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農薬製剤・施用技術の最新動向⑫

ドキュメント内 本誌をより身近な存在に (ページ 74-77)

バイエルクロップサイエンス株式会社

開発本部 製剤開発部 北垣 憲一

(きたがき けんいち)

リレー連載

表−1 希釈・分散させて使用する代表的な製剤

乳剤 水和剤 フロアブル剤 顆粒水和剤

性状 液体 液体

密度・かさ密度 0.91.2 0.10.5 1.01.1 0.50.9

水和時間 2 10

自己分散性 △〜○

流動性 ×

有効成分濃度 70% 80% 50% 80%

有機溶剤 使用 なし なし なし

容器 多層ボトル 防湿袋 PEボトル 防湿袋/多層・

PEボトル

容器への付着 あり あり あり 極僅か

顆粒水和剤〜その特徴と今後の展望〜 279 向けて製剤タイプを決める際にはこれらが大きな要素と

なる。顆粒水和剤の大きな利点の一つは高濃度製剤化が 可能な事である。

代表的な製剤(乳剤・水和剤・フロアブル剤・顆粒水和 剤)の種々特徴の比較表を参考として表―1に記載する。

II 水に希釈時の希釈液の状態

図―1に希釈時の希釈液中の状態を模式化した図を示す。

図−1 水に希釈・分散した状態の模式図 水和剤

顆粒水和剤

フロアブル剤 乳剤

=水, =油or原体in溶剤, =固体 原体.

水に希釈・分散後は水和剤・顆粒水和剤・フロアブル 剤は同じ状態である(固体の懸濁)。

III 顆粒水和剤の長所・欠点

長所: 粉立ちがない。容量で計量が可能。ハンドリン グが容易。

包装資材への主薬残留が少ない。高濃度製剤化 が可能。

欠点: 製造が複雑(粉砕工程+造粒・乾燥工程)。製 造コストが高い。

IV 顆粒水和剤の物理化学性および使用時の留意点 水中での崩壊性,自己分散性,希釈・懸濁液の懸濁安 定性,粒の硬度等が製剤化を検討するときの重要な要素 となる。主に下記のCIPACメソッドおよびそのメソッ ドの組合せで各物性の評価を行い製剤処方の最適化が図 られている。

CIPAC Methods

MT 47: 残泡性

MT 53: 水和性

MT 167: 顆粒水和剤の分散液の湿式篩試

MT 168: 顆粒水和剤の懸濁安定性の測定

MT 169: 顆粒水和剤のタップ密度

MT 170: 顆粒水和剤の乾式篩試験

MT 171: 粒状品の粉塵

MT 172: 加圧熱処理後の顆粒水和剤の流

動性

MT 174: 顆粒水和剤の分散性

MT 178: 粒剤の硬度(耐摩耗性,崩壊率)

また,このように物理化学性を担保した製剤処方で製 品化されているため,他の薬剤と混用使用の場合,とき には物性の劣化(凝集など)を生じる場合があるので,

混用可否の情報を十分考慮して使用する必要がある。

V 一般的な顆粒水和剤の製剤処方 一般的な製剤処方を表―2に記載する。

一般的に,他の製剤タイプはそれほど多くの製造方法 はないが,顆粒水和剤の場合,種々の製造方法(押出し 造粒法,流動層造粒法,攪拌造粒法,噴霧乾燥造粒法,

転動造粒法等)があり,同一処方でも製剤物性は製造 法・製造条件に大きく依存する。

VI 顆粒水和剤の製剤化検討時の留意点 1 原体の特性

固体原体で融点が高いほうが好ましい。融点が高いと 粉砕が容易であり,融点が高くないと粉砕工程のみなら ず製品保管時の物性安定性に問題が生じる場合もあるか らである。この特性は水和剤と同じである。

また,造粒後,乾燥工程があるので乾燥熱に対する耐 性が必要となる。液体原体の場合は吸油性物質(ホワイ トカーボン,珪藻土等)が必要となり高濃度製剤化は困 難である。原体の粒子径が薬効・薬害に影響を与える可 能性があるので,この点も考慮して製造方法などを選択 する必要がある。

2 製造方法

顆粒水和剤の製造法には,押出し造粒法,流動層造粒 法,攪拌造粒法,噴霧乾燥造粒法,転動造粒法等がある。

日本においては押出し造粒法が主流となっている(図―2, 3)。

表−2 顆粒水和剤の一般的な製剤処方

処方 含有量(重量%)

農薬原体 1080

湿潤剤 35

分散剤 515

消泡剤 0.20.5 結合剤 1.02.0

増量剤 残り

日本においては,一般粒剤にはほとんどが押出し造粒 法よって製造されており,この技術をそのまま使うこと ができる。しかし,造粒工程で圧力がかかることから,

再分散性が他の造粒法で製造された顆粒より劣る傾向が ある。押出し径を小さくする(粒径1 mm以下/生産性・

物理化学性のバランスを考慮して粒径0.8 mmで多く製 品化が行われている)ことによって再分散性の改善を図 れるが,処方上の工夫が必要である。また,押出し造粒 機には他にバスケット型,前押出型,ドーム型等が一般 的に使用されている。

お わ り に

上述したように顆粒水和剤は希釈後の希釈液では水和 剤・フロアブル剤と同じ状態となる(水に固体が懸濁し た状態)。最近フロアブル剤ではアジュバント(機能性 展着剤)を配合したり,耐雨性を付与することにより,

効率的な植物体への薬剤の取り込みが可能な製品が開発 されてきている。欧米ではフロアブル剤において水ベー スではなくオイルをベースにしたOD剤も多く市販化さ れており,より効率的に安定した効果の製品が商品化さ れている。顆粒水和剤においても今後同様の検討が必要 と考える。

ただし,このようなアジュバントやオイルを含む製剤 の場合は散布水量が大きく効果に影響を与える。希釈水 量が多いと製剤設計されたアジュバントの効果が減少 し,場合によってはなくなってしまうこともある。今後 は製剤設計と同時に少水量散布も考慮することが大変重 要な側面であるが顆粒水和剤の処方にオイルやアジュバ ントを組み込んで製剤設計する事は技術的ハードルが高 い。少水量散布への対応は希釈散布製剤全てに言える事 であるが,多水量散布のrun-offで地面に薬液が不要に 流れるのを防止し,適切な薬量を適切に散布することに よって,効果はもちろんのこと環境に与えるインパクト の削減も大きく期待される。日本において今後取り組む べき大きな課題の一つと考える。

引 用 文 献

1)北垣憲一(2013): 応用が広がるDDS―人体環境から農業・家 電まで―,2編 DDSの産業利用,1章 農薬製剤と施用 法,第1節 農薬製剤,9 顆粒水和剤,NTS,東京,p.469 2) 473. (2004): 第24回農薬製剤・施用法シンポジウム 講演

要旨,p.8.

3) (1997): 農薬製剤ガイド,日本農薬学会 農薬製剤・

施用法研究会 編,日本植物防疫協会,東京,p.2024.

図−3  横押出し造粒機で製造されたペレット状の顆粒 水和剤の拡大写真(押し出し径<0.8 mm)

1 mm

図−2 横押出し造粒機

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