第3章 発掘調査報告
第2節 調査の方法と層序
調査区内における基本的な層序は上層より、水田を転用した現代の畑に伴う耕作土①層、水田の床 土にあたる酸化鉄分を多く含んだ淡黄茶色土②層、中・近世の耕作に伴う耕土と考えられる淡褐色土 の③層があるが、いずれも新しい時代に形成されたものであり、これより下は基本土層として調査区 全般にわたって普遍的に存在するような土層はなく、地山までの間に約30㎝の厚みで遺構の埋土や包 含層などが存在している(図6)。
今回主に調査の対象となった下層の遺構群は地山面及びトレンチ中央部に残る約30㎝の厚さを持っ た包含層(図6−46〜51層・図版13)の堆積後に遺構が掘削された様子が伺えるもので、各遺構の調 査終了後にはこの下層遺構面のベースとなった包含層についても調査を実施しているが、遺物の出土 量が非常に少なく包含層の形成時期を特定するには至っていない。
さて、調査は先述した③層除去後の面を上層とし、包含層・地山上面を下層として2面の調査を実 施している。上層の調査は先述した中・近世の耕作土である③層下面までをバックホーによって覆土 の除去を行い遺構の検出に努めた結果、細かな時期の特定は困難であるが、主軸を南北方向に持った 多くの素掘り小溝と調査区南壁側では東西方向を主軸とした素掘り小溝やごく浅い落ち込み遺構など を検出しているが、他に特筆すべき遺構などは検出されていない(図版2)。下層の調査は人力によ って上層遺構面の構成土を除去し、包含層及び地山面において調査を実施している。この面では弥生
図5 調査位置と周辺の小字(1/500)
0 25
m
向垣内坂田
カキ ゾエ
調査地
イデ ボリ
ツカ アイ
南壁 1.耕作土 2.淡黄茶色土(酸化鉄分多く含む) 3.淡褐色土 4.淡灰白色粗砂礫 5.淡灰白色粗砂(32層とほぼ同質) 6.暗灰色土 7.淡灰色土(やや褐色をおびる) 8.灰褐色土(砂質混じる) 9.淡灰黄色粘質土(粗砂混じる) 溝4埋土 10.淡灰色土(炭小片混入) 11.淡黄白色粘質土(淡灰色土ブロック混じる) 12.黒褐色土(土器片堆積層) 13.黒褐色粘質土(土器片堆積層。12層とほぼ同質であるが、 炭小片を含み、やや粘質をおびる) 14.淡灰褐色土(礫・淡黄色土ブロック混じる。撹乱?) 15.暗灰色粘土(小石・粗砂が混じり、遺物が若干見られる) 16.淡灰黄色粘質土(粗砂混じる) 17.淡灰白色粗砂(32層より少し粒子細い) 18.淡灰白色粗砂(18層よりやや黄色がかり、粒子が少し荒い) 19.淡褐色粗砂礫(土質が混じり、須恵器片含む) 20.灰色粘質土(やや褐色をおびる) 21.灰色粘質土(下部はやや砂質) 22.淡褐色粗砂 23.灰色粘土 24.灰褐色粘質土 土坑1最終埋没層 25.淡灰褐色粘質土(石混じる) 26.灰色粘土(砂礫混じる) 27.淡灰茶色粘質土 28.淡灰褐色粘土(小石・砂若干混じる)
1 2 3 3737
5555 575757 60 6566
7073 71 72
7474 75 767778787878 79 7979
68
04 m
L=86.00m
CC'
A
M.N E 区D 区C 区F 区
BB 区B' C'C 溝4溝3 溝2
溝1
P-1 P-2
P-3 P-5P-6 P-7
P-8 P-9 P-10P-11
P-12 P-13 P-15
P-14 P-16
土坑1落ち込み2 落ち込み1土坑2
A' 29.灰色粘土層(砂混じる) 30.灰色粘質土(砂礫混じる) 31.暗灰褐色土(粗砂混じる) 32.淡灰白色粗砂(5層と同質) 33.淡褐色土(粗砂若干混じる) 34.淡灰白褐色粗砂(褐色は酸化鉄分?) 35.暗灰褐色土 36.暗灰褐色粘質土 37.黒褐色土 38.暗灰褐色土(土の粒子やや細い) 39.灰褐色砂質土 40.淡灰褐色粘質土(砂混じる) 41.灰褐色粘質土(粘土・粗砂が混入) 42.灰褐色粘質土(灰色やや強い) 43.灰褐色粘質土(粗砂混じる) 44.暗灰色粘土 45.暗灰色粘質土 落ち込み1上層埋土 46.灰褐色粘質土 47.灰褐色粘質土(粗砂・炭小片若干混じる) 48.淡灰色粘土(やや褐色をおびる。土器片少ない) 49.淡灰黄色粘質土 50.淡灰黄褐色土(やや酸化鉄分多い) 51.暗灰色粘土 (小石・粗砂混じり、遺物若干見られる) 52.淡黄茶色粘土(地山) 53.淡黄茶色砂礫(52層が混じる。地山) 54.暗灰色粘土(地山)
拡張区南壁 55.淡黒褐色土 56.暗茶褐色土 57.暗灰褐色土 58.灰褐色土 59.暗黒褐色土(この層の下面より埴輪片出土) 60.淡褐色粗砂(土が混じり、下面に埴輪片多い) 61.暗灰色粘質土(45層より粘性強い) 62.黒褐色土(やや黄色がかる) 63.灰淡黄褐色土 64.灰色粘質土 65.暗灰色粘土(小石若干含む) 66.黒色粘土(小石含む) 落ち込み1下層埋土 67.暗灰色粘土(やや褐色をおびる) 西壁 68.淡黄白色粗砂 69.淡黒褐色土 70.暗灰褐色土 71.黒褐色粘質土 72.灰褐色粘質土 73.黒褐色粘土(柱痕) 74.黒褐色粘質土(やや褐色強く、赤みがかる) 75.黒褐色粘質土(暗くやや粘性をおびる) 76.黒褐色粘質土(上層より砂粒を多く含む) 77.灰褐色粘土 78.灰褐色粘土(77層に同じだが、やや褐色強い) 79.淡灰色土(粗砂混じる) 落ち込み1下層埋土
溝3 埋土 落ち込み 2埋土 溝1埋土 溝2埋土 土坑1埋土
包含層
落ち込み1上層埋土 落ち込み1上層埋土
4556 7
8 8
910 11121314 15 16
181719 20
21
22 232425 26 29 30
313233 34343435 3839 40
41 42 43444545464748 50
51 52 5353 54
5658 5959 61
62 6364 67
A'ABB' 12
22 3
1 49525227 28
36
37
1 2 355555555 60 65
37 66
57 575757 図6 調査区平断面図(1/80)
時代後期から古墳時代前期にかけての土坑や溝・落ち込み・ピットなどが検出されており、特に調査 区西端に位置する落ち込み1の南西隅部分からは比較的まとまって鶏形埴輪の破片の出土があったた め、遺構の性格の確認と遺物の採集を主たる目的として、人力によって南側へ約1.2m×3.6mの拡張 区を設定し、調査を行っている。
なお、下層遺構面検出後は調査の便を図るためトレンチの東西方向の中軸線上に4mピッチで杭を 打設しており、便宜的に西側からA〜G区と設定、この地区割を利用して遺構の命名や実測・遺物の 取り上げなどを実施している。
また、本報告で使用する方位については全て現地にてクリノメーターで記録した磁北(以下、本報 告においてはM.Nと表記)を使用しており、レベルは桜井市発行の都市計画図の地図上に記載された 基点付近から任意のレベルを移設したものである。いずれもが現地において緊急的に計測が行われた ものであり、国土座標などに基づいた正確な数値を示すものではないことを断っておく。 (橋本)