吉澤 廣喜
3. 試験内容および結果
3. 1 開先倣い機構の検証試験
狭開先に対する開先倣い機構の実機適用性評価として,
9Cr系配管を用いた施工性検証試験を実施した.溶接試験 状況を第7図に,溶接施工選定条件を第1表に示す.全 姿勢において開先倣い機構は有効に機能し,ほぼ放置した 状態で溶接施工が可能であった.なお,オペレータによる 溶接状況の確認は溶接線前後に配置したCCDカメラの映 像で行った.溶接施工後の90 度ごとの断面マクロ結果を第 8図に示す.溶接継手はJISに則ったRT ( Radiographic Testing ) およびUT ( Ultrasonic Testing ) によって,有害 なきずが認められないことを確認した.
3. 2 実工事への適用
3. 1 節によって確立した条件を基に,実機の9Cr系鋼
配管に対して溶接施工を実施した.実機施工は第2表に 示す三つのステップで実施した.施工時の状況を第9図 に,施工結果を第3表に示す.各ステップにおける実機
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( b ) 狭開先形状 ( a ) 試験状況
6°
R5
第7図 9Cr系配管を用いた溶接試験状況( 単位:mm) Fig. 7 Welding test of 9%Chromium piping materials ( unit : mm )
( a ) 0° ( b ) 90° ( c ) 180° ( d ) 270°
第8図 9Cr系配管を用いた溶接施工断面マクロ結果 Fig. 8 Microscopic observation of weld joint of 9%Chromium piping material
a a < b
溶接方向
ワイヤ
( a ) 従来の機構
b
溶接方向
ワイヤ
( b ) 新規開発の機構
第6図 ワイヤ送給位置制御機構の概念図 Fig. 6 Schematic diagram of welding wire feed system
第1表 9Cr系配管を用いた溶接施工選定条件 Table 1 Welding plan for 9%Chromium piping materials
溶 接 区 分 1〜8(1周を8分割 ) ピ ー ク 電 流 ( A ) 300
ベ ー ス 電 流 ( A ) 220 ア ー ク 電 圧 ( V ) 10 ヘ ッ ド 走 行 速 度 ( mm/min ) 30〜40 ピークワイヤ速度 ( mm/min ) 1 000〜1 530 ベースワイヤ速度 ( mm/min ) 600〜900
溶接では非破壊検査としてRT(ASME : American Society of Mechanical Engineers要求 )およびUT( 社内自主検 査 )を実施して合格であることを確認した.
ステップ1では電極回転機構の実機適用を実施し,適 切な施工が確認された.ステップ2ではステップ1と同 じ機構を用い,溶接士1人で溶接機2台を操作し,2継 手の施工を実施した.装置の段取り替えによってステップ1 と比較して若干の施工時間の増加が認められたが,1 台操 作時と同レベルの時間で2 継手の施工が可能であること が確認された.ステップ3ではステップ2に加えて開先
倣い・ワイヤ回転機構を追加し,溶接経験3 年未満の非 熟練者で施工を実施した.施工の結果,各種機能の活用に よって非熟練者でも安定した品質の溶接継手が施工可能で あり,溶接施工に要する時間も短縮することができた.
4. 今 後 の 課 題
本検討において全姿勢自動TIG溶接の施工技術は確立 されたが,今後,さらなる効率化・適用拡大を踏まえて以 下の検討を実施する予定である.
( 1 ) 異常検知機構の開発
開先倣い機構とCCDカメラでのモニタリングに よって溶接士への負荷低減を図り,溶接機2台持ち 施工の実現が可能になった.現在,さらなる複数台 持ちと自動化の実現を目指し,溶接機に異常検知機 能を搭載するための検討を進めている.
( 2 ) 現地溶接への適用
本検討の開発は工場溶接の適用とともに現地溶接 への適用もターゲットとしている.工場の自動溶接 では開先ギャップをゼロとして適用しているが,現 地溶接では配管の合わせを実施する観点でギャップ をゼロとすることは困難である.現状はギャップを もつ開先に対して初層手溶接で施工した後,残層で 自動溶接を適用する実績がある.今後の検討事項と してギャップをもつ状態から自動溶接初層を適用す る技術開発を進めてゆく.
5. 結 言
全姿勢自動TIG溶接の開発を実施し,装置開発,適正 溶接条件検討,回転電極および開先倣い機構を確立して実 機溶接へ適用し,以下を実現することができた.溶接経験 の少ない非熟練者で溶接装置2台持ちでの施工を可能に し,適切な品質を確保しつつ,手溶接と比較して半分の工 数での施工を実現することができた.今後は4章に挙げ た課題を克服し,さらなる安定化と適用拡大を目指してゆ く.
第2表 実機配管への全姿勢自動TIG溶接の施工ステップ Table 2 Steps to automatically weld real plant piping 項 目 操作台数 電極回転 開先倣い ワイヤ回転
ステップ1 1 適 用 − −
ステップ2 2 適 用 − −
ステップ3 2 適 用 適 用 適 用
( 注 )ステップ1,2は溶接経験7年の中堅溶接士,ステップ3は 溶接経験3年未満の非熟練者が担当施工した.
第3表 実機配管への全姿勢自動TIG溶接の施工結果 Table 3 Results of automatically welding real plant piping 溶 接 方 法 手溶接 全姿勢自動TIG溶接 施 工 継 手 1継手 1継手施工 2継手施工
ス テ ッ プ − 1 2 3
施工時間 ( h ) 58.8 54.0 58.5 51.5
( 注 )表中に記載した手溶接に要する時間は,開先面積と平均的な溶接 作業効率から算出した参考値を示す.
実機配管仕様 外 径:f 457.0 肉 厚:74.0
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1台目 2台目
第9図 実機配管への全姿勢自動TIG溶接の施工状況
( 単位:mm)
Fig. 9 Automatic welding of actual plant piping ( unit : mm )