覆管(SUS)と燃料との共晶反応が 加速(浸食早さ1 mm/s程度)され、被覆管が炉心上部で破損する。 

3) 燃料ピン破損時点でのナトリウム冷却材沸騰は破損に先行していると考えられるが、

未沸騰で破損した場合は、急速なボイド反応度印加につながるため影響が大きい。 

4) 溶融燃料は燃料内の FP ガス圧力、プレナムガス内のガス圧力によって流路内に放 出され、破損孔の上下に分散を開始する。金属燃料炉心はナトリウムボンドである ため、上部ガスプレナムとなっている。このため、ボイド拡大と燃料移動は上下均 等もしくは炉心方向への移動が支配的になると考えられ、出力変動への影響も大き い。 

5) 溶融燃料の温度はそれほど高くないため、ピン破損によって放出される溶融燃料ま たは共晶液体によって厳しいFCIが発生することはないと考えられる。 

6) 上方向へ分散した燃料は UAB 上方で固化して閉塞を形成する。炉心内に残存して いる燃料も冷却材流量が失われるためいずれ溶融し、FPガス圧力を駆動力として炉 心下方向へ移動し、炉心下部から支持板に至る領域で固化閉塞を形成する。 

7) 以上の過程で、1300 1400 K の温度領域では溶融した燃料と被覆管が数秒のオー ダーで共晶反応を起こすため、殆どの燃料とスティールは共晶化合物となっており、

以後分離することはないと考えられる。 

8) 上方へ分散して固化した燃料は崩壊熱で周囲の構造材を溶融して炉心領域へ落下し、

溶融プールを形成する。プールの温度は共晶生成物の融点(U, Pu, Zr, Feの比率に 依存。1000 1700 K程度)からスティールの融点(約1800 K)の間にあると考えら れる。 

9) 溶融プールは炉心内の制御棒案内管(CRGT)を浸食し、CRGT 内に流入して炉心 下方向へ流出を開始する。CRGT を通してどの程度の燃料が流出できるかは不明。

ナトリウムとの混合による冷却でそれほど流出は期待できない可能性もある。 

10) CRGT の破損と並行して、プールは径方向ブランケット領域へも共晶反応によって 浸食・拡大する。 

11) CRGT の破損、径方向ブランケット領域の破損時点でのナトリウムとの熱的相互作 用で大きな圧力が発生することはなく、これによって厳しい全炉心規模での再臨界 が駆動される可能性は小さいと考えられる。 

12) 溶融プールは周囲及び下部の構造材を取り込みつつ徐々に下方向へ移動する PAMR 及びPAHR過程へ移行する。 

 

以上の事象推移に関する考察に基づき、以下の点について解析を実施した。

‑ 炉心上方へ分散した燃料の落下(UAB を伴う)による再臨界の可能性(事象推 移 8))、全炉心規模に拡大した炉心プールにおける臨界性(事象推移 8)の直後、

および事象推移10), 12))。 

‑ 制御棒案内管CRGT(または集合体内部ダクト)を通した燃料流出挙動の評価 

‑ 全炉心解析による金属燃料炉における炉心損傷事故の事象推移把握。事象推移 11)も確認する。 

上記の考察を踏まえ、事象推移を把握する目的で、SIMMER-IIIを用いた全炉心解析 を実施した。

 

(2) 金属燃料炉の全炉心遷移過程解析 (i) 解析体系・条件

金属燃料炉の炉心損傷事故における遷移過程事象推移解析を SIMMER-III コード を用いて行う。CANIS コードによる起因過程解析結果の 27 s 時点の情報を用いて SIMMER-III入力データを作成した。SIMMER-III解析体系では、炉心全体を 12の 径方向メッシュで表し、径方向I=1, 6, 10をCRGT、その他の径方向メッシュは燃料 集合体とした。さらに、I=13 は径方向ブランケット、I=14 を径方向遮蔽体とした。

軸方向は炉心を10 メッシュ、上下軸ブランケットにそれぞれ 1と4 メッシュを割り 当てた。

解析条件は表 6.2-1 に示すように、燃料の融点と共晶模擬破損温度をパラメータと して N0, N3, N4, N5 ケースを想定した。ここで、共晶模擬破損温度とは、現状の

SIMMER-IIIで共晶現象を模擬するために、ラッパー管の温度がこの温度に達した場

合にラッパー管は破損しないが、構造材としての機能を失い、流体が可動となる扱い とする。また被覆管の温度がこの温度に達した場合は、燃料ピンが破損して粒子場へ 移行する扱いとした。

(ii) 解析結果

解析結果から、ピーク反応度、ピーク出力を表 6.2-2 にまとめる。出力上昇が最も 大きかったのはN4ケースであり、時刻106 s で575 Po の出力となった。このケー スは、共晶を模擬した溶融温度を 1373 K としたケースである。N4 ケースのバース トは、崩壊熱により炉心内の燃料成分は液体状態であり、炉心下部の溶融プールが径 方向へ拡大する過程で、制御棒ダクトを溶融破損した際、残存する冷却材と燃料成分 の FCI によって、燃料成分が押し戻され、局所的な燃料の集中が発生したことによ

る。

解析結果から、溶融燃料質量、燃料流出量、流出割合を表 6.2-3 にまとめる。燃料 成分の炉外への流出については、N0, N3, N5 ケースの比較から、融点が低いほど、

溶融燃料の炉外流出割合は高くなる。共晶破損温度による差違は、N0 と N4 の比較 より、共晶模擬温度が高いほど、エネルギーが多く蓄積され、炉内の溶融燃料は液体 として残留する可能性が高い。

また、制御棒案内管は溶融物の流出経路として機能することがわかったが、エント ランスノズル部への流出については、溶融燃料の1 % 10 %程度である。

(iii) まとめと課題

全炉心計算から得られた知見は以下の通りである。

崩壊熱、及び冷却材の喪失による冷却効果の低減により、液体燃料の割合が時間の 経過とともに高くなるため、流動的に再配置されやすくなる。これにより再臨界が発 生する可能性は高くなるが、仮に再臨界が発生した場合でも、今回の解析で生じた最 大の再臨界は、未破損で残存した制御棒チャンネルが破損し、FCI を生じたケースで

575 Po 程度の出力である。核計算を含む解析全体を通しての知見としては、酸化物

燃料炉心と比較して、金属燃料炉心ではエネルギーの蓄積は小さく、マイルドな遷移 過程となる傾向が見られる。これは金属燃料の熱容量が小さいことから、ドップラー 反応度フィードバックがかかりやすいことの結果とも考えられるが、この点について は今後の検討が必要とされる。また、炉心から下方向へ移動する燃料は速やかに冷却 され激しい FCI を伴わず穏やかに固化している。これが物理的に妥当であることに ついては将来の実験解析を通して検討する必要がある。

溶融した金属燃料の流動性およびスティール構造材との共存性に関する実験的知見 は僅少であり、遷移過程の事象推移に大きな影響を与える遷移過程初期における炉心 からの燃料流出挙動に関する不確定性が大きい。特に金属燃料では、下部ピン束を短 尺化してそこからの燃料流出可能性を検討しており、その効果の定量化のためには溶 融燃料の円管内流路への侵入・固化を実現する試験の実施と評価モデルの検証が望ま れる。また、遷移過程初期の燃料流出を模擬するモデルの開発と遷移過程解析手法へ の反映が必要とされる。

(3) MOX炉心と金属燃料炉心におけるランプ状反応度投入時の積分出力の比較

  再臨界発生時のエネルギー放出量は、投入される正の反応度の投入速度(通常は$/s で表される)と、温度の上昇によって速効的に投入される負のドップラー反応度によっ て概略決定される。他方、金属燃料は MOX 燃料と比較して、出力密度が高い、比熱が 小さい、ドップラー係数が小さい、融点が低い、当の特徴があり、これらが遷移過程に おける再臨界発生時のエネルギー発生に対してどのように影響するかを調べておくこと

は重要である。本小節では、金属燃料炉に対してランプ状の正の反応度が投入された場 合の発生エネルギーがドップラー反応度によってどのように緩和されるかを MOX 燃料 との比較で検討してみる。

(i) 定格出力断熱状態での温度上昇率:出力温度変換係数CIT

  出力温度変換係数 CIT(融点における定格出力時の温度上昇率)は式(1)で定義さ れる。

    (式 1)

ここでPo:定格出力[W]、M:燃料質量[kg]、Cp:比熱[J/kgK]

  表 6.2-4 の①に示すように、出力温度変換係数は金属燃料炉では 443K/s であり、

MOX 燃料炉の 131K/s よりも 3 倍以上、温度上昇が速い。これは金属燃料炉の方が

出力密度が30%以上高く、比熱が1/2.5と小さいためである。

(ii) 出力に対応したドップラー反応度挿入率

  出力の上昇によって燃料が断熱的に昇温する場合には、炉出力は燃料の温度上昇率 と線形な関係にあり、これは直ちに負のドップラー反応度の挿入率と式(2)によって結 びつけることができる。

dρD /dt = dρD /dT・dT/dt = dρD /dT・CIT・P (式-2)

  表 6.2-5 の最下段(②)には、式(2)の右辺の出力に係る係数 dρD /dT・CIT が示

されている。仮に比出力が100Poであるとすると、MOX 炉ではドップラー反応度挿 入率は-2.4[$/s]、メタル炉では-13[$/s]となり、メタル炉では同一の比出力であっても MOX炉の5倍の大きな挿入率で負のドップラー反応度が入ることがわかる。

  このことはすなわち、両炉において定格出力状態から同一の反応度挿入率が投入さ

れ、仮に 1$に到達したとしても、出力の上昇に応じてドップラーによる負の反応度

が投入されることから、1$時点での出力、及び反応度挿入率はメタル炉心の方がより 低くなることを意味している。

(iii) 即発臨界バーストにより反応度挿入率ρ’が添加された時の積分出力E[J]

  ネット反応度が 1$を超過して即発臨界バーストとなった際の発生エネルギー(出 力の時間積分値)は、参考文献[1]によれば、式(3)で求められる。

ドキュメント内 久保様-本文55-pp2 (ページ 127-136)

関連したドキュメント