1.各国・地域の制度の特徴
各国・地域の制度で、特徴的な部分は以下のとおりである。
(1)シンガポール
・通常実体審査と、優先権主張の基礎となる特許等がある場合に行う修正実体審査とがあ り、審査請求期限は、出願日又は優先日からそれぞれ36か月及び54 か月である(特許 規則43(1)、(3))。
・シンガポールは、グローバルPPHに参加しており(一部の国とは2国間PPHを締結)、 他国からの審査結果等に基づいて早期審査を図っている。
・実用新案制度はない。
(2)インドネシア
・実体審査での承認又は拒絶の決定に期限があり、審査請求日又は、審査請求が公開期間 満了前のときは公開期間満了日から 36 か月以内に行われなければならない(特許法 54 条(a))。公開期間は公開日から6か月に定められている(特許法第42条、第44条)。
・実用新案制度は、小特許制度として規定(特許法第VIII章)されており、特許制度を準用 する部分が多く、公開制度、実体審査請求及び実体審査がある。
(3)フィリピン
・出願の公開と同時に調査書を公開する。調査書とは、発明の新規性及び進歩性を査定す る際に考慮に入れることができる書類であって当該調査書作成時点で庁が利用すること ができるものを記載したものである(知的財産法第44.1条、特許規則第701.1条)。
・実用新案の保護対象に方法が含まれる(知的財産法第21条、第108条)。
(4)ベトナム
・形式審査において、方式要件及び明らかに単一性や発明としての特許性がないこと等を 審査する予備審査が行われる。
・実体審査の処理期限があり、審査請求が公開前のときは公開日、請求が公開後のときは 請求から18か月以内である(知的財産法第119条(2)(a))。
・実用新案は、特許と保護対象は同一である(知的財産法第4条(12)、省令1第25.3条)。実 体審査が行われるが、進歩性は審査項目に含まれない。
(5)タイ
・実体審査請求期間は原則として公開から5年(特許法第29条)であるが、出願を公開する 時期は規定されていない。
・実用新案制度は、小特許として「特許法第 III 章の 2」に規定されており、方式審査の みがある。公告日から1年以内に利害関係人は新規性及び産業上利用可能性について審 査請求ができるが、進歩性は審査項目に含まれない。
(6)マレーシア
・実体審査に、通常実体審査と、外国等での優先権主張の基礎となる出願がある場合に行 う修正実体審査とがある。審査請求期限は原則としていずれも出願から2年(特許規則第 27条(1)及び第27A条(1))であるが、猶予の申立により、通常実体審査は出願から5年3 か月、修正実体審査は出願から5年まで延長することができる(特許規則第27B条(2)及 び(3)第)。
・実用新案の保護対象に方法が含まれる(特許法第17条)。
(7)台湾
・「一創作二出願」、すなわち、以下の要件を満たす特許出願及び実用新案出願をした場合、
TIPO よりいずれかの出願を選択するよう通知され、特許出願を選択した場合は、実用 新案権は特許出願が公告された日から消滅する制度がある。
条件:「同日出願」、「同一出願人」、「同一創作」、「出願時に一創作二出願の声明」及 び「実用新案権を取得し且つ実用新案権が当然消滅又は取消されていない」(専 利法第32条、2014年1月1日施行)
・実用新案は実体審査をせずに登録される(専利法第113条)。
1
産業財産権に関する知的財産法の一部条項を詳細に規定し、その施行ガイドラインを提供する政府の2006年9月22日 付政令第103/2006/ND-CP号の施行ガイドラインを提供する省令(科学技術省第01/2007/TT-BKHCN号)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/fips/pdf/vietnam/sangyou_syourei.pdf(日本語版)
(最終アクセス日:2015年2月5日)
http://www.wipo.int/edocs/lexdocs/laws/en/vn/vn010en.pdf (英語版、WIPOホームページより)
(最終アクセス日:2015年2月5日)
http://www.moj.gov.vn/vbpq/Lists/Vn%20bn%20php%20lut/View_Detail.aspx?ItemID=14027 (ベトナム語) (最終アクセス日:2015年2月5日)
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ࢀ ࡿ(119᮲ 㺂120᮲ 㺂 22᮲))
31
2.統計情報
最近 10 年間の、各国・地域の特許及び実用新案の出願件数及び登録件数は以下のとお りである。グラフは、全調査対象国・地域(7か国・地域)のもの及びASEAN 6か国のもの の2種類である。件数は、WIPOのホームページ2 (台湾はTIPOのホームページ3)中のデー タを用いた。「―」は当該ホームページにデータが記載されていないことを表す。
(1)特許の出願件数
【表5-1:特許の出願件数】
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 シンガポール 8,585 8,605 9,163 9,951 9,692 8,736 9,773 9,794 9,685 9,722 インドネシア 3,668 4,304 4,612 5,134 5,133 4,518 5,630 5,830 ―― 7,450 フィリピン 2,696 2,972 3,257 3,473 3,313 2,997 3,393 3,196 2,994 3,285 ベトナム 1,431 1,947 2,166 2,860 3,199 2,890 3,582 3,560 3,805 3,995
タイ 5,373 6,340 6,261 6,818 6741 5,857 1,937 3,924 6,746 7,404
マレーシア 5,442 6,286 4,800 2,372 5,303 5,737 6,383 6,452 6,940 7,205 台湾 41,919 47,841 50,111 51,676 51,909 46,654 47,442 50,082 51,189 49,218
【図1-1:全対象国・地域の特許出願件数】 【図1-2:ASEAN 6か国の特許出願件数】
図1-1によれば、台湾の特許の出願件数は、最近10年間を通して、他の6か国の約4 倍以上であることがわかる。
図1-2によれば、ASEAN 6か国の中では、シンガポールへの出願が多いことがわかる。
タイにおいて2010年に出願件数が急激に減少しているのは、2009年12月24日付けで
2 WIPOのホームページ中のデータ http://www.wipo.int/ipstats/en/#data (最終アクセス日:2015年1月20日)
3 台湾については、TIPOのホームページのデータを用いた。
http://www.tipo.gov.tw/public/Data/46614241571.pdf (最終アクセス日:2015年1月20日)
0 10000 20000 30000 40000 50000 60000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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TW 0
2000 4000 6000 8000 10000 12000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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PCT条約に加盟したため、PCT出願を利用した出願がされ、タイへの出願件数としてカ ウントされなかったためと思われる。2012年にはそれ以前と同等の件数が出願されている。
マレーシアにおいて2007年に出願件数が落ち込んだのも、2006年8月16日付けでPCT 条約に加盟したため、タイと同様の状況になったものと思われる。
(2)特許の登録件数
【表5-2:特許の登録件数】
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 シンガポール 5,976 7,530 7,393 7,478 6,286 5,609 4,442 5,949 5,633 5,575 インドネシア ―― ―― ―― ―― 1,811 ―― ―― ―― ―― ――
フィリピン 1,453 1,642 1,196 1,787 838 1,679 1,153 1,135 1,111 2,207 ベトナム 698 668 669 725 666 706 822 1,006 1,068 1,182
タイ 716 553 1121 948 966 846 772 900 1,008 1,149
マレーシア 2,347 2,508 6,749 6,983 2,242 3,468 2,160 2,353 2,460 2,660 台湾4 20,464 20,626 23,228 22,218 12,867 14,138 16,345 20,025 25,536 40,251
【図2-1:全対象国・地域の特許登録件数】 【図2-2:ASEAN 6か国の特許登録件数】
図2-1によれば、台湾は、他の6か国よりも出願件数が多いが、図2-1によれば、登録 件数も多い。2008年に登録件数が減少したが、徐々に件数が減少し、2012年には件数が 回復している。
図2-2によれば、マレーシアについては、2006年及び2007年に登録件数が増加してい るが、2006年8月16日付けでPCT条約に加盟したために出願件数が減少したことに関 係している可能性がある。
4
台湾は、2004年の専利法改正により、2004年は「Approve」と「Grant」の合計数をカウントした。
0 10000 20000 30000 40000 50000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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TW 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000
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(3)実用新案の出願件数
【表5-3:実用新案の出願件数】
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 シンガポール
5
インドネシア 209 195 268 243 248 289 642 292 -- 349 フィリピン 592 546 541 427 545 544 621 674 715 775 ベトナム 165 248 236 220 284 253 255 247 245 273
タイ 1,454 1,652 2,062 1,435 1,515 1,467 1,328 1,342 1,486 1,609
マレーシア 97 75 77 78 98 61 81 107 87 145 台湾 21,518 23,226 23,279 22,715 23,953 25,032 25,832 25,170 25,636 25,025
【図3-1:全対象国・地域の実案出願件数】 【図3-2:ASEAN 6か国の実案出願件数】
図3-1によれば、台湾への出願は非常に多く、2009年以降は年間25,000件程度の出願 がされている。
図3-2によれば、ASEAN 6か国の中では、タイへの出願が多く、年間1,500件程度と なっており、他国の2倍程度になっている。
フィリピンは2007年以降、徐々に出願件数が増加している。
マレーシアは、特許出願件数は比較的多いのに対して、実用新案の出願件数が少ない。
これは、特許と同様に実体審査が必要であり、進歩性要件は判断されないがその他の要件 は特許と同様であること、期間延長申請すれば最大出願から20年間権利を維持できるが、
延長申請の際に実施が要件となっている等、実用新案権を取得するメリットが少ないため と思われる。
5
シンガポールには実用新案に該当する制度がない。
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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TW 0
500 1000 1500 2000 2500
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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(4)実用新案の登録件数
【表5-4:実用新案の登録件数】
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
シンガポール
6
インドネシア ―― ―― ―― ―― 99 ―― ―― ―― ―― ――
フィリピン 660 310 300 773 457 457 303 395 422 500 ベトナム 69 74 70 85 75 64 ―― 56 78 92 タイ 392 609 791 902 711 494 685 928 902 868 マレーシア ―― ―― ―― ―― 132 ―― 17 39 41 31 台湾 14,064 30,118 19,407 20,769 23,411 23,591 23,935 24,037 24,643 24,847
【図4-1:全対象国・地域の実案登録件数】 【図4-2:ASEAN 6か国の実案登録件数】
図4-1によれば、台湾での登録件数は非常に多く、年間2,500件程度であり、出願件数 とほぼ同じである。その理由は、台湾の実用新案の制度によるものと思われる。台湾では、
方式審査及び形式審査で要件を満たせば、登録査定が送達される。所定期間内に所定の料 金を納付すれば公告され、当該公告の日に実用新案権が付与される(専利法第115条、第 120条で準用する第52条)。形式審査は、実体審査に該当するものであるが、新規性及び 進歩性は考慮されない。
図4-2によれば、ASEAN 6か国では、タイでの登録件数が多い。2009年に500件程度 にまで減少したが、2011年には900件近くになっており、登録率は60%程度である。
6
シンガポールには実用新案に該当する制度がない。
0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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TW 0
200 400 600 800 1000
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
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