NSOP 10 管理図 (control charts) の準備
2.4 試料の採取 (NSOP 7 参照 )
海洋では栄養塩が幅広い濃度範囲で分布している。測定される濃度が採水時に現場で実際 に存在している濃度であることを確かにするため、実際の濃度範囲全般にわたって注意を払 わねばならない。極端に濃度が低い、貧栄養海域の表面水には、特段の注意が求められる。
そうした試料は採取および保管を通じてコンタミを受けやすい。採水器や試料容器の内壁に は、数時間から数日という短時間のうちに微生物の皮膜が付着する。そうした皮膜は栄養塩 を取り込んだり放出したりする。栄養塩は生化学的反応と生体外
(in vitro)
反応により大きく変動する。
Gordon et al. (1993)
は、亜硝酸塩とリン酸塩はもっとも不安定だが、ケイ酸塩はそれ ほど反応性に富んでいないようだと考えた。普通の保存条件下では、海水試料および標準溶 液に含まれる亜硝酸塩の濃度は、ほんの2-3
時間のうちに著しく変化する。しかし、ケイ酸 塩の試料や標準溶液は、室温(暗所)で数日保管しても、ようやく検出できる程度しか変化 しない。2.4.1 採水器 (NSOP 7を参照)
航海の初めと航海中には一週間の間隔で、採水器にコンタミや部品の損傷がないか、点検 を実施すべきである。錆は除去し、損傷した部品は交換すべきである。微生物の皮膜も柔ら かいスポンジと無リンの界面活性剤(
Decon 90
など)を用いて除去すべきである(ブラシや 研磨剤、たわしは採水器の表面を傷めて将来のコンタミの可能性を増大させるので使用して はいけない)。2.4.2 採水手順と注意事項 (NSOP 7を参照)
採水手順は重要である。
試料容器を
3
回すすぐ:試水を容器に全量の1/3
程度入れ、緩く蓋をしてよく振り、すす いだ水を捨てる。その後で試水を容器に全量の3/4
まで入れ(試水を凍結しなくてはならな い場合、膨張するから)、しっかりと蓋をする。採水中に指先(指紋)で栄養塩試料をコンタミさせないよう注意しなくてはならない。指 紋は測定可能な量のリン酸塩を含んでいるためである。特に、石鹸で洗った手はリン酸塩の ありふれたコンタミ源である。試水を導く採水コックの端や試料容器の内壁に手を触れては いけない。タバコの煙も試水のコンタミを招くことが知られている。海水、雨水、ロゼット や採水器から滴り落ちる紛らわしい水の混入を避けること。
サンプリング中に手袋を着用する場合は、手袋がコンタミをもたらす可能性を検査してお くこと。航海を通じて異なる決定要素があるものの、この検査はコンタミの潜在的可能性を 把握するために必要である。
2.4.3 試料容器 (NSOP 7を参照)
栄養塩分析における最大のエラーは不適切な保存とともに、試料容器の不適切な選択によ ってもたらされる。船上にて採水器から採取した海水は、特にそれがサーモクライン以深で あれば、ほぼ無菌状態の溶液である。したがって、試水を無菌状態ではない容器、たとえば、
以前使用した容器で滅菌処理されていない容器に採水することは、大きな誤差要因となる。
使い捨ての容器を使用し、その使用は一度かつ一度限りとすることが適切である。もし適切 な無菌容器に試水を直接採取し、冷蔵庫内の暗所で保存すれば、試料は数日かそれ以上安定 しうる。すべての試料容器について、コンタミの潜在的可能性を使用前に確認しておかなく てはならない。
2.4.4 試料の保存 (NSOP 7を参照)
理想的には、栄養塩試料は生物的な成長や壊変の可能性を避けるために、採取後直ちに分 析すべきである。試料がいつ測定されたかを、メタデータに記録することは重要である。こ の記録によって、長時間にわたって不適切に保存されたことからくるつじつまが合わないデ
ータを見分けることができる。
実際には、ブルームのピーク時でなければ、試料は数時間から数日にわたって保存可能か もしれない(冷暗所、冷蔵の条件下で)。ブルーム時の試料は、すぐにろ過することを勧め る(ただし、アンモニウム測定や低濃度試料の場合はろ過せず、すぐに分析することを勧め る)。「清潔は敬神に次ぐ美徳」という諺を忘れずに!
2
-3
日よりも長く保存する必要がある場合、試料を採取後出来るだけ早く凍結させるべ きである。凍結させる前には、試料が容器全量の3/4
を超えておらず、固く蓋をされている ことを確かめること。少なくとも-20
℃以下の冷凍庫を用いること。冷凍する容器の周囲に空 気がよく循環することが重要である。試料容器はラベルを付けた格子状の保管容器に入れ、測定するときに見つけやすく、選び出しやすいようにしておく。
凍結した試料は空気中で解凍すべきである。ウォーターバスは、バス内の水によるコンタ ミの恐れがあるので、用いるべきではない。試料が溶けて室温になじむにつれ、体積が小さ くなって容器内圧が低下し、ウォーターバス内のコンタミした水を吸い込む可能性がある。
ケイ酸塩の定量に用いる試料は、重合の解消を待つために、少なくとも
24
時間、室温で 放置すべきである(Macdonald et al., 1986; Zhang and Ortner, 1998)
。40 μM kg
-1を超える高濃度試 料を扱う場合は、凍結・解凍の手順が適切であるか確認すること。2.5 分析装置の立ち上げ:鍵となる構成、その機能および気に留めておくべきこと
2.5.1 CFAのハードウェア
海水分析における
CFA
システムや使用上の実用的なガイダンスについては、より充実し た情報が記載されたAminot and Kerouel (2007)
およびAminot et al (2009)
を参考にされたい。CFA
の一般的な構成を第1図に示す。CFA
システムでは、多チャンネルのペリスタルティックポンプを用いて、試料と発色試薬 を連続的な液流中に送る。試料を含む液流は空気(または窒素)の泡で分画されることで、隣接したセグメント間の混合を防ぐとともに
(Zhang, 1997)
、液流中での試料と試薬の混合が促 進される。分画された液流はシステムのマニフォールド―各成分の分析法に応じた混合と遅 延を実現する一連のガラスコイル―を通過する。試料と試薬が混合して化学的に反応すると、試料中の栄養塩濃度に比例した吸光度をもつ、色のある化合物が形成される。最終的に、流 路の末端にあるフロースルー式の比色計を用いて、発色した溶液の光の透過量が測定される。
比色法ではなく発光法(蛍光法)が用いられることもあり、その場合は発光(蛍光)光度計 の出力が分析対象の濃度に直接比例する。
手分析と
CFA
法の根本的な違いは、CFA
では発色の完了が要求されない点にある。CFA
では、すべての標準溶液と試料は発色試薬の中に同じ時間に一定の比率で送り込まれるので、発色の達成度が揃っているはずだからである。しかしながら、この特徴によって、発色率の ばらつきをもたらすあらゆる要因(たとえば、実験室の室温、試料の塩分、ポンプの流量変 動、混合の効果や試薬の比率に影響する分画の長さのばらつき)から誤差がもたらされる。
こうした理由から、高精度分析では、可能な限り発色反応の完了に近い状態に調整される。
第1図 CFAシステムの概念図
サンプラー:
CFA
システムは自動化されたサンプラーから始まる。吸引ニードルが試料容 器と洗浄液との間をあらかじめ決められた時間間隔で行き来する。サンプラーは船上でも信 頼できる動作が止まらない、安定した性能が出せるように頑丈でなくてはならない。洗浄液 は測定の始めと終わりのベースラインとなるとともに、各試料を分離し、特定できるよう、間を区切るマーカーの役目も果たす。なお、試料間のベースラインの測定に、必ずしも洗浄 液を用いる必要はない。
ペリスタルティックポンプ(チューブポンプ・ローラーポンプ):ペリスタルティックポ ンプは
CFA
システムの心臓部であり、試料、試薬、空気(または窒素)の泡を同時にシステ ム内に送り出す。ペリスタルティックポンプが高品質であれば、それだけ分析の精度も良好 になる。ポンプに用いるチューブは異なる内径を持っているが(
異なる流量をもたらすため)
、 内壁の厚さは同じになっている(流量の異なるチューブを隣り合わせでポンプに設置できる ように)。製品のチューブ内径は種類ごとに異なっており、チューブ交換で分析の見かけの 感度を2-3%
ずつ変えられるようになっている。長時間のチューブ使用で劣化したり、伸ばさ れたり、また測定中に温まると、同じ理由で見かけの感度の上昇または低下が発生する。各 チューブから送られる液量変化が、試料と試薬の比率変化をもたらすためである。したがっ て、そのような分析感度の上昇または低下を後から特定できるようにするため、ポンプに使 用 す るす べて のチ ュ ーブ 交 換に つい て記 録 して お く必 要が ある ( メタ デ ータ 報告 に関 するNSOP 12
を参照)。反応マニフォールド:それぞれの分析法にひとつずつ、適切に選択されたインジェクショ ンフィッティング、らせん状のガラス製混合コイル、ヒーティングバス等を用いてマニフォ ールド(あるいはカートリッジ)を組み立てる。鍵を握る構成部品は空気を注入するインジ