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第6章 結論

6.2 結 論

ここまで議論してきた実践的な交渉プロセスは統合的交渉ができるという前提

の基のプロセスである。したがって、研究目的の「統合的交渉を合意に導き、獲得 利益を最大化させる実践的アプローチの仮説生成」に立ち返り、より一般的な交渉 という視点で一連の交渉プロセスを再検討し、実践的なアプローチとして示す。そ れを本研究から示唆される仮説として結論とする。以下に図を交えて説明する。

6. 1 一般的な交渉に拡張した交渉アプローチ

図 6.1 はこれまで考察を重ねてきた知見をまとめて一般的な交渉におけるアプロー チとして拡張したものである。以下に①〜③の分岐点ごとに解説する。

①の分岐点は

Lax & Sebenius(1987)の「等価の選択肢を相手に選ばせる」アプロ

ーチの結果、統合可能かどうかで分岐する。例えば交渉事項が3つの場合、等価の 選択肢の組み合わせは3通りある。総ての場合を相手にどの選択肢が望ましいか選 ばせる。そこで明らかに片方が望ましいと選択すれば優先度の相違があり、統合的 交渉が可能な可能性が高い。一方、総ての場合で相手が選択に困ってしまえば、優 先度の相違がある可能性は低いため、統合的交渉が行えない可能性が高い。その場 合は交渉の枠組みを捉え直して変化させる創造型交渉を検討し、獲得利益の増大を 目指すべきである。

②の分岐点は相手が数値情報の要求に対して相手が開示するかしないかで分岐 する。この数値情報を求めるアプローチを最初に行う理由がある。それは相手が数 値情報を開示してくれるなら最も早くより確実に与えられた枠組みでの最大の獲 得利益を得られる統合的合意に達するからである。数値情報によって優先度の相違 に気がつき、互いに数値情報を交換することで、脱アンカリングを確実に行うこと ができる。図 6.1 において常に上方向に分岐していく交渉プロセス、つまり統合的 交渉が可能で数値情報が開示される状況は理想的である。しかし、実際は統合的合 意に向けたジレンマが存在するため、その様な交渉プロセスを辿ることは容易では ない。多くの交渉が②において数値情報が開示されず、下方向に分岐して行くと考 えられる。そこで本研究の実験から示唆された「適切な譲歩とフィードバックの取 得」アプローチを行う。これによって、統合的交渉が可能だという認識を双方で共 有できる。このアプローチ以前は数値情報の開示はされなかったが、認識の共有が できたことで、より協調的になっている可能性がある。互いに開示した方が互いの 獲得利益を高められると考えを改めているかもしれない。ここで再度数値情報を求 めるべきである。

③の分岐点は再度数値情報を求めて相手が数値情報を開示するかどうかで分岐 する。開示してくれれば、互いに数値情報を交換し、脱アンカリングを行い、最後 に統合型交渉を検討する。開示されなければ、できる限り脱アンカリングを行い、

最後に創造型交渉を検討する。

目の前の交渉が統合的交渉可能かどうかは分からない。よって図 6.1 の様にいか なる場合も統合的交渉の可能性を模索するべきである。統合型交渉が可能ならば、

相手との信頼関係など、状況に応じて本研究で示唆されたアプローチを実行し、獲 得利益の最大化を目指す。統合的交渉が不可能な場合も、創造型交渉の可能性を検

討し、与えられた枠組みの中で最大の獲得利益を目指すべきである。

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