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1.地域包括ケアシステムにおける養護老人ホームのあり方
養護老人ホームは、環境上の理由及び経済的理由により居宅において養護を受けること が困難な高齢者に対し、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよ うにすることを目的として、社会復帰の促進及び自立のために必要な指導及び訓練その他 の援助を提供する施設である。施設運営においては、地域や家庭との結び付きを重視する ことも謳われている。
今回実施した事業者向けアンケート調査では、地域包括ケアシステムの中で養護老人ホ ームが果たすべき役割として、「住まいに困窮する低所得高齢者への居所の提供」とともに、
「DV や虐待被害を受けた高齢者の保護」、「介護や在宅生活に不安を抱える軽度要介護者 の受け皿的役割」、「困難な生活課題を抱える高齢者の受け皿的役割」、「在宅生活が困難な 高齢障害者の受け皿的機能」などが挙げられている。
自治体向けアンケート調査でも同様の結果が得られており、地域包括ケアシステムの中 で養護老人ホームは、低所得・生活困窮高齢者等を対象とした居住・生活支援のセーフテ ィネット機能(=保護的機能+自立支援機能)が期待されているといえよう。
一方で、養護老人ホームからは、自治体や地域包括支援センターに対して「措置制度や 養護老人ホームに対する理解不足」、「入所者の確保(措置控え)」、「情報共有機会の不足」
等の課題とともに、入所した高齢者への継続的な関わりを希望する意見も複数寄せられて おり、連携面で様々な課題が浮き彫りとなっている。
【提言】
地域包括ケアシステムでは、医療や介護、各種生活支援サービス提供基盤のほか、高齢 者等が住み慣れた地域で安定的な生活を送る基盤となる住まいも重要な要素である。
様々な生活課題を抱える低所得・生活困窮高齢者の住まい確保が社会的課題となってい るなか、長年にわたって在宅生活が困難な高齢者を受け入れて生活支援を行ってきた養 護老人ホームは、地域にとって重要な役割を担っている。
市区町村においては、地域で生活する低所得・生活困窮高齢者等の生活支援水準(地域 の福祉水準)をより一層高めることを目指して、養護老人ホームが地域包括ケアシステ ムの一員としての役割を効果的に発揮できるよう、積極的に連携強化を図ることが求め られる。
また、養護老人ホームは様々な生活課題を有する高齢者への自立支援・生活支援に取り 組み、その支援ノウハウを蓄積している。例え、養護老人ホームへの措置入所基準に該当 しない場合であっても、市区町村は養護老人ホームの有する支援ノウハウを活かして、
施設との協働によって困難な生活課題を抱える在宅高齢者の生活を支援する取組が必要 ではないか。
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2.サテライト型養護老人ホームのあり方に関する提言
(1)サテライト型養護老人ホームの活用方策(可能性)と課題 1)活用方策について
アンケート調査結果では、サテライト型養護老人ホームの活用方策として、事業者・自 治体ともに「比較的自立度の高い入所者の身近な居所としての活用」や「福祉的な支援が 必要な低所得高齢者にとって身近な地域での受け皿」が上位を占めた。さらに、事業者調 査では、「地域移行が可能な入所者の生活訓練の場」、「地域住民が活用可能なコミュニティ スペース」としての活用可能性を指摘する回答も少なくない。
また、「既存施設の個室化・バリアフリー化対応を図る際に不足する定員枠を確保できる」
への回答割合は、個室化が図られていない施設では 2 割弱を占めており、これらの施設で 建替えや大規模改修を行う際にはサテライト型施設の活用も選択肢のひとつとなり得るこ とが窺える。
なお、今回のアンケート調査では、サテライト型養護老人ホームの配置職員が少ないこ とを前提に「比較的自立度の高い入所者」を想定したが、これはあくまでもひとつの例示 に過ぎない。サテライト型施設の特性(小規模、個室、地域の中に立地等)や地域のニーズ を踏まえた支援を展開することにより、既存の養護老人ホーム(本体施設)では対応が困 難であった支援ニーズにも応えられる可能性も出てくる。そのため、入所者像は固定的な ものではなく、サテライト型施設の活用方策も運営者の工夫によって様々な展開が可能に なると考えられる。
図表 4-1 サテライト型養護老人ホームの活用方策(再掲)
施設 市区町村 比較的自立度の高い入所者の身近な居所として活用できる 66.2% 43.4%
地域移行が可能な入所者の生活訓練の場として活用できる 44.6% 21.5%
介護保険居宅サービス事業所等との併設により地域の福祉拠点として活用できる 31.9% 27.1%
地域住民が活用可能なコミュニティスペースとして活用できる 39.1% 15.6%
既存施設の個室化・バリアフリー化等を図る際に不足する定員枠を確保できる 13.4% 7.2%
福祉的な支援が必要な低所得高齢者にとって身近な地域での受け皿が増える 48.4% 47.8%
【提言】
養護老人ホームは、地域包括ケアシステムの中で低所得で困難な生活課題を抱える高齢 者に住まいと自立に向けた各種生活支援を提供することが求められている。
サテライト型養護老人ホームは、小規模で個室環境が整備された施設であり、大型施設 での生活や相部屋での生活に馴染まない入所者はもとより、地域移行が可能な入所者、一 時的な入所を必要とする在宅高齢者など、様々な高齢者の生活支援の場として有効に活用 できるのではないか。また、コミュニティスペース等の設置により、地域住民との関わり の中で入所者が新たな関係性を構築できる場としての活用も有効と考えられる。
92 2)サテライト型養護老人ホームの運営課題
一方で、サテライト型養護老人ホームの運営課題としては、施設からは「職員の確保」
や「事業採算性」、「サテライト型施設で生活できる利用者の確保」が指摘されている。
また、自治体からは「職員数が少ないことによるサービスの質低下」とともに「事業採 算性」の不安が指摘されている。
【提言】
職員確保については、高齢者福祉分野全般にわたる課題であり、既に国や各自治体にお いても様々な取組がなされている。それらの取組を更に推進することが求められる。
なお、現在の福祉人材養成においては、措置制度や養護老人ホームに関する教育の比重 が低くなっている。現代における措置制度の意義や自治体の役割を再定義する必要がある のではないか。
事業採算性については、入所者の確保とともに、支援を提供するための職員配置のバラ ンスを取ることが必要となる。
既存のサテライト型介護老人福祉施設では、訪問介護事業所や認知症対応型共同生活介 護事業所、小規模多機能型居宅介護事業所等を併設して機能の相互活用を図るなど効率的 な運営に努めている法人も少なくない。サテライト型養護老人ホームにおいても、居宅サ ービス事業所等の併設を前提とした運営を想定することが現実的ではないか。
(2)サテライト型養護老人ホームの本体施設
今回実施したアンケート調査では、サテライト型養護老人ホームの本体施設として「養 護老人ホームを本体施設として認めるのがよい」と回答した割合は、施設では 42.6%、都 道府県 46.2%、指定都市・政令市 30.9%、一般市区町村 21.4%であった。
一般市区町村の中でも養護老人ホームのある市区町村では 24.0%、また措置制度を積極 的に活用している市区町村では 38.3%が「養護老人ホームを本体施設として認めるのがよ い」と回答している。
逆に「認める必要がない」は施設では 8.4%、都道府県 5.1%、指定都市・中核市 14.5%、
一般市区町村 9.7%であり、養護老人ホームを本体施設として否定する割合は肯定割合の半 分以下であった。(自治体回答では「わからない」が 4~5 割を占めた。)
養護老人ホームを本体施設として認めるのがよい理由は、「同一種類の施設が本体施設 であればサテライト型養護老人ホームの効率的な運営が可能」が施設では 70.6%、自治体 では 81~88%を占めている。
【提言】
今回の調査結果からは、サテライト型養護老人ホームの本体施設として養護老人ホーム を認めることを否定する回答は施設・自治体ともに 1 割程度にとどまっている。また、同 一種類の施設であれば効率的な運営も期待できることを踏まえれば、養護老人ホームをサ テライト型養護老人ホームの本体施設として認めるべきではないか。