更にもう少し考えてみましょう。最初に、A, B の速度がそれぞれ~vA0, ~vB0 だっ たとします。また、時間が経過した後の速度を、~vA0, ~vB0とします。すると、時間 が経過しても
mA~vA0+mB~vB0 = mA~vA+mB~vB が成り立つことになります。なぜならば、両辺の差は、
mA(~vA−~vA0) +mB(~vB−~vB0) = mA∆~vA+mB∆~vB であり、これは式(3)によりゼロです。
4.11.2 運動量保存則
物理学では、時間的に変化しない物理量によく着目します。そして、時間変化 しないことを「保存する」と表現します。また、保存する物理量を保存量といい ます。物理学で保存量に注目する理由は明らかです。運動方程式から運動の様子 をいちいち計算しなくても、将来の予想をある程度したいからです。そのために は、時間的に変化しない量に着目すると便利です。
今回の場合、質量と速度の積の合計は、時間が経っても変化しませんでした。質 量と速度の積は、特に「運動量」といいます。そこで、運動量は保存量であると 言えます。また、一般に、二つの物体に、互いに及ぼしあっている力だけが作用 しているとき、二つの物体の運動量の合計は一般に保存します。これを「運動量 保存の法則」あるいは、短く「運動量保存則」といいます。
課題
1. ロケット(質量が 1001 トン)を考えましょう。宇宙空間で “静止”して いたこのロケットが、動き出すために、燃料を燃焼させて噴射したとし ます。1トンの燃料を噴射し、その燃料は平均で1000m/s で噴き出して いったとします。すると、ロケットはどれくらいの速さで進むことにな るでしょうか。
2. ロケットが、101 トンで燃料を 1トン噴射した場合はどうでしょうか。
3. 無重力状態の国際宇宙ステーションで浮遊している宇宙飛行士が、空気 中で “水泳”を行うとします。ところが、宇宙飛行士はあまり進めませ ん。なぜでしょう。運動量保存則から考えてみよう。
ガンダムは加速できるか
この例が示しているように、巨大な構造物を、ガスの噴射によって加速すること は、かなり、非効率的です。余程ガスを高速で放出しなければなりません。10m/s は、人間の走るスピードの最高速度程度です。
これは、スペースシャトルの打ち上げを見てもわかります。スペースシャトル は、本体よりもはるかに大きな燃料タンクを接続しています。
SF アニメである「ガンダム」では、モビルスーツと呼ばれる人間型戦闘機「ガ ンダム」が活躍します。大きな加速度得るために、噴射口からガスを噴出してい ます。画像で見るような加速度を得ることができるか、疑問です。一方、本当にそ の程度の加速度を得るためには、機体のほとんどが燃料であるか、余程反応性の 高い物質を使わなければなりません。それは、どちらも、着弾したときの爆発の 危険性も意味しています。
タケコプターの現実
ドラえもんの道具「タケコプター」は有名です。
これが、頭につけたプロペラが空気を下に押しやることで飛ぶとします。無重 力状態で、重力加速度よりも大きく加速することができれば、重力に打ち勝って飛 ぶことができます。つまり、体重30 [kg]の子供が、上に向かって、毎秒 9.8 [m/s]
加速することできれば浮かぶ訳です。
これを実現するには、やはり運動量の保存で考えることができます。空気と子 供の間で力のやりとりを行っているので、空気と子供を合計すれば、運動量は保 存します。そこで、周りの空気 30 [kg] を毎秒 9.8 [m/s]加速することができれば 浮く訳です。ところが、空気 30 [kg] は、おおよそ30 [m3] もあり、これだけの体 積の空気を、頭につけたプロペラで動かすのは、難しいように思います。そこで、
体積を1/10 の3 [m3]にしてみましょう。すると、その空気を100 [m/s] で下向き に加速する必要があります。どんな台風で実現するよりも速い風です。
いずれにしても、大変なことが起こることは間違いありません。
しかし、ヘリコプターはこれを実現している訳です。大きなプロペラと高速回 転でこれを実現しています。