説得ゲーム
⃝ チープトークによる情報伝達の可能性.
➢ 利害対立が大きくない場合,部分的な情報伝達が可能.
➜ 一般的に完全伝達均衡は存在しない.
➜ 他タイプの真似をノーリスクで行える点が問題.
➱ メッセージはプレイヤーの利得に直接影響を与えない.
➢ チープトークであっても完全な情報伝達が可能な場合がある.
⃝ 私的情報の立証可能性 (verifiability).
➢ 私的情報の真偽を証明するための“証拠”が存在する状況.
➜ (例) セールスマンの持つ商品に関する詳細資料.
➱ 薬の効能に関するデータ.
➱ 保険契約の内容に関する契約書.
➜ 立証可能な情報: (hard information).
➜ 立証不可能な情報: (soft information).
⃝ .
➢ ハード情報に関する戦略的コミュニケーションゲーム.
➜ (persuasion games) と呼称.
➢ 送り手のメッセージはチープトーク(費用ゼロ).
➜ ただし と仮定.
➱ メッセージを送る際は“証拠”の添付が必須.
➱ 証拠の捏造は費用が掛かりすぎる.
➢ が送り手の戦略的決定要素.
➜ 開示する/しない証拠の選択.
➜ 詳細なデータを伴う/大雑把で曖昧なメッセージ.
➜ 点に留意.
➢ チープトーク・ゲームはソフト情報に関するやり取りを描写.
➜ (例) 個人の選好,主観的予想.
➜ 情報の真偽を第三者に立証するための証拠がない状況.
⃝ Milgromモデル.
➢ タイプ: θ ∈ Θ ≡ [0, 1].立証可能なハード情報.
➜ 共通事前分布: f(θ) > 0 ∀θ ∈ Θ.
➢ メッセージ: .
➜ P∗(Θ): Θの閉部分集合の集合.
➜ が利用可能なメッセージ.
➜ ことに留意.
➢ アクション: a ∈ A ≡ [0, 1].
➢ プレイヤーのvNM効用関数:
US(a) = (17)
UR(θ, a) = (18)
➜ 送り手の効用はタイプに依存しない.aについて単調的.
➜ 受け手の効用はチープトーク・ゲームと同様.
⃝ チープトーク・ゲームとのモデル上の違い.
➢ チープトーク・ゲーム: .
➜ 利用可能なメッセージが全タイプで共通.
➢ 説得ゲーム: .
➜ タイプが異なれば,利用可能なメッセージも異なる.
➢ 解釈としては, の違い.
➜ チープトーク・ゲーム: .
➱ メッセージの意味は均衡上で内生的に決まる.
➱ メッセージ集合がM = {狸,狐}でもOKということ.
➜ 説得ゲーム: .
➱ もしm ∈ M(θ)で,m /∈ M(θ′) ∀θ′ ̸= θならば,mは
“タイプがθだ”という意味を持つ.
➱ メッセージ自体の意味がオフパス上の信念に制約を課す.
⃝ (skeptical inference).
定義 5 .(Milgrom and Roberts, 1986)
信念P が以下の性質を満たすとき,受け手は を持つ と呼称する: ∀m ∈ M ≡ ∪θ∈ΘM(θ)について,
P(θ|m) =
{ 1 if
0 otherwise (19)
➢ 曖昧なメッセージは と解釈される.
➢ 曖昧なメッセージに対する受け手の思考回路:
➜ 「やましいことがなければ全開示出来るはずだ」
➜ 「送り手は自身にとって都合の悪い情報だから隠した」
➜ 「だから考え得る最悪のケースが起きたと想定しよう」
⃝ (続き).
➢ 懐疑的推測はオフパス上の信念に関する制約となる.
➢ 具体例:
➜ m1 = [1/4, 1] ⇒ .
➜ m2 = [1/4, 2/3] ⇒ .
➜ m3 = {1/4} ⇒ .
➢ 送り手の選好はアクションに関して単調的.
➜ aの値が大きいほど送り手の効用値は大きくなる.
➜ 懐疑的推測は として機能する.
➱ 曖昧なメッセージは,含有最少タイプとして評価される.
➢ 送り手は情報を隠すインセンティヴがない.
➜ 真の情報は必ずメッセージの中に含まれている必要有.
➜ タイプを“盛って”も全く考慮されない.
➜ 真のタイプ以下を含んでも効用値が下がるだけ.
⃝ (unraveling arguments). 定理 2 (Milgrom, 1981)
完全伝達均衡が存在し,それは一意なPBEである.
➢ 説得ゲームでは である!
➜ チープトークでも完全な情報伝達が可能.
➜ チープトーク・ゲームとの大きな違い.
➱ 本設定のチープトーク・ゲームでは無駄口均衡のみ.
➢ 加えて複数均衡の問題も発生しない!
➜ 均衡は完全伝達均衡のみ.
➢ この結果を と呼称する.
➜ 説得ゲームにおける代表的な結果.
⃝ 説得ゲーム研究の展望.
1. 全開示原理の一般化.
i. 選好の一般化.(Hagenbach, Koessler and Perez-Richet, 2013)
➢ 送り手の選好が必ずしも単調性を満たさない場合.
➢ “真似る→被真似”関係が循環を起こさないことと同値.
ii. 立証可能性の一般化.(Shin, 1994; Mathis, 2008)
➢ 情報の隠蔽が明らかであることが議論の大前提.
➢ 送り手の情報や立証能力が不完全な場合を考察.
2. コミュニケーション環境の内部化.
➢ 送り手は費用を支払って情報収集.(Che and Kartik, 2009)
➢ 送り手は情報構造を選択.(Kamenica and Gentzkow, 2011)
➢ 送り手は費用を支払って証拠取集.
(Eso and Galambos, 2013; Hedlund, 2012)
まとめ
⃝ では,非対称情報下における
メッセージのやり取りに関する駆け引きを分析する.
➢ 大きく以下の三つのクラスに分類される:
1. : メッセージの送信に費用が掛かる.
2. : のやり取り.
3. : のやり取り.
⃝ 解概念は を用いる.
➢ 行動の合理性と信念の整合性を要求.
⃝ シグナリング・ゲームのPBEは以下の二種類に大別される:
➢ : タイプ毎にメッセージが異なる均衡.
➢ : 各タイプが同一のメッセージを送る均衡.