第 2 章 離散凸解析の基礎 5
3.5 近接定理の証明
なお、第3.4.3節では連続緩和のL♮凸関数Gの例としてgの閉凸包による連続化を挙げた が、関数値の計算に多くの計算量がかかるため、連続緩和法には適さない。
集合
K :={p∈Rn |p∗−n1≤p≤p∗+n1}
を考える.Kはコンパクト集合であるので,Kに含まれる任意の数列は,収束部分列をもち,
極限点もKに含まれる.整数k≥1について,
sk = 2k, psk ∈argminZgsk, psk
sk
∈K とおく.数列{psskk }から収束部分列{psski
ki }をとることができる。このとき
ilim→∞
pski
ski
=p′∈K とおく.Gの連続性より,
ilim→∞G(pski
ski
) =G( lim
i→∞
pski
ski
) =G(p′)
となる.このとき、粗い格子が細かい格子の部分集合を成すことから、{G(psski
ki )}は単調減少 数列
G(psk1
sk1
)≥G(psk2
sk2
)≥ · · · ≥G(pski
ski
)≥ · · · であり,
G(p′)≤G(p2ki
2ki ) = ming2ki (i∈Z, i≥1) (3.19) であることに注意する.(この事実は下で用いる。)
次に,上で定めたp′についてG(p′) = minGつまりp′∈argminRGであることを、背理 法を用いて証明する.そのために,G(p′)>minGであると仮定し,ε0:=G(p′)−minG >0 とおく.p′′ ∈argminRGを任意に固定する.このとき、任意のδ > 0に対して、ある整数 n′∈ {ki|i= 1,2, . . .}と
b0=⌊p′′⌋, bk ∈ {0,1}n (k= 1,2, . . . , n′) を満たす数列{bk}が存在して,
q:=
n′
∑
k=0
bk
2k (3.20)
が|p′′−q|< δを満たす.ここで2n′q∈Zとなることに注意する.一方、Gの連続性により,
∀ε′ >0,∃δε′ >0 :|x−y|< δε′ ⇒ |G(x)−G(y)|< ε′ (3.21) が成り立つ.さて,式(3.21)においてx=p′′,ε′= ε20 に対して定まるδε′をδとする。この δに対して式(3.20)で定まるqは、|p′′−q|< δε′ を満たすので|G(p′′)−G(q)|< ε20 とな り、G(q)<minG+ ε20 が成り立つ。したがって
ming2n′ ≤G(q)<minG+ ε0
2 <minG+ε0=G(p′)
となり,式(3.19)に矛盾する.これよりG(p′) = minGが証明された.すなわち、p¯として p′= lim
i→∞
pski
ski
がとれる。
3.5.2 連続緩和の近接定理(逆)の証明
定理3.13の証明. 定理3.12を逆方向に用いるため,まずG:Rn→R∪ {+∞}が唯一の最小 解p¯∈Rnをもつ場合を考える.このとき,すべてのp∗∈argminZgが
p∗−n1≤p¯≤p∗+n1
を満たすことが,定理3.12より直ちにわかる.また,この条件を満たすp∗∈argminZgが必 ず存在することもわかる.
次に、Gが唯一の最小解をもつとは限らない一般の場合を考える。この場合には、Gを摂動 して上の場合に帰着させる。最小解p¯∈argminRGを任意に1つ定めて,任意のε >0に対 して,関数Gε :Rn→R∪ {+∞}と関数gε :Zn→R∪ {+∞}を
Gε(p) :=G(p) +ε
∑n i=1
(p(i)−p(i))¯ 2 (p∈Rn), gε(p) :=Gε(p) (p∈Zn)
と定義する.関数Gε と関数gεは,L♮凸関数である。明らかに、Gεは唯一の最小解p¯をも つ。さて,十分に小さなεを定めたとき,gε の最小化元p∗ε ∈argminZgε がgの最小解とな ることを示そう.Gの実効定義域は有界であると仮定したので,
K˜∞ = max{∥p−q∥∞ |p,q∈domRG} が存在する。
g(p′) = min{g(p)|p∈domZg\argminZg}
とする.すなわち、g(p′)はgの最小値とは異なる2番目に小さい値である。摂動のパラメー タεを
0< ε < g(p′)−ming nK˜∞2
を満たす値に定める.p∗ε ∈argminZgεとp∈argminZgに対して gε(p∗ε)≤gε(p)
であるので、gεの定義を適用すると g(p∗ε)≤g(p) +ε
∑n i=1
{(p(i)−p(i))¯ 2−(p∗ε(i)−p(i))¯ 2}
の成り立つことがわかる.ここで,p∈argminZgよりg(p∗ε) ≥g(p)であるから、最後の和 の項は非負である.したがって,
g(p∗ε)≤g(p) + g(p′)−ming nK˜∞2
∑n i=1
{(p(i)−p(i))¯ 2−(p∗ε(i)−p(i))¯ 2}
< g(p) +g(p′)−ming=g(p′)
表3.1.実装したL♮凸関数最小化アルゴリズム
表記 アルゴリズム
SD 最急降下法(第3.2.1節) SCALING スケーリング法(第3.3.4節) RELAX 提案する連続緩和法(第3.4.5節)
が成り立つ.ここでg(p′)は2番目に小さい値であったから、g(p∗ε)が最小値であること、す なわちp∗ε ∈argminZgであることがわかる.
連続関数の最小解が唯一の場合の事実を適用することによって、p∗ε ∈argminZgが p∗ε−n1≤p¯≤p∗ε+n1
を満たすことが証明される。