第 5 章 測定
5.2 宇宙線ミューオンの寿命測定
5.2.5 誤差の評価
b) p0 = 281.3、p2 = 37.41に固定してp1を2×10−6、2.05×10−6、2.079×10−6、2.1×10−6
、2.15×10−6としχ2を計算した。
図 5.14: p1の誤差の評価
グラフより、∆χ2 = 1に対応する誤差は±0.51×10−7である。
c) p0 = 281.3、p1 = 2.079×10−6に固定してp2を36、36.5、37.41、38.5、39としχ2を 計算した。
37.5 38 38.5 39 39.5 40
35.5 36 36.5 37 37.5 38 38.5 39 39.5
χ^2
p2
図 5.15: p2の誤差の評価
グラフより、∆χ2 = 1に対応する誤差は±1.39である。
これらは、ROOTで決定された誤差と大きな差があることが次の表のように分かる。
表 5.3: 誤差の比較
parameter ROOTによる誤差計算 2つのパラメーターを固定したときの誤差
p0 ±70.1 ±約13
p1 ±3.57×10−7 ±約0.51×10−7
p2 ±3.092 ±約1.39
ミューオンの寿命を表わすp1に着目すると、ROOTによる誤差計算の方が2つのパラ メーターを固定したときの誤差に比べて約7倍大きかった。これは、パラメーター間の 相関があるためである。
そこで、p0とp1の相関を弱めるために、
dNdecay(t)
dt =p0e−(t−2.5×10−6)/p1 +p2 (5.4)
でフィットした。フィットには、t = 2.5∼10.45µsのデータを用いているので、2.5µsは 使うデータの初めの時刻である。
表 5.4: ROOTを用いた計算値 値
データ数 39
χ2 38.05
p0 84.53±6.126 p1 (2.079±0.357)×10−6 p2 37.41±3.092
ROOTによるフィットはパラメーター間の相関を考慮しているので、表5.1とパラメー ターの値も誤差もほぼ同じ結果になった。
a) p1 = 2.079×10−6、p2 = 37.41に固定してp0を78、80、83、84.53、86、88、90とし χ2を計算した。
37.5 38 38.5 39 39.5 40 40.5 41
76 78 80 82 84 86 88 90 92
χ^2
p0
図 5.16: p0の誤差の評価
グラフより、∆χ2 = 1に対応する誤差は±4.47である。
b) p0 = 84.53、p2 = 37.41に固定してp1を1.9×10−6、1.95×10−6、2×10−6、2.079×10−6
、2.1×10−6、2.15×10−6、2.2×10−6、2.25×10−6としχ2を計算した。
37.5 38 38.5 39 39.5 40 40.5
1.85 1.9 1.95 2 2.05 2.1 2.15 2.2 2.25 2.3
χ^2
p1 (μs)
図 5.17: p1の誤差の評価
グラフより、∆χ2 = 1に対応する誤差は±1.351×10−6である。
c) p0 = 84.53、p1 = 2.079×10−6に固定してp2を35.6、36、37、37.41、38、39、39.2と しχ2を計算した。
37.5 38 38.5 39 39.5 40 40.5 41
34 36 38 40
χ^2
p2
図 5.18: p2の誤差の評価
グラフより∆χ2 = 1に対応する、誤差は±1.39であると分かる。
表 5.5: 誤差の比較
parameter ROOTによる誤差計算 2つのパラメーターを固定したときの誤差
p0 ±6.126 ±約4.47
p1 ±3.57×10−7 ±約1.31×10−7
p2 ±3.092 ±約1.39
p1に着目すると、ROOTによる誤差計算の方が2つのパラメーターを固定したときの 誤差に比べて約2.7倍大きかった。dNdecaydt (t) =p0e−t/p1 +p2でフィットした場合と比べれ ば、誤差は2.5倍大きくなった。まだ差はあるが、3つのパラメーター間の相関を弱める ことでROOTにより求めた誤差に近づけることができた。
更に、横軸の平行移動をdNdecaydt (t) =p0e−(t−A)/p1+p2で表わし、A= 2.5、3.5、4、5×10−6 のとき、2つのパラメーターp0、p2を固定してp1を動かした場合のχ2の変化を考察した。
A= 0、2.5、3.5、4、5×10−6
図 5.19: 異なるAの値におけるχ2とp1の関係
グラフより、A = 2.5から4×10−6にかけて誤差が広がっていく様子が分かる。しか し、A= 4×10−6を境に再び誤差が狭まることがみてとれる。A = 3.5から4×10−6の 間に相関を小さくする点があることが分かる。
表 5.6: p1の誤差の比較
ROOTによる誤差計算 A= 0 A= 2.5×10−6 A= 3.5×10−6 p1 ±3.57×10−7 ±0.51×10−7 約±1.31×10−7 約±1.86×10−7
A= 4×10−6 A= 5×10−6 約±1.91×10−7 約±1.66×10−7
ここで、dNdecaydt (t) =p0e−(t−A)/p1+p2とは違ったフィットの仕方について述べておきた
い。関数p0e−(t−A)/p1 +p2の特徴はt=Aにおいて、関数の値はp0+p2となり、p1に依 らないことである。p0e−(t−A)/p1+p2=p0eA/p1e−t/p1 +p2と書き直すことができる。関数 p0e−t/p1 +p2に比べ、
p0 → p0eA/p1 p1 → p1
p2 → p2 と置き換えたことになる。
最初に簡単な関数で示す。関数Be−t/τについて、t = 0∼ ∞の積分値は
∫ ∞
0
Be−t/τdt= [B(−τ)e−t/τ]∞0 =Bτ (5.5) なので、Bτ =B0とおくとB = Bτ0 であり、Be−t/τ = Bτ0e−t/τ となる。B0は実験データ の全計数によって決まる量なので、B0は小さな誤差で決定できる。実質的にフィットす るべきパラメーターはτ のみである。
t =t1 ∼t2をフィットに使う場合には、
∫ t2
t1
Be−t/τdt = [B(−τ)e−t/τ]tt2
1 =Bτ(e−t1/τ −e−t2/τ) (5.6) となる。Bτ(e−t1/τ −e−t2/τ) =B0とおくと、B = B0
τ(e−t1/τ−e−t2/τ) であり、
Be−t/τ = B0
τ(e−t1/τ −e−t2/τ)e−t/τ (5.7) となる。B0はt =t1 ∼t2の統計数によって決まる量である。実質的にフィットするべき パラメーターはこの場合もτのみである。
関数がBe−t/τ +Cで、t=t1 ∼t2でフィットする場合には、
∫ t2
t1
(Be−t/τ +C)dt = [B(−τ)e−t/τ+Ct]tt2
1 =Bτ(e−t1/τ −e−t2/τ) +C(t2−t1) (5.8) Bτ(e−t1/τ −e−t2/τ) +C(t2−t1) = Dとおくと、B = τ(eD−−t1C(t/τ−2e−−tt12)/τ)、即ち
Be−t/τ+C = D−C(t2−t1)
τ(e−t1/τ −e−t2/τ)e−t/τ +C (5.9) Dはt= t ∼ t の統計数によって決まる量である。実質的にフィットするべきパラメー
実際に、dNdecaydt (t) = p p0−p2(t2−t1)
1(e−t1/p1−e−t2/p1)e−t/p1+p2でフィットすると次の表のようになった。
フィット結果
表 5.7: ROOTを用いた計算値 値
データ数 39
χ2 38.05
p0 (4.317±0.09337)×10−4 p1 (2.079±0.356)×10−6 p2 37.41±3.082
となる。予想されたように、p0の相対誤差は ∆pp 0
0 = 0.094.3 = 0.02であり、表5.1の ∆pp 0
0 =
70
281 = 0.25より小さい。
D即ちp0は積算値で基本的に統計数を表わす量であるが、4×10−4のような小さな値 になるのは、BやCがcounts per channel、即ちcounts per 200 n second time bin であ るのに対し、τは秒を単位として表わしているためである。