4-1 貯水池・貯水施設の現状と課題
(1)ジブチが進める貯水施設建設と対応技術
ジブチでは、2年前より大統領の発案による貯水施設の建設がジブチ市の南西約60kmに広が るグランバラ(GRAND BARA:砂漠状の平原)内及び周辺で進められており、調査期間中に6 箇所の建設後(2箇所)及び建設中(4箇所)の貯水施設を視察した。
1)貯水施設の構造・形状
ジブチ国内の現存及び計画中貯水施設の形状や規格には、その目的と設置条件により様々な ものがあるが、今回の調査で視察した大型の貯水施設には、①谷を土盛りの堤防で閉め切るも のと(写真4.1、4.2)、②円形や矩形に(仏やEUが支援したものが国内に約 20箇所ある)平 原内の低地(自然に水が集まる箇所を掘り下げ、周囲に土盛りするもの:写真4.3)との2つの タイプがある。また規模は、前者が100万㎥、後者が1万㎥程度であり、いずれも通年利用可 能な規模(最低)とされている。いずれの貯水施設もコンクリート施設は、導水部や洪水吐に 限られ、堤高(4m~5m)も低く日本国内で認識される所謂ため池に類するものである。また、
これまでどのタイプも1箇所あたり1,000万円前後の工事費で建設されている(現在アリ・サ ビエ(SLI-SABIEH)州内で、政府予算により閉め切り型2箇所、円形型1箇所が建設されてい る)。
サイト写真4.1 KOURTUMALEI
4.1-1 閉め切り堤と池側の状況(降雨前) 4.1-2 閉め切り提と池側の状況(降雨後)
4.1-3 貯水を利用した灌漑(メイズ)の試み 4.1-4 貯水池内の状況(降雨前)
4-2
サイト写真4.2 DOUDOUBALAYE
4.2-1 提全景(左岸より) 4.2-2 提全景(右岸より)
4.2-3 貯水池内と提(降雨前) 4.2-4 貯水池内と提(降雨後)
サイト写真4.3 (既存施設:GRAND BARA)
4.3-1 貯水池内部全景 4.3-2 導水工池側
なお、類似の貯水施設の建設は、1980年代にも行われており、1987年に施工され約10年で 決壊した閉め切り型の貯水施設を後日アリ・サビエ州ディグリの鉄道駅近くで視察したが、余 水吐は設置されていなかった(この施設については FAO が浚渫と改修を計画している:写真 4.4)。
また、アリ・サビエ州HOLHOL(ホロール)市の西側鉄道沿いでは、小規模(幅12m、奥行
き8m、深さ2mの掘り込み式のため池)な生活用及び家畜用貯水施設の建設も8戸の遊牧民の
参加により開始されていた。次官が昨年完成済みと説明した施設(KOURTIMALEI)は、法面 の整形・玉石被覆、洪水吐、取水施設等が未完成であるが、設置の見込みは無く、適用された
技術は、掘削、運搬、盛り土、締固めといった基本的な土工事に係るもののみに留まる。
なお、貯水池周辺の灌漑開発の可能性は相応に高いと判断されるが(貯水の利用に関する分 野は農業・森林局の担当となる)、具体的な進捗は見られず今後の課題であるとされている。
サイト写真4.4 (既存施設:DIGRI)
4.4-1 提の決壊状況1 4.4-2 提の決壊状況2
4-2 井戸による地下水を利用した灌漑施設
(1)既存施設
ジブチ市の南東10kmにあるDAMERJOG(ダメルジョク)村のATAR(アタール)地区(深 井戸)、及びDUDA(ヅダ)地区(浅井戸)の井戸を水源とする灌漑施設を視察した(写真4.5)。
ATAR(アタール)地区は、1986年にフランスが行ったプロジェクトの施設で、4つの組合も その時に作られた。1km 離れた山側の深井戸から導水された用水により 8ha(2.5a×32区画)
の圃場を灌漑し、暑季(6月-9月)にはメロン、スイカ、胡瓜等の野菜やマンゴ、レモン、グ アバ等の果物、冷季(10月-5月)にはトマト、タマネギ、ピーマン、オクラ、ナス等の野菜 を栽培している。灌漑施設は政府が所有し維持管理も政府が行う。農家は年間1.2万DJF(7,000 円)の電気代と組合費8,750DJFを払い聞き取り農家では14万DJF(7万円)の収入を得てい た。この地区の場合水使用量は免除され、肥料、種子も政府から支給され、普及員による営農 指導を受けている。農地の狭さや、配水は組合毎にローテーションで行われるが3年前揚水ポ ンプを更新してから、取水量が減ったこと等が課題とされる。
サイト写真4.5 (アルタ州DAMERJOG)
4.5-1 深井戸(電気ポンプ揚水) 4.5-2 冷却・貯水池
4-4
4.5-3 幹線水路と分水工 4.5-4 圃場への掛け口
4.5-5 圃場1(メロン) 4.5-6 圃場2(マンゴ、グアバ、レモン)
DUDA(ヅダ)地区(20 戸の農家が組合を構成している)の浅井戸施設は(写真4.6)、個人
が所有し深さ 10m程の井戸からエンジンポンプでタンクに揚水して0.5ha ~1.0haの圃場を灌 漑している。地主は兼業農家で普段はジブチ市で働いている(警察官)。営農は冷季の野菜(ト マト等)栽培が中心。井戸は最近FAOの小規模農家を支援するプロジェクトにより改修された。
サイト写真4.6 (アルタ(ARTA)州DUDA)
4.6-1 浅井戸(水位-5m程) 4.6-2 圃場
(2)井戸、ソーラー発電ポンプ、貯水槽を組み合わせたユニット型灌漑
農業省には、今後高騰する燃料費の削減、省エネルギー、環境保全に貢献するソーラー発電 システムと井戸の揚水システムを組み合わせ、生活、牧畜、灌漑用水を総合的に賄うソーラー 発電によるユニット型灌漑の普及を進めるプランがあり、既存の井戸もユニセフの支援等によ りソーラーシステムによる揚水に置き換えられつつある。今後の井戸建設においては、この方
針に添った計画が実施されてゆくものと判断され、安価(注)で安定的に供給される灌漑用水の 確保が、これまで規模拡大と計画的な灌漑を困難にしてきたジブチ共和国農業の発展に貢献す ることが期待されている。
注: 経済性は、既存のエンジンポンプ、売電ポンプと比較して廉価、高機能、長耐用、低メンテナ ンスであるだけでなく、他の灌漑、営農方式との総合的な経済性比較を要する。
4-3 他ドナーの動向
(1)FAO
水セクターについては、援助手段が全体的に不足していると考える。他の機関も協力してい るがFAOとしても農業省と進める計画を持っている。例えばプラモデス(プログラム名)は、
第一次産業に直接介入するもので食料、給付金の支給を行っている。FAOのジブチ事務所は2 年前に設置され、以前はエチオピア事務所が管轄していた。現在の事業は旱魃、食料・原油価 格の高騰を背景とする緊急性の高いものである。ジブチ国民の脆弱化(食料事情の悪化)が進 んでおり、2008年にはそれまで7万人であった脆弱層が13万人に増加した。全人口70万人中 70%が脆弱層もしくはそれに近い。これまで食料の調達が困難な脆弱層は農村部に多かったが 現在はジブチ市内にも及んでいる。国際機関ではUNDPがこの問題について主体的に取り組ん でいるが。現時点で水と食料分野では食料安全確保の緊急性が高い。
(2)ユニセフ(Unicef)
ユニセフは、1980 年代初頭以降ジブチにおいて様々なプログラムを実施して来たが最近は 2006 年からの旱魃による緊急支援の必要が発生しそれに対応するプログラムとして村落部で の飲料水供給(給水車による給水を含む)を行っている。政府とも定期的に協議している。ユ ニセフはまた、2007年~2009年の2年間EUが行っている村落給水事業にも€200万を出資し ている。
ユニセフジブチ事務所のスタッフ25名のうち2人が水セクターを担当するが、医療、教育、
農村のコミュニティにも水は必要で、年間予算の 1/3($100万)が水関連である。水利施設の 維持管理が大切だが、一部で管理組合設立が試みられているが一般的に村人は水は無料と認識 しており、積極的な参加が困難である。水セクターには多くのドナーが参加しており、相互の 調整が必要で定期的な会合(ドナー会合)が持たれることを望んでいる。
表流水の利用については、現在用水の水源の 95%が地下水で、地表水は、5%しか利用され ておらず殆どが海に流下している。複数のドナーが参加しようとしているが事業実施にあたっ ては投入額に見合った採算性が必要で、大統領や大臣が強い意向を示すダム作りを性急に進め ることには疑問がある。地域的な開発の優先順位は、深井戸建設と同様にジブチ国北西部にあ ると考えられている。
(3)EU
EUは、これまで様々な支援をジブチに行っており、上下水道分野では、DJIBOUTI(ジブチ)
市内の下水処理場建設や管路の改修を行っている。今のところ、全国レベルでの地下水利用に 係るマスタープラン作成調査は行われていない。
4-6
水分野では現在は2つのプロジェクトに参画している。
① ユニセフの行っているワジ川沿いの地方村落浅井戸プロジェクトに€200万を提供し、2009 年度末までに40箇所のソーラーシステム設置が計画されている。
② 今後ジブチ市を洪水の被害から守るためのアンブリ川水系整備計画の実施を予定している
(当案件の具体的な内容については、調査・設計を行ったコンサルタントから聞取り(注)
を行い、調査・計画の資料を入手している)。
注:10年に一度発生する大洪水を防止するため、EUは、ジブチ市郊外でのアンボウリワジの分 流施設建設と、上流へ5箇所程度(250万m3~300万m3)の小規模ダム建設を行う。現在は、
施工を管理するコンサルタントと施工業者の入札準備段階で、工事は 2011 年に開始予定。
EU と世銀が€120~150 万を出資する。ダム建設の目的は、洪水調節、地下水涵養、放牧へ の表流水利用(ダム湖の水を直接利用)で、大きく貯水位が変動し、取水が難しいため灌漑 計画は含んでいない。
4-4 我が国による協力現況と本調査での活用可能性(無償、開発調査、その他)
これまで我が国からの表流水の貯留施設及び灌漑開発に係る協力実績は無い。
本調査での活用可能性については、開発調査と同調査期間中でのマスタープランの作成、及び Feasibility Study(F/S)調査、さらに、それらを踏まえた無償資金協力事業の実施が考えられる(詳 細は、5-2参照)。