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農業産出額の構成

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KIKUCHI Ritsu

2.  農業産出額の構成

 農林水産省の資料を基に,表1に当地域における各市町別農業生産額および構成比率(2001

〜1006年平均)を示した。それによれば,尾花沢盆地の尾花沢市,大石田町においては米 の生産が金額の上でも構成比率の点でも大きな地位を占め共に40%を超えて他の4市に比 べて相対的に高く,次いで野菜の比率が30および40%,これに対して果実の比率が1%な いしそれ以下と極めて小さい。一方山形盆地の東根市,天童市,寒河江市では野菜の比率が 10%以下で低く米の比率も比較的低い反面,果実の比率がいずれも50%を超えており,中 でも東根市と天童市は高い。このように前2者(尾花沢盆地)と後3者(山形盆地)では大 きく異なった生産構成となっており,二つのグループに分けられる。そして,両者の中間に ある村山市は中間的な特徴を示し,米,野菜,果実のいずれも両グループの中間にあたる構 成比率である。

 本研究で注目したスイカは,表1では野菜に含まれている。そこで,スイカ生産量の最も 多い尾花沢市を取り上げ,同市で生産に力を入れている米,スイカ,肉用牛の品目に絞って

1997〜2006年の推移を表2に示した。それによれば,尾花沢市の農業生粗産総額は近年減

少傾向で,最高の114.7億円(1998年)から最低の87.7億円(2005年)へ10年で約24%

の低下となった。農業粗生産総額のうち米が上記のように約40〜50%,スイカは約20〜

30%で年々の上下はあるが長期的には一定の割合を維持している。これに対して肉用牛の 生産が生産額,比率とも増加傾向で,10年前は10% 前後であったものが近年15〜16%となっ てきている。これら3項目を合わせると,粗生産額全体に占める割合が80%を超える。す

なわち,尾花沢市の農業は米とスイカと肉牛が三本柱であることが明瞭で,県内他市町村に 比べ際だった個性を持っている。なお表1では野菜全体でも約30%なので,尾花沢市の畑 作物はスイカが圧倒的に優占し,その他の野菜はほんの数%に過ぎないことになる。以上 のことから,尾花沢盆地はスイカ生産に特化した農業であり,それだけスイカ栽培に適した 条件を持つと推察される。

3.スイカ栽培の季節

 尾花沢盆地におけるスイカ栽培について,生産農家のホームページ記事,および現地にお ける生産者への聞き取りから,当地域の作業暦はおおよそ次のようになっている。

 ①スイカ畑の準備: 尾花沢盆地は豪雪地帯なので,春の雪解けが遅い。完全に雪が解け るのは平地でも4月に入ってからとなることも多い。スイカの収穫時期から逆算した 苗の植え付け時期を確保するために,畑地面にビニールマルチを施し地温の上昇をは かる必要がある。ビニールマルチを設置するのは雪が積もる前の前年秋(10月頃)で,

1 農業生産額構成の比較(2001年〜2006年の平均)

農業生産額

(千万円)

(千万円) 構成比

(%) 野菜

(千万円) 構成比

(%) 果実

(千万円) 構成比

(%)

尾花沢市 926.2 415.5 44.9 281.7 30.4 20.0 0.2

大石田町 280.0 131.2 47.1 113.0 40.1 3.3 1.2

村 山 市 791.5 308.5 39.0 173.0 21.9 204.3 25.8 東 根 市 1330.3 170.0 12.8 36.0 2.7 975.5 73.3 天 童 市 1174.7 199.2 16.9 63.5 5.4 780.7 66.4

寒河江市 862.2 178.5 20.7 72.5 8.4 452.0 52.4

  農林水産省HPによりデータ収集

2  尾花沢市の農業粗生産額推移(単位:100万円)

農業粗生産額 構成比(%) スイカ 構成比(%) 肉用牛 構成比(%)

1997 10,630 5,209 49.0 2,774 26.1 1,167 11.0

1998 11,470 4,856 42.3 3,275 28.6 1,195 10.4

1999 11,260 4,810 42.7 3,360 29.8 1,240 11.0

2000 10,480 4,550 43.4 2,900 27.7 1,340 12.8

2001 9,460 4,130 43.7 2,570 27.2 1,230 13.0

2002 9,790 4,090 41.8 2,410 24.6 1,860 19.0

2003 8,920 4,500 50.4 1,710 19.2 1,410 15.8

2004 9,370 4,140 44.2 2,510 26.8 1,430 15.3

2005 8,770 4,050 46.2 2,120 24.2 1,410 16.1

2006 9,260 4,020 43.4 2,590 28.0 1,390 15.0

  尾花沢市ホームページより

雪が解けた4月はじめにはマルチの上にビニールトンネルを加え,さらに温度上昇を 促進する。

 ②苗の購入と植付け: スイカの苗は専門業者から購入する。4月下旬から5月上旬にかけ てビニールマルチに穴を開けて苗を植え付ける。苗の植え付けは約1週間の間隔を開 け,3回くらいに分けて行う。これは,その後の作業や収穫時期が重ならないように することが目的である。

 ③蔓の整頓:5月下旬になると,スイカの蔓が延びビニールトンネルに溢れるほどになる。

このころ,1株あたり4ないし5本の蔓を残して剪定し,さらに延びた蔓をUターン させて風通しと日当たりを確保する。蔓が伸びるに従い複数回Uターンさせる。

 ④摘果:5月末〜6月始めに花が咲くので,人工的に受粉させる作業をする。下旬までに 摘果を行う。通常1株に2個程度の実を残して育てる。時期を見計らってビニールト ンネルは撤去され,露地栽培に切り替わる。

 ⑤登熟と収穫:7月に入ると急速に実が肥大してくる。上旬に肥大したスイカの下に台を 据え,全体に色づきがよくなるように適宜実を回転させ,均等に日光が当たるように する。さらに,梅雨明けとなって日中の気温が高い時期になると,太陽熱による過剰 な温度上昇を避ける目的で,スイカにワラをかぶせる。収穫は7月20日頃から始まり,

村山市では7月25日頃から8月10日過ぎまでが最盛期,尾花沢市では,8月中・下 旬がピークとなる。

 ⑥出荷: 出荷のシステムは「農協共販」という共同出荷と「任意組合」という自主出荷 の二つのルートがある(間宮:2009)。

農協共販: 多くの農家は収穫したスイカを共同選果場に運び,そこから農業協同組 合を通して市場に送られる。このルートは農家にとって作業負担が少ないものの,品 種や製品の品質について様々な取り決めによる制約があるほか,費用がかかる。

任意組合: 農家が個人あるいはグループで自主的に出荷・販売をする方式は,手数 料などの費用が少ないので直接収入が増えるが,労働負荷が大きい。

4.スイカ栽培地域の分布

 次に,対象地域における土地利用の詳細を調べた。スイカ畑は前記のようにビニールトン ネルを設置して行われるので,その季節に撮影された空中写真をみると明確に読み取ること ができる。写真1は,村山市本飯田のスイカ畑である。写真撮影時は苗の植え付けから約1 か月経過しており,整然とビニールトンネルが並んでいる。そして,写真2aは同じ場所の

空中写真(google earthによる)で,ビニールトンネルのスイカ畑が灰色の縞模様として写っ ているので,判別は容易である。同時に,その周囲にある果樹園(この場所ではサクランボ)

についても判別が可能である。写真を見ると,サクランボは樹木なので陰の長さで一般の野 菜畑と区別され,その樹影が等間隔に並んでいることから雑木林や杉林などと明確に異なる。

ただし,サクランボとリンゴの区別などは困難なので,ここでは果樹園として一括して判定 した。写真2aからスイカ畑(白)と果樹園(赤)をそれぞれ多角形ポリゴンに置き換える と写真2bのようになる。

 このようにして空中写真からスイカ畑と果樹園を抽出し,分布図を作成した(図2)。対 象地域は北は尾花沢市から南は東根市の北部までである。スイカ畑は北半部,果樹園は南半 部と明確に別れていることが分かる。白色で示されたスイカ畑は前述のように尾花沢盆地の 中央に分布する河岸段丘上に集中し,その中心地では畑に使われている土地のほとんどがス イカ栽培に供されている状況である。本図の作成に当たっては明確にビニールトンネルが読 み取れたものに限定したが,空中写真の撮影日にはまだビニールトンネルが無く,黒いビニー ルマルチだけが縞模様として見えるものも多かった。その畑はビニールトンネルの設置がこ れから行われると推測されることから,それらを含めるとさらにスイカ畑の占有率は大きく

写真1 スイカの栽培風景と総合気象観測装置(村山市本飯田)

写真2b 村山市本飯田のスイカ畑(白)と果樹園(赤)

写真2a 上空から見た村山市本飯田の畑地

2 尾花沢盆地及び山形盆地北部におけるスイカ畑(白)と果樹園(赤)の分布

なるはずである。スイカ畑は大石田町および村山市の北部まで多く見られるが,それより南 へ向かって次第にまばらとなり,山形盆地に入ると急になくなる。ここにスイカ生産域の南 限が読み取れる。一方,赤色の果樹園は尾花沢盆地では全く読み取れないが,村山市域に入 るとまばらに分布するようになり,さらに南へ行くほどその面積は増加する。本図の範囲よ り南へ続く東根市や天童市では,さらに大規模な果樹園地帯が広がっている。図2から果樹 園の場合も北限があると見ることができ,村山市北部は両者の移行帯すなわちスイカと果樹 の混在する地域となる。このことが表1の生産額構成比率に表れている。なお,果樹園は中 央を北流する最上川の両側に形成された自然堤防に大規模なものが多く,東西の山麓部に形 成された小扇状地や緩斜面には小規模なものが断続している。ただし山形盆地における果樹 栽培の中心は,この図の範囲より南方にある乱川扇状地や立谷川扇状地である。

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