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平成 28 年経済センサス及び対応する V 表における処理概説

7.2 調査対象外産業の扱い

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まず,製造業及び,商業において産出額を推計するには,在庫の算出も含めて試算する 必要がある.この点に関しては,前述の在庫品評価調整の節にて論じている.

次にSNAにおいて商業における算出額は,商品の販売額ではなく,商業マージンを対 象としており,「商業マージン=商品販売額-商品仕入れ額」として定義される.この点に 関しては, 「6.7章 マージン推計」において詳しく扱っている.

経済センサスをCT推計に用いていない部門

製造業,サービス業,商業以外の部門に関しては,経済センサスをCT推計に用いてい ないためその推計手法が公には存在していない.その為,本稿では,サービス業と同様の 従業員数による売り上げの補定を行ったうえで,その売上の総和をCTとして扱う.

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することとする.副業の分解の手法に関しては,「平成23年(2011年)産業連関表 第13 回 産業連関技術会議 配布資料(1) 経済センサス-活動調査のデータを利用した国内生 産額の推計について 経済センサスから得られる副業データをIO部門に分解する方法案及 び留意点 Ⅰ 基本的な計算方法」において,以下のように説明されている.

組替集計から得られる主業ベースの部門別売上高Aを用いて部門別の比率Bを作 る,この比率を,ひな形・統合分類ベースの総額しか分からない副業の売上高Cに乗 じて,部門別の副業推計値Dを計算する.

留意点

① 地域表作成の観点も踏まえ,可能な範囲で都道府県別に計算し,その積み上げを もって全国値とする.

② 副業として行えないことが明白な部門については,比率計算から除外する.

同資料から引用 一部筆者編集

この「副業として行えないことが明白な部門」に関しては,同資料中 「参考資料1 CT 推計における経済センサスデータの利用予定(現時点での見込み.今後の変更有)」にお いて,基本分類ごとにそれが,「他産業を主業とする事業所が,副業として行うことが困 難」か否かが一覧表の形で掲載されており,獣医業,下水道,公共放送などが,副業困難 部門として設定されている.ただし,当該資料は,表題の通り確定前の見込みであり,実 際の設定は異なっているものと考えられる.実際,同会における議事概要では,

例えば、「トラック・バス・その他の自動車」について、副業困難部門とされていな いが、製造業以外の事業所で「トラック・バス・その他の自動車」の生産が可能とい うことか.特に製造業については、本日の資料で示されたもののほかにも、副業困難部 門があると考えられる.

→産業格付については、一次統計においても難しい課題である.例えば、大規模に電 気製品の生産・販売を行っている企業について、産業格付上、商業とされた場合、企 業活動の基本になっている製造業の活動は副業なのかという問題もある.そういった意 味で、主業・副業の区分は、様々な課題をはらんでいる.

→副業困難部門については、本日の御指摘を踏まえて、定義も含め、改めて整理さ せて頂く.

同資料,pp.3より引用

といった議論が掲載されており,実際の推計時には大きく変更されていると考えられる が,筆者の探す限りではこの点に関する公表資料は存在しないものと思われる.

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基本的な推計手法は,先にみたように,県ごとに,副業別の総売上高に,事業所産業 別・調査品目別売上高の比率を掛けることで,副業の分解がなされるが,同資料 「Ⅲそ の他の留意点」では,22区分の内,CT推計に経済センサスが用いられていない部門に関 しては,副業データの分解作業は行わないとしている.本稿では,これらの部門に関して も,経済センサスの値を用いて,副業の分解を行うよう設計する.

7.2.1.2 副業把握の改善案

本稿の主題の一つが,現行のセンサスの値を用いて,どの程度細かい部門のV表が推計 できるかという点に関するものであるが,同資料において,「細品目の構成についてCTの 構成過程で変動する可能性があること」,「副業が困難か否かについて,基本分類ごとにし か判断していないこと」から,「副業データの分解は,基本分類の単位で行う」ものとし ている.したがって,現行のセンサスの組替集計の範囲では,基本分類がV表(S表)を 構成可能な最小の部門分類であるといえる.しかし,この2点に関しては,事前にそれぞ れを定義することで,解決できることから,原理的にはより細かい部門での推計が可能で あることも示唆されている.

県別に集計することに関して,同資料 「Ⅱ 比較データの作成」では,「県ごとに計算 した結果を積み上げて全国値にすることとしているが,県ごとの特徴が,どの程度影響を 及ぼしているかについて,現時点で検証することはできない」とある.この現時点という のは,平成28年経済センサス集計前という意味であろうと推測される. したがって, 現在 においては,既に県別の特徴が検証されているものと思われるが,その結果に関する資料 は見つけることができなかった.いずれにせよ,このように集計単位をある程度の同質性 を仮定して小さくすることは集計上有用であると思われ,地域ごとに産業は異なる特徴を 持つというのは案に産業技術仮定を否定していることとなる.その観点からすると,一点 現行の推計方法には不合理な点が見受けられる.それは,V表の推計に当たって組替集計 を経由して,一度集計されたものを編纂するという形をとっている点である.現在では,

経済センサスの個票レベルの情報を一度事業所産業別事業別売上額及び,事業所産業別調 査品目売上額の形で集計し,その比率を用いてV表を作成している.これはいうなれば同 一の産業に属する商品は同一の技術構造を持つという商品技術仮定を用いていることを意 味するが,先の地域区分によって産業技術仮定を否定したのと同様に,商品技術仮定を置 かないような推計手法を取り入れる態度の方が一貫性があるといえる.現在このような形 をとっているのは,経済センサスの集計を独立行政法人 統計センターが請け負い,組替 集計を用いてV表の推計を総務省が行うという体制によるものであると考えられるが,経 済センサスから一貫して,V表を推計し,事業所毎の特性によって一定の区分をつけた上 で,副業の分解等を行うことで,商品技術仮定を置かないV表の推計が可能であると思わ

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れる.本稿では,その実際の試算を行わないが,今後の研究課題として,残しておきた い.

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