Dest.Cluster No.(k=7)
4.5.4 議論
本モデル検討は,スマートフォン利用を前提にした様々なサービス企画 や,研究開発における課題設定,効果検証に対して,現実的に考慮すべき前 提条件や評価条件となる有益なデータを提供することを目的としている.本 節では,本モデルの有用性,特徴量選択によるさらなる分析の可能性,本モ デルの制約について,それぞれ議論する.
モデルの有用性
本項では,各々の役割においてどのように本モデルを活用できるか例示 し,モデルの有用性を議論する.
はじめに,サービス企画における活用例を議論する.本モデルは年齢,性 別などのユーザ属性とその規模を定量的に示したものであるため,例えば新 規サービスの企画においては,サービスの対象ユーザ層を把握するためのセ グメンテーション分析が可能になり,見込まれる市場規模を推定する根拠 データとして利用可能である.さらに,セグメントと紐付いた利用パターン の傾向を参照することで,対象ユーザ像やサービスの利用シーンを想像し定 義されるペルソナ44)の構築を容易にすることができる.また,アプリを通 じたサービスの提供を検討する際には,自身のサービスに対するユーザの接 触機会が十分に得られるか熟慮することが重要である.本モデルが示すアプ リなどの利用パターンは,類似または関連サービスの利用頻度・時間だけで なく,ユーザの趣味嗜好も読み取れるものであるから,対象ユーザの時間的 な利用機会の有無と,サービスの受容性も検討することができる.
次に,研究開発における活用例を議論する.本モデルでは,付録のユー スケースのように,
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日単位でのスマートフォン利用を総合的かつ詳細に示 しており,使用するアプリとその利用頻度・時間や端末の諸設定などから,ユーザ利用に起因する端末挙動を再現しやすいデータである.このため,例 えば関連研究で述べたようなスマートフォンの
OS
やミドルウェアレベルにおける技術課題への取り組み2, 16, 17) において,本データを前提に,アプリ のインストールなどの検証用端末のセットアップを行うことで,より実効的 な仮説検証や効果検証を行うことができると考える.我々の活用例の一つ としては,本モデル検討の結果に基づき,スマートフォン各機種のカタログ に掲載する電池持ち時間を評価するためのシナリオとして採用*2された45). フィーチャーフォン時代の評価では,通話・ブラウザといった代表的なアプ リ単体での使用可能時間を示すのみであったが,
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日を通した利用を考慮し た評価ができたことで,端末購入を検討するユーザにわかりやすい情報を提 示するとともに,端末開発においても妥当な根拠に基づく目標値を設定する ことができた.本モデルは,実際のユーザによるスマートフォン利用の特徴を,デモグ ラフィック属性と端末利用パターンを同時に定量的に示すものであるから,
サービス企画,研究開発いずれの取り組みにおいても,着目した特徴に対す るアプローチによる効果範囲を検証できるデータであると考える.
特徴量選択によるさらなる分析の可能性
本論文では,
4.1.1
に前述したように1
日のアプリカテゴリ毎の使用時間 を主な特徴量として採用し,1
日のスマートフォン利用を分析したが,下記 の通り,アプリ使用を細分化するなど,別の考え方で特徴量を定義すること でさらなる洞察を得ることができると考える.今後の課題として,本論文で 用いたデータセットに対しても適用し,さらに詳細なスマートフォン利用実 態の把握に繋がる分析を行う予定である.1
回のアプリ使用時間に基づく特徴量の細分化同一のアプリでも,
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回の使用時間が数秒と短い場合も数時間と長時 間にわたる場合もあり,ユーザのなんらかの状況によって使用時間が 異なることがある21).アプリ毎に分布は異なると考えられるが,ア プリ使用時間の値域毎に別々の特徴量としてクラスタリングを行うこ とで,使用時間の大小を考慮したパターン抽出ができる.このように*2 現在のシナリオは,本論文に記載の調査結果に基づくものではなく,以後の調査により 更新されている
アプリの使用時間の傾向とその原因となる要因を明らかにすること は,サービス提供者やアプリ開発者にとってサービスの提供機会を検 討する上で有益な情報になると考える.
日・時間帯に基づく特徴量の細分化
平日や休日,あるいは朝・昼・晩のように,日や時間帯によってユーザ の生活シーンが異なることに着目すると,各シーンにおいて異なるア プリ使用傾向が得られる可能性がある.実際の生活シーンは,各ユー ザの職業や年齢など別の要因にも依存するため,単純に日や時間帯だ けで定義することは難しいと考えられるが,分析の詳細化を行うため の分類軸のひとつとして意味があると考える27).
ユーザコンテキストに基づく特徴量の細分化
ユーザの周囲に誰がいるか,どこにいるか,何の目的で行動している かなど,日時以外のユーザコンテキストにも依存してスマートフォン 利用傾向は変化すると考えられる.端末で取得可能なログから直接的 にユーザコンテキストを得ることは難しいが,例えば,端末が接続す る携帯電話基地局や無線
LAN
アクセスポイントとの接続状況の変化 を単位時間ごとに観察することで,ユーザの静止・移動状態を推定す ることはできる.移動中におけるスマートフォン利用実態を考察でき ることは,位置情報利用を伴うアプリの新規検討からアプリによる サービス品質の向上を検討するなど,コンテキストを考慮することで 各アプリに特化したデータの活用ができる.ハードウェアリソース消費に基づくアプリカテゴリ分類 サ ー ビ ス 利 用 や ユーザ行動の理解という観点から,本論文では
Google Play
のカテゴ リと手動での判別に基づくアプリカテゴリ分けを行ったが,これらの 観点を除外すると,CPU
,無線,ストレージ,GPS
などのセンサデ バイスなどハードウェアリソースの消費量によってアプリをカテゴリ 分けすることも可能である.例えば,このカテゴリ毎の使用時間を特 徴量として1
日のスマートフォン利用をクラスタリングすることで,分析結果からユーザの行動を直接的に把握できる情報が欠けてしまう が,結果的にユーザの実利用を考慮しつつ,ハードウェアリソース観
点でより正確なスマートフォン利用パターンの抽出ができると考えら れるため,
CPU
のスケジューリングなどOS
レベルの最適化問題に 有用な知見が得られることが期待される.制約
本項における議論の最後に,本モデルの制約事項について述べる.本調査 では,日本国内において大きなシェアを占める
Android
端末ユーザを調査 対象に実施したものであるが,調査期間が限られていること,全ての機種,OS
,通信事業者を網羅したものではないため,本モデルの利用にあたって は以下の制約がある.はじめに,調査期間が限られていることから,アプリ をはじめスマホ利用には季節に依存した傾向が含まれている可能性がある.また,将来的に新たな人気アプリが登場するなど流行に依存してスマホ利用 が変化していく可能性があるため,今後の検討においてモデルをアップデー トしていく必要がある.さらに,一部のアプリには通信事業者固有のものが 存在する.今回,
3.2.3
に示した主要なアプリの使用状況からは事業者固有 のアプリは現れていなかったが,収集データの網羅性という観点では限定的 であるため,前述の流行依存性の問題とあわせて,今後の検討においてさら に網羅性のある調査を実施したい.次に,本モデルが示すデータは,個別のサービス・製品や要素技術の仕様 やユースケースに特化した課題解決を行うために必要な情報を全て網羅して いるわけではない.例えば,位置情報の扱うアプリの動作試験において試験 シナリオを作成する際には,どのような頻度で位置情報測位を想定するかな ど,本モデルでは網羅していないため,別途,詳細なアプリ挙動を収集する 分析ツール29)などを用いて分析する必要がある.
4.6 まとめ
本章では,実際のユーザの利用実態を考慮したスマートフォン利用モデル を作成するため,アプリカテゴリ毎の使用時間など計