第 3 章 事例分析 MOSA
3.5 運営のジレンマ
<外部からの人材登用>
新しい分野のセミナー・イベントを行う場合は講師探しに苦労するという。MOSA の趣旨に賛同して協力してもらえるのが理想だが現実は難しい。自分の会社の製品が 絡む、高い謝礼が出るなど、講師側にも何かメリットが必要である。また、事前に面 識のない人に講師を頼むのはリスクが高い。過去の経験で、途中から連絡がとれなく なった講師やイベント当日になっても発表資料の準備ができてない講師がいた。その ような事情もあり、現在のセミナー講師は、すでに信頼関係が築かれている理事が担 当することが多い。
現在のソフトウェア開発は一筋縄ではいかない。ソフトウェアを作成するためには、
開発支援を目的とした複数のソフトウェアを使いこなす必要性や、多岐に渡る概念の 理解が求められる。現在人気の高い「初心者向けiPhoneソフトウェア開発セミナー」
を例にしても、開発ツールであるX-CodeやInterface Builderの使い方、プログラム
言語 Objective-Cの理解、iPhoneに搭載されているOS であるiOS の理解、プログ
ラミングフレームワークUIKitなどの理解、オブジェクト指向の理解、人が使いやす いソフトウェアとは何かなど、幅が広く密度も濃い。このような技術を短時間で伝え
るにはノウハウが必要とされる。セミナー講師を担当する理事同士では、このような 指導ノウハウも共有している。
<コストの問題>
会員が増えるほど MOSA の収入も増えるためセミナー参加費を安く設定すること ができる。コミュニティが発展するのは良いのだが、会員の増加に比例して事務コス トも増加する。参加者数に応じた会場の確保も難しくなり、事務局担当者も現在の1 名では足りなくなる恐れがある。規模が大きければ必ずしも良いわけでは無く、コス トとのバランスにおける最適点があるのかもしれない。
現在のセミナー・イベントは東京に集中しがちである。地方でのセミナー・イベン トも開催したいのだが、その場合、担当者が東京から移動するだけでかなりの交通費 がかかる。初めての場所であれば会場の下見なども必要となるかもしれない。NPO 法人なのでセミナー参加費を高く設定することができないため、赤字になる可能性が 高い。このような理由から、地方でのイベント開催など、一般会員にも協力を要請し たいのだが、責任が伴うためハードルが高くなる。また、一般会員に任せた作業で何 か問題が生じた場合、一般会員の自己責任とすることはできずNPO法人としての問 題に繋がる。そのため、理事会と協力してくれる会員との間には事前の信頼関係が必 要となる。
現在の MOSA では事務局・理事会が用意したイベント・セミナーが活動の中心だ が、最終的には会員自身により企画から実行まで行われるイベントがベストな形態だ と会長の小池氏は次のように語ってくれた。
「団体・集団での活動って、結局のところ人の問題になると思う。企画して、責 任を持って場所を確保して最後まで面倒みてくれて締めるところまで実行する。
これはとても難しいこと。どんな小さなコミュニティでも責任を持って実行して くれる『核』になる人が必ずいるはずで、逆にそういう人がいなくなるとコミュ ニティは消えていくのだと思う。また、参加者に手を挙げてもらうことも必要だ が、手を挙げてくれた人がちゃんとやるかどうか、も組織としては重要だと思う。
途中で『やってみたら大変だから止めます』というわけにはいかない。特にMOSA はNPOなので、営利目的の活動など、ルール的に間違った方向に行ってしまう
と困る。そう言う意味で、コミュニティの趣旨を理解してくれることは大切にな る。自分自身や所属企業に利益があることは参加するが、そうでなければやりた くないということでは難しい。コミュニティに対する純粋な気持ちから『貢献』
してくれることが一番望ましい。」