• 検索結果がありません。

第3章 座屈拘束メカニズムの検討

3.3 座屈拘束メカニズムを検証するための要素実験

3.3.3 軸力-軸変位関係

芯材と中鋼管の隙間sのみが異なる試験体4体(S03,S13, S35,S57)の軸力-軸変位関係について 比較・検討する。

実験で得られた軸力-軸変位関係を図 3.9 に示す。また,前述した弾性限軸力 N0.03,降伏軸力 N0.2,および最大軸力Nmaxの実験値一覧を表3.3に示す。図中には,各試験体のN0.03を●印,N0.2

を▲,Nmaxを■印で示している。また,隙間sが無限大に相当する芯材単体の実験結果について も示している。まず,Nmaxについてみると,芯材単体は中鋼管を有する他の試験体に比べて極め て小さな軸力(Nmax =11.1kN)で弾性座屈している。また,隙間sが異なる試験体4 体を比較する と,隙間sが最小の試験体S03のNmaxが58.5kNで最も大きく,中鋼管の降伏軸力(N2y=59.9kN) と同程度の値である。なお,各試験体とも Nmaxが芯材の降伏軸力(N1y=74.5kN)より十分小さく,

試験体計画時に意図した通り,芯材は軸降伏せずに限界軸力NCに達して全体座屈した。つぎに,

N0.03N0.2ついてみると,いずれの値も隙間sが小さくなるにつれて大きくなっており,3.2節

の式(3.4)で示した関係が実験で得られていることがわかる。また,N0.2N0.03に比べて 1.34~

1.55 倍大きな値であり,弾性限度を超えたひずみレベルでも概ね強度比(σ0.2/σ0.03=1.35)に応じ て軸力が増大していることがわかる。

図3.9 軸力-軸変位関係 0

20 40 60 80

0 2.5 5 7.5 10 12.5 15

Axial force[kN]

Axial displacement [mm]

N1y=74.3kN

S03 S13 N2y=59.9kN

S35 S57

Nmax (最大軸力)

N0.2 (降伏時:ε0.2到達時)

N0.03 (弾性限界時:ε0.03到達時) (芯材単体)

S57

軸変位[mm]

軸力[kN]

表3.3 各軸力の実験値一覧

隙間 弾性限界 降伏 最大 s N0.03 N0.2 Nmax

[mm] [kN] [kN] [kN]

S03 0.3 43.5 58.2 58.5

S13 1.3 36.2 50.4 57.2

S35 3.5 31.8 45.4 53.9

S57 5.7 24.6 38.2 48.5

芯材単体 11.6 試験体

名称

47

3.3.4 中鋼管ひずみデータの検討

3.3 節で示した座屈拘束メカニズムの妥当性をより詳細に確認するため,中鋼管(拘束材)ひず みデータについて検討する。

弾性限界時(N0.03到達時)における中鋼管の曲率分布を図3.10 に示す。図3.10 より,各試験体と も縁ひずみ(弾性限ひずみε0.03=1776μ)は同じであるにもかかわらず,隙間sが小さい試験体ほ ど曲率が小さくなっていることがわかる。また,いずれの試験体も部材中央(iii)の曲率が最も大 きく,両端に向かうにつれて小さくなっており,3.2節で示した検討モデルと同じ1次モードの 変形状態となっていることがわかる。つぎに,弾性限界時における部材中央(iii)の縁ひずみε0.03 を軸ひずみεtと曲げひずみεbに分割して図3.11に示す。図3.11より,隙間sが最も大きな試 験体S57では,εtとεbの割合が同程度となっている。また,隙間sが小さくなるにつれてεtの 割合が大きくなり,S03 試験体ではεtの割合が全体の約 9割を占めていることがわかる。これ は,隙間sが小さいほど中鋼管に作用する曲げモーメントが小さく,負担できる引張軸力が大き くなることを示しており(図3.12を参照),図3.9の結果(隙間sが小さいほどN0.03N0.2が大きく なったこと)と良く対応している。

軸ひずみ εt: 曲げひずみ εb

S03 1703μ 86μ

S13 1388μ 389μ

S35 1211μ 569μ

S57 937μ 857μ

0 100 200 300 400 500 600 700

-50 -25 0 25 50 75 100

Height from bottom end of middle tube[mm]

Curvature[×1061/mm] S13 (v) S03

S35 S57 (iv)

(iii)

(ii)

(i)

曲率[×106 1/mm]

中鋼管の下端からの高さ[mm]

図3.10 弾性限界時(N0.03)の 中鋼管の曲率分布

図3.11 弾性限界時(N0.03)の中鋼管中央(iii) の軸ひずみと曲げひずみの割合

(縁ひずみ:ε0.03=1776μ)

48

3.3.5 限界軸力NCの実験値と計算値の比較

3.2 節で示した式(3.6)の妥当性を確認するため,弾性限界時における限界軸力 NCの実験値 (N0.03)と計算値(0.03NC)と相関を図3.13に示す。図3.13より,隙間sが異なる試験体4体ともに,

実験値N0.03と計算値0.03NCが良く対応していることがわかる。

以上,芯材(圧縮材)と中鋼管(引張材)の関係を模擬した要素実験より,3.2節で示した折返しブ レース特有の座屈拘束メカニズムに基づいて誘導した限界軸力NC算定式の妥当性が確認された。

0 10 20 30 40 50 60

0 10 20 30 40 50 60 Experimental value :N0.03[kN]

Calculated value : 0.03NC [kN] S03

S35 S13 S57

計算値:0.03NC[kN] 実験値:N0.03[kN]

図3.13 限界軸力の実験値と計算値の比較 (弾性限界時)

ここで, 𝜀:縁ひずみ,𝜀対面:対面の縁ひずみ,𝜙:曲率,𝜀t:軸ひずみ,𝜀b:曲げひずみ

, 𝜀t= ቀ𝜀+𝜀対面ቁ 2Τ ,𝜀b= ቀ𝜀− 𝜀対面ቁ 2Τ

𝜙 = ቀ𝜀− 𝜀対面ቁ 𝐷Τ (3.7a),(3.7b),(3.7c)

中鋼管 中鋼管

(a) ひずみ計測位置

(v) (iv) (iii) (ii) (i)

=

縁ひずみ

軸ひずみ

曲げひずみ

+

=

縁ひずみ

軸ひずみ

+

曲げひずみ (b) 隙間が小さい場合 (c) 隙間が大きい場合 中鋼管

𝜀

𝜀対面 𝜀対面 𝜀

𝜀t

𝜀b

𝜀 𝜀対面

𝜀t

𝜀b

図3.12 軸ひずみと曲げひずみ

49

3.3.6 降伏点が不明瞭な鋼材のNC算定式の適用性に関する検討

3.3.5項で妥当性を示した限界軸力NC算定式:式(3.6)は,折返しブレースの中鋼管(拘束材)を

弾性状態と仮定して導出している。以下では,中鋼管が塑性加工等により降伏点が不明瞭で,降 伏応力に 0.2%オフセット耐力(σ0.2)を用いる場合における,式(3.6)の適用性について検討する。

3.3.5項の図3.13では,弾性限界時(σ0.03到達時)の実験値N0.03と,弾性仮定に基づく式(3.6)に σ0.03を代入した計算値0.03NCの対応が良好であることを示した。本項の図3.14では,部分降伏 を伴ったσ0.2到達時の実験値N0.2と,式(3.6)にσ0.2を代入した計算値0.2NCを比較する。図3.14 より,隙間sが異なる試験体4体ともに実験値が計算値を上回っており,安全側の評価となって いることがわかる。また,隙間 s の小さな試験体(S03,S13)では実験値と計算値の差が小さく,

隙間の大きい試験体(S35,S57)では実験値と計算値の差が大きい傾向がみられる。これについて,

図3.15に示すM-Nインタラクション曲線(円形中空鋼管,縁応力=σ0.2)の概念図により検討する。

図3.15中の[A]は弾性状態のM-N曲線,[B]は全塑性状態のM-N曲線である[3.6]。部分降伏時 のM-N曲線は,[C]のように[A]と[B]の中間に位置する。図3.15より,同じ隙間sにおける 軸力Nは,常に[A]≦[C]となることがわかる。また,隙間sが小さいと[A]と[C]の軸力 差が小さく,隙間が大きいほど[A]と[C]の軸力差が大きくなり,図3.14 の傾向と対応する。

以上より,中鋼管の降伏応力に 0.2%オフセット耐力を用いる場合,弾性仮定に基づく式(3.6) を適用すれば座屈拘束効果を安全側に評価できる。

0 10 20 30 40 50 60

0 10 20 30 40 50 60 Experimental value :N0.2[kN]

Calculated value : 0.2NC [kN] S03 S35 S13

S57

計算値:0.2NC[kN] 実験値:N0.2[kN]

図3.14 限界軸力の実験値と計算値の比較 (降伏時)

図3.15 M-Nインタラクション (円形中空鋼管,縁応力:σ0.2) N

𝑁yB

𝑁0.2

M 𝑀yሺB 0.2𝑁c 𝑀yሺ0ሻB

1 s

𝑀𝑝ሺ0ሻB 𝑁C

0.2

[A]:弾性状態 (計算値)

[C]:部分降伏時 (実験値)

[B]:全塑性状態