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5.1. 標本の識別・管理

病理部門または検査室で標本を画像化する際の標本モジュール(Specimen Module)の取り扱い について説明する。

5.1.1. 病理検査ワークフロー

標本という概念は、分析(検査)ワークフローや、分析時に下される決定、分析ワークフロー で使用される「コンテナ」と深く結びついている。

一般に、病理検査の対象となる材料は、(外科手術/処置や、生検、擦過、吸引といった)単一 の採取法で採取した(各種)生体組織や非生物材料(外科器具など)である。個々の検査依頼 は「受付(検査依頼)」と呼ばれ、LIS(Laboratory Information System)において一意の検査 依頼番号が付けられる。

外科医は、術中に採取した1つまたは複数の材料にラベルを付けて病理検査へ回す。外科医は、

ラベルを付けた採取組織を別々のコンテナで送るという形で、1 件の検査依頼に含まれる各採取 物(標本)を別個の「部位」として別々に分析・報告するように要求する。したがって、各部 位は検査ワークフローの重要な論理的構成要素である。各受付(検査依頼)において、それぞ れの部位は他の部位と別個に管理され、検査ワークフローおよび LIS 内において一意に識別さ れる。

病理専門医は、部位の最初の目視(つまり「肉眼」)検査時に、その部位に含まれる組織の一部 または全部について詳しい分析(通常は組織学による分析)を実施するか否かを決定できる。

分析を実施する場合には、部位を構成する材料の全部または特定のサブサンプルをラベル付き コンテナ(カセット)に入れることになる。一定の処理を施したのち、各カセット内のすべて の組織をパラフィンブロック(電子顕微鏡検査にかける場合はエポキシ樹脂)に埋め込み、最 終的にはそのパラフィンブロックをカセットへ物理的に添付して同じラベルを付ける。したが って、それぞれのブロックは、検査ワークフローで材料を処理/分離/識別する際の単位とな る重要な論理的構成要素であり、1 つのコンテナに収められた個々の材料に対応している。ワー クフローおよび LIS では、それぞれのブロックが一意に識別され、他のブロックと別個に管理 される。

技師は、1 つのブロックをごく薄くスライスして 1 枚または複数枚の切片を切り出すことができ る。切り出した切片は、それぞれ別個のスライドの上に載せられる。(注:部位から切り出した 材料は、ブロックの段階を経ずにそのままの状態でスライドに載せることもできる)。病理専門 医は、スライドに染色を施してから検査にかけることができる。したがって、それぞれのスラ イドは、検査ワークフローで材料を処理/分離/識別する際の単位となる重要な論理的構成要 素であり、1 つのコンテナに収められた個々の材料に対応している。ワークフローおよび LIS で は、それぞれのスライドが一意に識別され、他のスライドとは別個に管理される。

「部位」から「ブロック」の段階を経て「スライド」になるというのが今のところ最も一般的 なワークフローであるが、この基本テーマにはさまざまなバリエーションが考えられるという 点に留意する必要がある。特に LCM(Laser Capture Microdissection)をはじめとした分子病 理学用のスライドサンプリング(切り出し)法が広く使用されるようになってきているが、こ うした新たなワークフローにも対応できるよう、DICOM 規格では、標本 ID/処理の識別/管理 法に関して部位/ブロック/スライドのみに限定されない一般的な方法を規定しておく必要が ある。したがって、DICOM 規格では、一意に識別される「コンテナ内の標本」を言い表す方法と して包括的な表現方法を採用している。

5. 説明的な情報

5.1.2. 基本概念と定義 5.1.2.1. 標本

ある材料(または複数の材料を 1 つにまとめた集合体)が検査(診断)ワークフローにおける 1 つまたは複数の工程の実施対象ユニットとみなされ、かつ単一の処理対象ユニットとして一意 に識別されるものである場合、その材料(または、複数の材料を 1 つにまとめた集合体)を標 本と呼ぶ。

同じことを少し表現を変えて言い換えると、ある物理的実体(単一のユニットとみなされる 1 つの材料または複数の材料の集合体)が検査室によって一意に識別され、かつ検査(診断)ワ ークフローにおける 1 つまたは複数の工程の直接の検査対象である場合、「標本」はその物理的 実体によって果たされる役割と定義されるということになる。

この極めて基本的かつ高レベルな定義は、DICOM 標本モジュールの開発/実装にとって重要な 示唆を含むものである。そのため、この定義については更に詳しく述べる価値がある。

1. 単体の材料、または複数の材料を 1 つにまとめた集合体は、関係する検査(診断)処理工程 の実施中、ひとつのユニットとみなされる限り単一の標本として扱われる。言い換えると、

1 つの標本は、ワークフロー内で単一のユニットとみなされる限り、複数の物理断片を含ん でいても構わない。たとえば、複数の組織断片が 1 つのカセットに収められている場合、ほ とんどの検査室がその組織断片の集合体を 1 つの標本(1 つの「ブロック」)とみなすこと になる。

2. 標本を一意として識別しなければならない。標本には、検査室ワークフローにおいてその標 本を一意の検査対象として識別するための ID を付ける必要がある。ID のない実体は標本で はない。

3. 標本は検査室の(診断)ワークフローに沿ってサンプリング(切り出し)/処理される。サ ンプリング(切り出し)により新しい(子)標本の作製が可能である。こうした子標本は、

独立した(一意の ID を持つ)完全な標本であり、検査室の(診断)ワークフローにおける 1 つまたは複数の工程における直接の検査対象である。標本のこの特性(つまり、サンプリ ング(切り出し)によって既存の標本から新たな標本を作製できるという特性)は、(たと えば、外科から)送られてきた元々の検査依頼材料のみに「標本」という言葉の意味を限定 する一般的な定義の幅を広げるものである。

4. ただし、親に受け継がれる属性もある。たとえば、ホルマリン固定ブロックから切り出され た組織切片はやはりホルマリンに固定されたものであり、結腸切除部の近位断端切り出しブ ロックから切り出された組織切片はその近位断端組織からなるものであることに変わりな い。したがって、標本の記述には、その由来の記述が必要とされる。

5. 何を標本とみなすかは、検査室ワークフローで下される決定によって決まる。たとえば、典 型的な検査室では、1 つのブロックから切り出されて同じスライドに載せられた複数の組織 切片は(そのスライド番号によって識別される 1 つのユニットとして)単一の標本とみなさ れる。しかし、組織検査技師が各組織切片を別々のスライドに載せて(それぞれのスライド

5.1.2.2. コンテナ

標本コンテナ(単に「コンテナ」とも呼ばれる)は、検査(診断)工程で重要な役割を果たす。

すべてではないが、大部分の工程では、標本がコンテナの中に格納された状態で検査作業が行 われ、多くの場合、コンテナには格納されている標本の ID が付けられている。コンテナが標本

(たとえば、パラフィンブロックなど)と密接な関係を持つこともあり、(顕微鏡下での組織検 査など)場合によってはコンテナが光路(optical path)の一部になることもある。

コンテナには、検査作業や一部の画像処理(Whole Slide Imaging など)において重要な役割を 果たす ID が付けられている。DICOM の標本モジュールは、コンテナ ID と標本 ID を区別し、2 つを別個のデータ要素として扱う。多くの検査室では、各コンテナに収められる標本が 1 つだ けであるため、標本 ID とコンテナ ID が同じ値になる。しかし、複数の標本が 1 つのコンテナ に収められるというユースケースもある。そのような場合には、コンテナ ID と標本 ID が異な る値になる(5.1.3.5 を参照)。

コンテナは、多くの場合、複数の部品で構成されている。たとえば、「スライド」は、ガラスス ライドとカバーガラス、およびそれをつなげる「封入剤」から構成されたコンテナである。モ ジュールという概念の導入により、各部品を詳しく記述することが可能になる。

5.1.3. 標本モジュール(Specimen Module)

5.1.3.1. 適用範囲

標本モジュール(DICOM 規格書 PS3.3 を参照)では、DICOM 画像化で対象となる各検査標本を識 別・記述するために使用される、DICOM の正式な属性を定義する。標本モジュールは、当該の画 像を理解/解釈するために必要な標本属性と検査属性に重点を置いたものである。こうした属 性には次のようなものがある。

1. (特定の検査機関の内部および異なる検査機関の間で)標本を識別(指定)する属性。

2. 標本が格納されているコンテナを識別・記述する属性。コンテナは、検査工程において標本 と密接な関係を持ち、多くの場合、標本の ID を「伝達」する。また、顕微鏡像画像化にお いてはコンテナのガラススライドやカバーガラスが光路(optical path)に入ることもある ため、コンテナが画像処理と密接に関係する場合もある。

3. 標本の採取、サンプリング(切り出し)、および処理を記述する属性。標本の採取/サンプ リング(切り出し)/処理/染色がどのように行われたかを把握しておくことは、標本画像 を解釈する上で重要なことである。そうした検査工程を画像処理に組み込んだ強力な症例の 作成が可能である。

4. 画像の解釈に役立つ場合には、標本やその由来(上記 5.1.2.1 を参照)を記述する属性。

診断所見や解釈を伝達する属性は、標本モジュールによる処理の対象外である。DICOM の標本モ ジュールは、病理専門医のレポートにそのまま取って代わるものでない。

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