• 検索結果がありません。

調査研究事業

ドキュメント内 ●表紙_年報2017年度 (ページ 102-114)

7

7-2 共同研究

竹内利夫「中辻悦子の人間像の変遷」

亀井幸子「美術と音楽を結びつけた鑑賞・表現活動について」

徳島の美術に関する通史的研究

本館では開館以来、地域の美術を通史的に掘り起こす作業を続けている。個々の作家に関する研究成果 を、順次特別展や所蔵作品展で紹介するとともに、平成12年度には、開館10周年記念展「近代徳島の美術家 列伝−明治から第二次大戦まで」として、戦前期の状況を概観する展覧会を開催した。平成28年度には、「所 蔵作品展 徳島のコレクション2016年度第Ⅱ期 テーマ展示 戦後徳島の美術−焼け跡からの出発」を開 催し、終戦直後から県内美術グループの活動が本格化する1950年前後までの研究成果を公開した。

今後も作家や作品に関する情報を積極的に収集し、その研究成果を所蔵作品展や特別展などさまざまな 機会をとらえて公開していく。

収蔵作家資料の調査と公開

本館では、収蔵作家の内主要な作家に関しては、美術作品だけでなく作家の遺品や旧蔵書等の二次資料 の寄贈を受け入れ、整理を行っている。作家研究や作品研究にとどまらず、地域の美術や広く日本近代美術 史の研究を進める上で重要な手がかりとなり得る資料群である。

それら二次資料は、本館データベースで基本的な情報を公開するとともに、財団法人原菊太郎基金から寄 贈を受けた原菊太郎旧蔵書に関しては『特別集書目録Ⅰ原菊太郎文庫』(平成7年度刊)として、山下菊二 の遺族から寄贈を受けた作品群に関しては『徳島県立近代美術館所蔵 山下菊二作品目録(平成23年3 月受贈)』(平成23年度刊)として刊行してきた。

平成28年度は、すでに収蔵し、一応の整理を済ませている山下菊二、團藍舟の作品を、本格的な公開に向 けて再点検を行った。

収蔵作品の再調査

当館の収蔵作品・資料は、開館準備を行っていた昭和59年4月に最初の受け入れを行って以来30年以上 が経過し、収蔵点数も9,000点を超えている。この間、作品・資料の保存については細心の注意を払い、必要に 応じて保存、修復処置を施してきた。しかしながら、近年、作品の保存・修復の世界では、戦 後の石 油 化 学 系 の素材を使用した作品の経年変化など、新たな課題が生じており、より慎重な状態の点検が求められている。

そのため、展示や貸出の依頼時だけでなく、順次必要に応じて作品を再度精査することで状態調査を行い、作 品にまつわる情報についても蓄積に努めている。

7-3 研究実績

江川佳秀

凡例

1 個別研究の概要 2 図書、図録等 3 論文

4 報告書

5 解説、翻訳他

6 学会発表

7 講演会、各種研究会での発表 8 社会的活動

9 教育活動

1 個別研究の概要

「山下菊二素描作品の再検討−戦中から戦後直後にかけて」

本館では平成23年度に、山下昌子氏から山下菊二の旧アトリエに遺されていた作品や資料類を一括して ご寄贈いただいた。その内、素描、スケッチ、スケッチブックについては合計854点と点数が多く、制作時期や場 所も多岐にわたっていることから、制作の意図や、描かれた主題すら判然としないものが少なくない。そこで本研 究では、戦中から戦後間もない時期の素描、スケッチ、スケッチブック類に的をしぼり、当時の山下の生 活や思 想的立場から下記の4グループに大別して再整理と検討を試みた。

(a)従軍期(1939-42年)

山下は二度招集を受け従軍したが、これらは最初の従軍期のスケッチである。輸送船の中や戦場で戦友や 上官の姿を描いたものや、前線で戦場や部隊の野営地の様子を描いたもの、後方部隊があった台湾で街の 風景やカフェの女給、白人捕虜をモデルに描いたものなどが含まれる。多くは速筆のスケッチだが、一部は現場 でのスケッチをもとに後日スケッチブックに描き直したものがある。従軍画家ではなく実際の兵士が描いた戦場風 景としては、きわめて希なものである。

(b)焼け跡風景(1945年末)

二度目の招集中に終戦を迎えた山下は、その年のうちに東京に戻り、年末は南千住界隈で焼け跡風景を 描き続けている。鉛筆のスケッチに水彩で色彩を施したものが多い。技法的には前後の時期と大差がないが、

描かれた内容と画面が与える雰囲気はこの時期だけが孤絶し、即興的なスケッチというより、1点ずつが独立し た水彩画としての趣をみせている。印象に過ぎないが、社会のあり方と生活が一変し、この時期の山下は、目の 前の現実を凝視し、描き続けることしかできなかったかと思える。

(c)東宝撮影所・東宝争議(1946-48年)

山下は戦争中から勤めていた東宝映画に復職した。山下がいた東 宝 撮 影 所では、1946年から労 働 争 議 が始まり、山下もその渦中に巻き込まれていった。労働組合の学習会等を通じて、それまで山下が 抱えていた 社会への違和感への思索を深め、山下の思想的立場を方向づけることになった時期である。この時期のスケッ チには、映画の制作風景を現場でスケッチしたもの、映画のパンフレットや看板絵のために描いたと思われるス ケッチなどの他、1948年に勃発した第3次東宝争議のバリケード内で描き続けたスケッチがある。バリケード内で 描き続けたスケッチは、進駐軍による直接介入の直前まで続く。組合員集会の様子や夜警団の様子、突入に 備えて組合員たちが備えた防御装置などである。第3次東宝争議の様子をバリケード内部からとらえた数少な い視覚資料でもある。

(d)プロレタリア芸術運動、山村工作隊(1948-55年)

1947年に入党した日本共産党の方針に従い、山下は各地の労働争議や共産党の集会、小山内ダムや砂 川米軍基地反対闘争の現場に出かけ、スケッチを残している。山下は問題を広く国 民に訴えかけるための広 報物の制作を期待されていたらしく、北 海 道 夕 張 炭 鉱 労 働 組 合のために制 作した紙 芝 居『われらの労 働 組

合』(全23枚)の下絵なども残っている。これらの中にはプロレタリア美術のあり方を意識したと思われる農婦を描 いた実直な写実画があるが、一方ではその後の山下の制作につながる小山内ダムのスケッチから発展させて いったシュルレアリスム風の風景画も含まれている。

2 図書、図録等

江川佳秀、小森將晴(共編著)『日本赤十字社徳島県支部創立130周年記念展 今に生きる「人道博愛の 心」−美術に見る日本赤十字社の歩み−』同展実行委員会(刊) 平成29年4月

*小森將晴氏:日本赤十字社徳島県支部事務局長 3 論文

「巴里の日本画家」『2016年度 美術館活動助成報告書集』美術館連絡協議会 平成29年5月 pp.43-58

5 解説、翻訳他

「日本赤十字社徳島県支部創立130周年記念展 今に生きる「人道博愛の心」美術に見る日本赤十 字 社 の歩み」『徳島県立近代美術館ニュース』101号 (平成29年4月号) pp.1-2

「美術館からのエッセイ 日本赤十字社 徳 島 県 支 部 創 立130周 年 記 念 展 今に生きる「人 道 博 愛の心」− 美術に見る日本赤十字社の歩み−」『寄稿者コラム 千言万語』日本中央テレビ株式会社ホームページ 平 成29年5月 http : //www.jctv.ne.jp/column/mori/201705.html

「描かれた博愛 日本赤十字社徳島県支部創立130周年記念展(上)大和田富子<征途を前に>」『徳島 新聞』 平成29年5月12日(朝刊)

「描かれた博 愛 日 本 赤 十 字 社 徳 島 県 支 部 創 立130周 年 記 念 展(中)東 郷 青 児<ナース像>」『徳 島 新 聞』 平成29年5月13日(朝刊)

「描かれた博 愛 日 本 赤 十 字 社 徳 島 県 支 部 創 立130周 年 記 念 展(下)<従 軍 看 護 師を送る寄 せ 書き>」

『徳島新聞』 平成29年5月16日(朝刊)

「日赤と名画 日本赤十字 社 徳 島 県 支 部 創 立130周 年 記 念 展から(上)小 磯 良 平<集い>」『徳 島 新 聞』

平成29年5月25日(朝刊)

「日 赤と名 画 日 本 赤 十 字 社 徳 島 県 支 部 創 立130周 年 記 念 展から(中)織 田 廣 喜<シャンゼリゼ 風 景>」

『徳島新聞』 平成29年5月26日(朝刊)

「日赤と名画 日本赤十字社徳島県支部創立130周年記念展から(下)東山魁夷<晴れゆく朝霧>」『徳島 新聞』 平成29年5月27日(朝刊)

「各県事例報告 日本赤十字社徳島県支部創立130周年記念展 今に生きる「人道博愛の心」−美 術に みる日本赤十字社の歩み−について」『四国美術館会議 平成28年度事業報告』 平成29年6月 n.pag.

「所蔵作品紹介 石丸一<山>」『徳島県立近代美術館ニュース』第103号 (平成29年10月号) p.6

「所 蔵 作 品 紹 介 島あふひ<月 光 聖 母 子>」『徳 島 県 立 近 代 美 術 館ニュース』第104号 (平 成30年1月 号)p.6

「アート散策11 絵と書の関係、再考」『徳島新聞』 平成29年11月20日(朝刊)

「美術館からのエッセイ 所蔵作品展 徳島のコレクション 平 成29年 度 第3期 特 集 石 丸 一・島あふひ 兄妹」『寄稿者コラム 千言万語』日本中央テレビ株 式 会 社ホームページ 平 成29年12月 http : //www.

jctv.ne.jp/column/mori/201712.html

「石丸一<山>」『いのち輝く』第87号(2018春号) 公益財団法人とくしま あい ランド推進協議会 7 講演会、各種研究会での発表

「美術の魅力」平成29年度シルバー大学校美馬校 平成29年10月17日 美馬市脇町町庁舎

「事例報告1 地域美術との取り組み−原鵬雲、山下菊二など」全国美術館会議地域美術研究部会第7回 会合 平成29年11月30日 徳島県立近代美術館

ドキュメント内 ●表紙_年報2017年度 (ページ 102-114)

関連したドキュメント