時提示の方が連続提示よりも高かった。この結果は,前章で述べたMameche&Julo
(1998)の調査結果と同じであり,2題の比較でも,ある程度の効果は期待できる。
しかしながら,統計的な有意差は見られない。このことから,解答前にただ単に問題を 比較させるだけでは問題スキーマの構成に十分でないことが分かる。そこで,実際の授業 では,問題を比較させる際に似ているところや違うところを考えるよう指示したり,学級 で話し合ったりする必要がある。また,本調査では,解答,ヒント,解き方などの指導は 全く行っていない。つまり,問題を解く前の比較だけであった。このような問題を解く前 の比較だけではなく,各問題の解き方を理解した後に改めて問題を比較し,問題構造の類 似性について学級で話し合うなどして問題構造をまとめるといった指導法も考えられる。
2.比較用紙の分析
同時提示の第1群と第2群の児童が行った問題を比較する活動を比較用紙の記述をも とに分析した。分析の観点は,児童が問題の同型性を認知したかどうかである。しかし,
第1群においても第2群においても「問題が似ている」「同じような問題」というような記 述が多く見られた。
そこで,問題比較が問題スキーマの構成に寄与したかどうかを判断するために,問題タ イプの類似性(例えば「2つ(2題)とも2つの量を合わせて,片方がもう1っより大き くて,それぞれの答えを求める問題」)や解法の類似性(例えば「問題の内容は長さを求め るか重さを求めるかの違いがあるだけで,計算の仕方は同じになる」)に関する記述が見ら れたかどうかを分析の観点とした。ただし,単に「解法が同じ」という記述に関しては,
数字や叙述形式などの表面的な類似性から解法が同じであると考えた可能性があるので問 題の同型性を認知しているとは見なさなかった。つまり,問題タイプの類似性や解法の類 似性に関する記述が見られたものをr構造の類似性に関する記述あり」と捉えた。
表4−4は比較用紙の記述内容と各問題の正答率を示したものである。
表4−4 比較用紙の記述と各問題の正答率
第1群(同時:同じ数値) 56人 構造の類似性に関する
記述あり:16人(29%)
解答順序(正答率):人数[%1
ひも → 体重
(67%) (67%)
体重 → ひも
(86%) (86%)
:9人[56%1
:7人[44%】
構造の類似性に関する
記述なし:40人(71%)解答順序(正答率):人数[%]
ひも →体重
(33%) (38%)
体重 →ひも
(31%) (50%)
:24人[60%1
:16人[40%1
第2群(同時:異なる数値) 57人 構造の類似性に関する
記述あり:26人(46%)
解答順序(正答率):人数[%]
ひも →体重
(90%) (95%)
体重 →ひも
(67%) (83%)
:20人[78%1
:6人[23%]
構造の類似性に関する
記述なし:31人(54%)解答順序(正答率):人数[%]
ひも →体重
(47%〉 (47%)
体重 →ひも
(36%) (3696)
:17人[55%1
:14人[45%1
問題構造の類似性に関する記述は,第1群より第2群の方が多く,統計的に有意な傾向
が見られた(κ2=3.51,d f=1,p〈0.1)。さらに,構造の類似性を記述した児童の 方が解答順序に関わりなく,いずれの問題でも正答率が高かった。また,表には示してい ないが,上で述べた問題タイプの類似性に関しては,第1群では56人中4人しかその記 述が見られなかったが,第2群では57人中14人の児童にその記述が見られ,統計的に有 意な差が見られた(κ2ニ4.11,d f=1,p<0.05)。
このことから,問題を比較させる際には,数値が同じ問題よりも数値が異なる問題の方 が問題スキーマの構成に有効であることが分かる。本調査では,問題の解法が同じ同型問 題を用い,問題の叙述形式もほぼ同じであることを考慮すれば,この数値が異なる方がよ いという結果は,今後どのような問題を比較させることが有効であるかを考える上で大変 興味深いものである。どの程度の類似性を有した問題を比較させることが問題スキーマの 構成に有効であるかは今後明らかにする必要がある。
第 5 章
SBI(Schema−BasedInstruction)による問題スキーマの構成
本章では,SBI(Schema・Based Instruction)を行った先行研究を概観し,問題比 較を明示的に扱う指導法の可能性について考察する。そして,逆思考を要する加減文 章題の指導場面において,SBIをもとにした指導デザインを提案する。
本章の構成は,以下の通りである。